プロダクト・レビュー
科学技術計算に最適なPentium 4搭載PC「Dimension 8100」 小林章彦 |
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デルコンピュータのデスクトップPCには、個人・SOHO向けのDimensionと、企業向けのOptiPlexの2シリーズがある。このうちDimensionシリーズは、最新機能を搭載しながら低価格で提供することを目的に、一方のOptiPlexシリーズは信頼性やメンテナンス性を重視する方針で、それぞれ開発が行われている。 そのためか、これまでのDimensionシリーズの多くは、インテルが製造したOEM向けマザーボード(デルコンピュータ向けに一部カスタマイズされていたが)を採用し、新しいプロセッサをいち早く搭載してきた。ところが、Pentium 4を搭載したDimension 8100では、デルコンピュータ独自のマザーボードを採用し、ケースなどもOptiPlexシリーズで採用されていた機能などを取り入れたものとなっている。 Dimension 8100の主な特徴Dimension 8100は、チップセットにIntel 850を搭載したデルコンピュータ独自のマザーボードを採用した。これはインテルのリファレンス・マザーボードともいえるD850GBとはレイアウトが異なっており、やや横長な形状となっている。また、VRM(電圧変換)モジュールが交換可能になっている点は目新しい。コストダウンのためか、最近ではVRMモジュールをマザーボード上に直接実装し、交換不能にしたものが多い(Pentiumが販売された当初は、VRMモジュールが交換可能になっていた)。マザーボード上に実装されたVRMモジュールでも、ある程度の範囲の動作電圧をサポートしており、実用上は問題になるケースはほとんどない。しかし将来出荷されるプロセッサでアップグレードする際、その電源電圧が大きく変更された場合でも、VRMモジュールが交換可能なら、マザーボードを流用できる可能性が高い(もちろん、電源電圧以外の問題でアップグレードできない可能性はあるが)。 Dimension 8100では、プロセッサとしてPentium 4-1.3GHz、1.4GHz、1.5GHzの3種類から選択可能だ。メモリはDirect RDRAMのみのサポートで、同じ容量・規格のRIMM(Direct RDRAMのメモリ・モジュール)を2枚ずつ増設する必要がある。デルコンピュータの直販Webページでは、PC600とPC800 ECC付きの2種類のRIMMから選択可能だ。PC600は価格は64Mbytes1枚あたり1万7500円と、PC800 ECC付きの2万2500円に対し5000円安いものの、メモリ・バスの動作クロックは300MHz(PC800の場合は400MHz)に下がってしまう。そのうえRIMMソケットは4本(2組)と数が少なく、増設のチャンスは1回に限られる。SDRAMに比べて、Direct RDRAMの価格は高いことから、購入時のメモリ選択は慎重に(後々の増設で以前のメモリが無駄にならないように)行った方がよいだろう。 以前のDimensionシリーズのケースは、市販されている単体のPCケースとそれほど変わらない味気ないものであったが、Dimension 8100では、OptiPlexシリーズで採用されてきたような工夫がいたるところに見受けられる。本体前面下部のボタンを押すことで、サイド・パネルが開くほか、電源ユニットが簡単に引き上げられ、メンテナンスが容易になるような工夫もされている。また、中央付近にケースの歪み防止用のフレームが装備されており、これがAGPカードの固定金具を兼ねている。AGPカードは、メモリの増設時などに浮き上がりやすく、トラブルの元になることが多かった。固定金具を装備することで、こうしたトラブルを未然に防ごうというわけだ。 ただしこのケースは、330Wの大型電源ユニットが5インチ・ベイの後ろ側に位置しているため、通常のミドルタワー・ケースに比べて奥行きが長く、狭い机の上には置きにくいかもしれない。とはいえこれはDimension 8100に限ったことでなく、他社製を含むほとんどのPentium 4システムは、電源ユニットやマザーボードが大きいために、かなり大型のケースを採用している。ちなみに、インテルのD850GBはATXサイズだが、RIMMソケットの位置がドライブ・ベイに干渉してしまう関係から、ミニタワー・ケースに収めることはできない。 高い拡張性とメンテナンス性を実現本機のケースが大きいのは、Pentium 4対応の電源ユニットやマザーボードのためだけでなく、ハイエンド・マシンとして高い拡張性を備えたことにも起因している。前面アクセス可能な5.25インチ・ベイを3つ装備するほか、フロッピー・ドライブ用の3.5インチ・ベイを1つ、内蔵ハードディスク用の3.5インチ・ベイを2つ装備している。したがってCD-ROMドライブのほか、CD-R/RWドライブやDVD-RAMドライブなども余裕で同時実装が可能だ。また拡張スロットは、AGP×1とPCI×5を装備する。イーサネット・インターフェイスがオンボードで実装されているため、標準的な環境でPCIスロットが必要になるのはサウンド・カードくらいであり、必要十分なスロット数といえる。 ケースを開けると、拡張スロット部分は完全にあいているため、カードの増設は非常に容易だ。こうしたメンテナンス性の高さも、評価できるポイントである。また、メモリ・ソケットへは、電源ユニットをレバー操作で引き上げることで、容易にアクセス可能になる。こうした工夫にOptiPlexシリーズで培われたノウハウが活かされていると感じた。 浮動小数点演算性能が優れたPentium 4ベンチマーク・テストの結果は、インテルが公表している値と大きく違わなかった(インテルが公開しているPentium 4のベンチマーク・テストの結果)。Pentium IIIのベンチマーク・テストの結果と見比べると明らかだが、ビジネス・アプリケーションをターゲットとしたSYSmark2000の成績はそれほど芳しいものではない。
一方、浮動小数点演算性能は、Pentium IIIに比べて大幅に向上している。
この浮動小数点演算性能の結果は、Pentium 4で初めて実装されたストリーミングSIMD拡張命令2(SSE2)を利用していない結果である(SSE2を利用すれば、Pentium IIIとの性能差はさらに開くはずだ)。SSE2では、倍精度浮動小数点データ型がサポートされ、SIMDフォーマットの倍精度浮動小数点演算が実行可能になった。また、マルチ・ワード(1、2、4、8byte)の整数データ型の算術演算をサポートしたことで、暗号化計算や画像処理などがより高速に実行可能となっている。そのためPentium 4では、SSE2に最適化することで、用途によっては非常に高い浮動小数点演算性能を実現することも可能となっている。 つまりPentium 4システムの場合、現在の一般的なビジネス・アプリケーションではPentium IIIシステムに対するアドバンテージはほとんどないが、浮動小数点演算を多用するような科学技術計算や3Dグラフィックスを使ったコンテンツの作成といった用途では、大きなメリットがあることが分かる。将来、Pentium 4のSSE2に向けて最適化されたアプリケーションが開発・提供されるようになれば、その差はさらに開くことになるだろう。 Pentium 4のコストパフォーマンスDimension 8100の最も安いシステム価格は、17万2800円である(Pentium 4-1.3GHz、64Mbytes PC600 RIMM×2、10Gbytesハードディスク、RADEON 32Mbytesグラフィックス・カードなど。