DVD+RWの可能性(前編) 2.DVD+RWの使い勝手を検証する澤谷琢磨/デジタルアドバンテージ |
書き込みソフトウェアの使い勝手
ここからは、MP5120Aの使い勝手を、書き込みソフトウェア別に見ていくことにする。書き換え型DVD規格では、DVD-RAMドライブとWindows XPの組み合わせを除き、すべてのWindows OSで書き込みソフトウェアが必要となる。DVD-RAMドライブとWindows XPとの組み合わせにおいても、ファイル・フォーマットはFAT32に限られるので、UDFを利用するなら書き込みソフトウェアは必須だ。つまり、ドライブの使い勝手は書き込みソフトウェアの出来次第という面もある。ここでは、データ・バックアップの使い勝手を見ることが目的なので、DVDビデオ・オーサリング・ソフトウェアであるMyDVDについては、ここでは取り上げない。
■B's Recorder GOLD
CD-R/RWのマスタリング・ソフトウェアとしておなじみのビー・エイチ・エーの「B's Recorder GOLD」は、Ver.3.02からDVD+RWに対応しており、MP5120Aのパッケージに添付されているのもこのバージョンである。アップデートは頻繁に加えられており、2001年12月上旬現在の最新版はVer.3.16となっている。評価は、製品付属のVer.3.02をVer.3.15にアップデートした状態で行った(リリースノートを見る限り、Ver.3.15からVer.3.16でDVD+RWに関する改善は行われていないようだ)。
B's Recorder GOLDは、MP5120Aのパッケージに添付されるマスタリング・ソフトウェアの中で唯一、データの追記をサポートしたソフトウェアだ。ただし、追記できるのはUDF Bridge形式のみで、DVDビデオ形式の追記はサポートされていない。DVDビデオの追記はMyDVDのアップデートという形で実現される予定になっている。
B's Recorder GOLDは、単純なマスタリング機能に加えて、ハードディスクのバックアップ機能と、ブータブル・ディスクの作成機能を備えている(DVD+RW対応はVer.3.10以降)。バックアップ機能では、ディスク全体あるいはパーティション単位でバックアップ・イメージを作成し、記録することができる。イメージの作成はWindows上から行うが、復元にはDOSプログラムを用いる。編集部でWindows 2000のシステム・ドライブのバックアップを試してみたところ、前のバージョンであるVer.3.13ではバックアップを行ったユーザーのデータの一部(C:\Documents and Setting\Administrator以下のファイル)がバックアップできなかった。この点は、Ver.3.15では改善されており、問題なくすべてのファイルがバックアップできた。バックアップ機能を使う場合は、Ver.3.15以上にアップデートしておいた方がよいだろう。
編集部で評価してみた限り、MP5120Aに添付されるソフトウェアの中では、B's Recorder GOLDは機能/性能の面で最も完成度が高かった。しかし、もともとがCD-R/RW向けのソフトウェアのためか、本来DVD+RWでは必要のない機能が思わぬ所で邪魔になることがあった(MP5120AはCD-R/RWドライブとしての機能も備えているため、まったく不要な機能ともいえないが)。
そのうち最も気になったのが、ファイル名チェックによる制限である。UDFでは、ファイル名が最長127文字(Unicode形式、拡張子含む)に規定されている。これはWindows XP/2000のファイル名制限である255文字には及ばないが、ISO 9660 レベル2/3の31文字や、マイクロソフトの独自拡張であるJoliet形式の64文字に比べると、より実用的になっている。実は、このファイル名の長さの違いが問題を起こす。例えば、UDF形式で記録されている「Visual Studio.NET β2」のDVD-ROMのデータをいったんハードディスクにコピーし、あらためてB's Recorder GOLDに登録して書きこもうとすると、B's Recorder GOLD内部のファイル名チェックに引っかかり、書き込むことができないのだ(Visual Studio.NET β2のDVD-ROMを直接ディスク・バックアップ機能でコピーした場合は問題が起きない)。これは、一部に64文字以上のファイルが含まれているため、B's Recorder GOLDのデフォルトであるJoliet形式のファイル名の長さを超えてしまうためだ。どうも、ファイル名の長さを64文字以内になるように変換することができないようだ。ファイル名のチェックをRomeo形式に変更すると、ファイル名チェックを通過するようになったが、Romeoはもともと規格があいまいなうえ、B's Recorder GOLDがRomeoをどのように定義しているかの情報がまったくない。これでは互換性を高めるためUDF Bridgeにした意味がなくなってしまう。ファイル名の変換などが行えるように改善するか、UDF BridgeのほかUDF 1.5などの書き込みフォーマットが選択できるようにしてほしい。
