特集
新世代高速無線LAN「IEEE 802.11a」の世界

4. 無線LAN規格の今後

デジタルアドバンテージ
2002/02/28


どの無線LAN規格を選べば良いのか

 PRO/Wireless 5000を試用して、IEEE 802.11aのメリット/デメリットが分かったところで、現在普及しつつあるIEEE 802.11b、やっと製品が登場してきたIEEE 802.a、これから製品が登場する予定のIEEE 802.gのそれぞれの規格について総括しておこう。

 転送レートに関しては、IEEE 802.11bよりも、当然ながらIEEE 802.11aの方が速く、この点を重視するならばIEEE 802.11aを選ぶべきだろう。しかし、規格上同じ転送レートを実現するIEEE 802.11gが登場した場合は悩ましい。IEEE 802.11aがIEEE 802.11bとの互換性を持たないのに対し*2、IEEE 802.11gは上位互換を維持しており、IEEE 802.11b対応機器との通信が可能だ。もちろん、現在増えつつあるホットスポットでもIEEE 802.11gはIEEE 802.11bとして利用できる。

*2 IEEE 802.11a/bそれぞれに対応するアクセス・ポイントを併設して有線LANで接続すれば、クライアントPCがどちらに対応していても相互通信は可能だ。実際、PRO/Wireless 5000は、オプションを追加すれば1台でIEEE 802.11a/bに両対応できるよう設計されている。しかし、クライアントPCの無線LANインターフェイスは、その容積が小さいこともあって、現時点で両方の規格に対応させるのは困難なようだ。

 このように同じような複数の規格が登場した場合、これまでは複数の規格が並立することはなかった。例えば、100Mbits/sのイーサネットの場合、10BASE-Tと互換性を持った100BASE-TXと、互換性を持たないが性能は100BASE-TXより高いといわれていた100VG-AnyLANの2種類の規格が提案され、最終的には現在のように100BASE-TXだけが残ることになった。同様のことは、ほかのいろいろな規格においても起きており、多くの場合は過去との互換性を維持した規格が残っている。この前例に倣うのならば、IEEE 802.11aよりもIEEE 802.11gの方が有利に見える。

 しかし、2.4GHz帯を使い続ける以上、IEEE 802.11gは、IEEE 802.11bの問題として指摘されているほかの機器との混信という点は解決しない。この点、ほかの機器がほとんど利用していないIEEE 802.11aは有利だ。

 また、欧米ではIEEE 802.11aの方が多くのチャンネルを割り当て可能であり、複数のアクセス・ポイントが設置しやすいというメリットがある(日本ではIEEE 802.11aとIEEE 802.11bで同数)。さらに日本でも電波法などを改正し、5GHz帯の一部周波数を屋外でも利用可能にする方向にある。そうなれば、IEEE 802.11aを使ったホットスポットの開設も可能になり、IEEE 802.11aの普及に弾みがつく。

 最終的には各規格に対応した機器の価格や、ホットスポットなどの普及具合、インテルを中心としたPC用チップセット・ベンダがどの規格を推進し、特にノートPC向けのチップセットにどの規格を標準搭載してくるのか、にかかってくるだろう(ちなみにインテルは、IEEE 802.11aを推進したいようだ)。現在のところ、IEEE 802.11bが普及し始めたところであり、IEEE 802.11aはやっと土俵に上がったところ、IEEE 802.11gは土俵にも上がっていない段階である。どの規格も、今後の戦い方次第で十分に標準規格になり得る状態だ。逆にユーザーとしては、無線LANに対して大きな投資がしにくい状態にあるともいえる。機器の充実度やホットスポットでの利用を考えればIEEE 802.11bが無難だし、性能を考えればIEEE 802.11aとなりそうだ。どちらを選ぶのが正解なのかは、しばらく答えが出そうにない。記事の終わり 

 

 INDEX
  [特集]新世代高速無線LAN「IEEE 802.11a」の世界
    1.IEEE 802.11bとIEEE 802.11a
    2.IEEE 802.11aの設定
    3.IEEE 802.11aの実力を測る
  4.無線LAN規格の今後
 
「PC Insiderの特集」


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