価格は2001年1月上旬時点でのもの)。ほぼ同等構成のDimension 4100(Pentium III+Intel 815Eチップセット採用)の1GHzモデルでは15万200円と、2万2600円の差がある。 前述のようにPentium 4システムは、ビジネス・アプリケーション性能ではPentium III-1GHzに対し若干劣るが、浮動小数点演算性能では約1.6倍と非常に高い値を示している(インテル公表値での比較。インテルのベンチマーク・テスト時の機材とDimension 8100では、システム構成が異なることに注意)。このようにPentium 4システムは、浮動小数点演算が多用される用途で高いコストパフォーマンスを示す。 ただしメモリを増設するような場合、Direct RDRAMの価格はSDRAMに比べて非常に高いので、システム価格を押し上げる要因となる点にも気をつけたい。秋葉原のPC販売店の店頭価格で比較すると、128MbytesのPC133(CL=2)が1万2000円前後(最安値では7000円を割り込んでいる)のに対し、PC800では3万5000円前後(最安値でも2万4000円程度)である。同じ容量で、2倍〜5倍の価格差があることになる。なお2001年1月現在、PC700の価格は暴落しており、PC133とほぼ同等価格で購入可能だ。ただし、Pentium 4システムでは、PC700の動作を保証していない点に注意したい。また、PC600は店頭で見かけられなくなっている。 ■ 科学技術計算などの浮動小数点演算を多用する用途なら、Dimension 8100は十分期待に応えてくれるに違いない。しかしビジネス・アプリケーション用途が中心なら、少なくとも現時点では、Pentium III-1GHz搭載モデルの方がコストパフォーマンスは高いという結論になる。現状では、最新だからといって闇雲にPentium 4を選択するのではなく、用途に応じてPentium III搭載マシンと選択し分ける必要があるだろう。 |
メーカー名 |
デルコンピュータ株式会社
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製品名 |
Dimension 8100
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価格 |
30万1800円(下記スペック製品の場合)
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製品URL | |
問い合わせ先 |
TEL 044-556-6050
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プロセッサ |
Pentium4-1.5GHz
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2次キャッシュ |
256Kbytes
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チップセット |
Intel 850
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メモリ |
128Mbytes(ECC PC800 ECC付きRDRAM)×2
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拡張スロット(空きスロット数) |
PCI×5(4)、AGP×1(0)
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拡張ベイ(空きベイ数) |
3.5インチ×1(0)、5.25インチ×3(1)、内部3.5インチ×2(1)
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フロッピー・ドライブ |
3.5インチ2モード
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ハードディスク |
40Gbytes(Ultra ATA-100対応:Western
Digital製WD800BB)
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CD/DVDドライブ |
CD-R/RWドライブ(読込み32倍速、書込み12倍速、書換え4倍速)、DVD-ROMドライブ(DVD-ROM読出し最大12倍速、CD-ROM読出し最大40倍速)
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ネットワーク |
10/100BASE-TX対応(オンボード)
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FAX/モデム |
−
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グラフィックス |
アクセラレータ:NVIDIA DDR GeForce2 Ultra(4xAGP対応)、メモリ:64Mbytes(DDR
SDRAM)
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サウンド |
Turtle Beach SantaCruz(音源チップ:CRYSTAL
CS4630-CM EP)
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インターフェイス |
シリアル・ポート×1、パラレル・ポート×1、USBポート×4、ディスプレイ(アナログRGB)×1、DVI×1
、キーボード、マウス、イーサネット・ポート×1、ヘッドホン出力×1、ライン出力×2、マイク入力×1、ライン入力×1、S/P DIF出力×1、ゲーム・ポート×1
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電源容量 |
330W
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外形寸法 |
203(W)×487(D)×445(H)mm
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重量 |
15kg以上
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OS |
Windows Me(Windows 2000選択可能)
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付属品 |
109日本語キーボード、ホイール付マウス、電源ケーブル、Windows
Me CD-ROM、レスキューCD-ROM、WinDVD 2000 CD-ROM、Easy CD Creator Standard
CD-ROM、マニュアル
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関連リンク | |||
D850GBの製品情報ページ | |||
Pentium 4のベンチマーク・テストの結果 | |||
Pentium IIIのベンチマーク・テストの結果 | |||
Dimension 8100の製品情報ページ |
「PC Insiderのプロダクト・レビュー」 |
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