また、書き込みを開始するまで、登録したデータがCD-ROMモード1で書き込まれるかのように表示される点も問題点として指摘したい。DVD+RWメディアへの書き込みを開始すると自動的に表示がUDF Bridgeに切り替わるので、実用上は問題ないのだが、ユーザーとしては一瞬、CD-R/RWに書き込みを行っているかのような錯覚に囚われてしまう。ベースがCD-R/RWライティング・ソフトウェアとはいえ、もう少しDVD+RWに配慮した設計にしてほしいものだ。
なおB's Recorder GOLDの補足マニュアル上には、DVD+RWなどDVDメディアに対する制限として、DVD上に作成できる単独のファイル・サイズの上限は、DVD規格の上限により2Gbytesまでと記述がある。確認のため2.5Gbytesの単独バイナリ・ファイルを作成し、B's Recorder GOLDから書き込んでみたが、特にエラーも発生することもなく書き込みに成功した。UDFの規格書には、DVDビデオの場合は単独のファイル・サイズに2Gbytesという上限が設けられている。マニュアルの記述はこのことを指したもので、データに関する制限ではないようだ。
■B's CLiP
B's CLiPのフォーマット・ダイアログ |
B's CLiPでは、メディアを初回にユーザーが明示的にフォーマットを行う必要がある。ただし、DVD+RWはバックグランド・フォーマット機能を装備しているため、通常のフォーマットならば2分程度で終了し、あとは自動的にバックグランドでフォーマットが行われる。 |
B's CLiPは、ファイル・システムにUDF 1.5を採用したパケットライトをサポートするためのソフトウェアだ。B's CLiPと組み合わせることで、DVD+RWメディアをMOなどのリムーバブル・メディアのようにランダム・アクセスできるようになる。評価したMP5120AにはB's CLiPのVer.3.03が添付されていたが、このバージョンでは1Gbytes以上のファイルを書き込めないという問題があったため、Ver.3.12にアップデートしてから評価を行った。12月上旬現在、B's CLiPもアップデートが行われており、最新版はVer.3.16となっている。ただし、Ver.3.12からVer.3.16の間で、DVD+RWに関するアップデートはなく、以下に指摘する問題点も残ったままのようだ。
DVD+RWメディアをB's CLiP経由で用いるには、初回にユーザーが明示的にフォーマットを行う必要がある。ただし、B's CLiPはMP5120Aのバックグラウンド・フォーマット機能に対応しているため、ユーザーが実際に待たなければならないのは1〜2分だけだ。以後はバックグラウンド・フォーマットに移るため、すぐにデータを書き込むことができる。フォーマット済のMOとまではいえないまでも、それに近い使用感を実現しているのは高く評価できる。
ところがテストの結果、B's CLiPを用いた書き込みでは動作に不安定なところがあった。B's Recorder GOLDでも用いたVS.NET β2のデータをコピーすると、Windows 2000が「PAGE_FAULT_IN_NONPAGED_AREAエラー」を発生する現象が確認された。詳細は不明だが、多くのファイルを一度にコピーするとこの障害が発生するようだ(VS.NETβ2は、ディレクトリ数だけで3700以上ある)。MP5120Aの評価機のファームウェア(Ver.1.30)を、2001年11月5日にリリースされたVer.1.34にアップデートして再度テストしたが、結果は変わらなかった。4.7Gbytesの容量を備えるDVD+RWの場合、大量のファイル・コピーは十分あり得ることであり、この点は早急な改善を望みたい。
なお、Windows上からB's CLiP経由でDVD+RWにデータを書き込む場合、エクスプローラはもちろん、xcopyコマンドなど、Windows標準のファイル・コピー・ツールをそのまま用いることができる。しかし、Windows 2000標準の「バックアップ」ツールでは、バックアップ・イメージの出力先をDVD+RWドライブにすることはできなかった。これは「バックアップ」ツール側の問題の可能性もあるが、「バックアップ」ツールは、ディレクトリ単位でまとめてバックアップして保存しておくには便利なツールであり、何らかの形での対応を望みたい。
■Drag'n Drop CD
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Drag'n Drop CD+DVDは、DVD+RWの書き込み機能に関してはB's Recorder GOLDと同等だが、インターフェイスを工夫することで、B's CLiPのようなパケットライト・ソフトウェアに近い感覚でのデータ書き込みを実現している。
Drag'n Drop CDの問題点は、DVD+RWメディアに対するデータの追記をサポートしていない点だ。そのため、実際にデータを1回書き込んでしまうと、同じメディアにデータを追加できない。ファイル・システムの形式はUDF Bridgeのため、Drag'n Drop CDでデータを書き込んだディスクでも、B's Recorder GOLDを用いてデータを追記することは可能だが、Drag'n Drop CD単体でDVD+RWのメリットである追記をサポートしていないのは不便だ。CD-R/RWメディアに対しては、もともとサポートしている機能なのだが、DVD+RWに完全には対応していないようだ。Drag'n Drop CDならではのメリットがほとんど生かされないのは残念なところである。
Windows XPへの対応状況
MP5120A DVD+RWドライブと、その付属ソフトウェアのWindows XPへの対応状況は、リコーホームページの「Windows XP対応状況」に記されている。この表によると、現在Windows XPに対応しているのは、B's Recorder GOLDとMyDVDのみとされている(B's CLiPについてはリコーで確認中)。
マイクロソフトによれば、「Windows 2000対応のソフトウェアはWindows XP上でもほとんど動作する」としている。そこで、MP5120A付属のソフトウェアをWindows XP Professionalにインストールし、各書き込みソフトウェアの動作を確認してみた。すでにWindows XP対応とされているB's Recorder GOLDだが、MP5120A付属のVer.3.02の場合、正常に書き込みが終了しないなど、一部の処理に不安定なところが見受けられた。そこでパッチを適用してVer.3.15に更新したところ、その動作はWindows 2000の場合と変わらなくなることを確認した。
B's CLiPは、Ver.3.11のアップデートでいくつか制限付きではあるものの、対応OSにWindows XP Professional/Home Editionが含まれた。そこで、B's CLiPのVer.3.12をWindows XP Professionalにインストールし、動作の確認をしてみた。フォーマット/書き込みともに正常に動作したが、Windows 2000の場合と同様、多くのファイルを一度にコピーするとエラーが発生してしまうという問題はやはり残ったままであった。
市販パッケージの「Drag'n Drop CD Plus DVD Edition」は、最初からWindows XPに対応しているが、MP5120Aに添付されているDrag'n Drop CDはOEM版のためか、バージョンが少々古いようだ。Windows XPにインストールしてみて動作することは確認できたが、やはり正式版の提供を待った方が無難だろう。
なおWindows XPのエクスプローラでは、MP5120AがDVD/CD-RWドライブとして認識される。そのため、CD-R/RWメディアには、ほかのCD-R/RWドライブと同様、Windowsエクスプローラから書き込むことができる。ただし、DVD+RWメディアに関しては、専用ソフトウェアを用いる必要があるのは変わらない。この点、ファイル・システムがFAT32に限定されるとはいえ、Windows XPがネイティブ・サポートするDVD-RAMと比べて、バックアップ・メディアとしての使い勝手の点では劣るといえる。
関連リンク | |
Windows XP対応状況 | |
Drag'n Drop CD Plus DVD Editionの製品情報ページ |
INDEX | ||
[特集]DVD+RWの可能性 | ||
1. そもそもDVD+RW規格とは | ||
2. DVD+RWの使い勝手を検証する | ||
3. 書き込み速度と互換性の検証 | ||
4. 対応ベンダの動向が業界標準を決める | ||
5. 将来性が未知のDVD+RW | ||
「PC Insiderの特集」 |
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