x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る2. OpenGLアプリケーションでの性能差
デジタルアドバンテージ 島田広道 |
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グラフィックス ワークステーションで利用されるソフトウェアといえば、OpenGLを利用したCADなどのアプリケーションが挙げられる。そこでOpenGLのベンチマークテストとして標準的なSPECviewperf(以前はViewperfと呼ばれていた)で、その性能を測定してみた。
SPECviewperfについて
SPECviewperfとは、SPECint/fpなどのベンチマーク テストで知られるSPEC(Standard Performance Evaluation Corporation)の傘下にあるSPECopcグループで開発されている、OpenGLの性能評価を目的としたベンチマーク プログラムである。SPECviewperfの測定方法は、大雑把にいうなら、OpenGLのAPIを用いて3Dモデルをレンダリングしたものをアニメーション表示し、そのフレーム レートを性能の指標とする、というものだ。移植性にも優れており、Windows 9x/NT/2000のほかにも、LinuxやUNIX系OS対応のプログラムが存在する。
SPECviewperfでは、実在のOpenGLアプリケーションで使われているデータセットとそのパラメータを利用してOpenGLの性能評価を行う。これらはViewsetと呼ばれ、最新バージョンであるSPECviewperf 6.1.2では、
- ProCDRS-03
- Data Explorer (DX-06)
- DesignReview (DRV-07)
- Advanced Visualizer (AWadvs-04)
- Lightscape Viewset (Light-04)
- medMCAD-01
の6種類が、各アプリケーション ベンダによって提供されている。つまり、SPECviewperfを用いれば、これらのOpenGLアプリケーションを実際に実行したときと同等の性能が測定できるわけだ。
SPECviepwerfの標準的な測定方法では、Viewsetごとにパラメータを変化させて何回もテストを実行し、その結果を規定の重み付けで平均化した値をViewsetごとの性能として利用する。ここでは6種類のViewsetのうち、medMCAD-01とProCDRS-03の結果を抜き出してグラフ化している。
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SPECviewperfを実行中の画面 |
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ベンチマークの実行中、3Dの物体がOpenGLにより動いていくさまが表示される。左はmedMCAD-01で、右はProCDRS-03で表示される画面だ。両者を比べると、medMCAD-01のコピー機のほうが、ProCDRS-03の車より複雑な形状であることが分かる。 |
SPECviepwerfの実行プログラムは、そのWebページにあるWindows用の実行モジュールとViewsetをまとめたものを用いた。バージョンは6.1.2である。ベンチマーク実行時のパラメータなどはデフォルトのままとした。
ベンチマーク テスト環境はSYSmark 2000のときとほとんど同じで、Windows 2000 Professional英語版で実行している。ただし、画面の解像度は、CADという用途に合わせて1280×1024ドットに高めている。
1.13GHzの効果は3Dモデルの形状などに左右される
SPECviewperfの測定結果は、以下のとおりである。
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SPECviewperfによるベンチマーク テスト結果 |
グラフの数値は、1秒当たりに更新できる画面(フレーム)の枚数で、値が大きいほど高速である。 |
これによると、より複雑な3Dの物体(コピー機)を表現しているmedMCAD-01のほうが、866MHzと1.13GHzとの性能差が大きいことが分かる(グラフ化していない残りの4種類のViewsetと比べても、866MHzと1.13GHzとの性能差はmedMCAD-01が一番大きかった)。基本的に、3Dモデルが複雑な形状であるほどプロセッサでの計算量も増大するので、性能差がよりはっきり表れたわけだ。これはSYSmark 2000での結果と同じ傾向である。
しかし、6種類のViewsetのなかで最も性能差の大きかったmedMCAD-01でも、クロック周波数の差(31%)に対して、866MHzと1.13GHzとの性能差は17%と約半分の伸びにとどまっている。その原因の1つは、SPECviewperfのようなOpenGLアプリケーションの実行には、プロセッサだけではなくグラフィックス アクセラレータも強くかかわっていることが挙げられる。つまり、SPECviewperfの処理内容のうち、グラフィックス アクセラレータが負担している部分が少なからずあるため、プロセッサの性能差が表れにくい、ということだ。
このベンチマークテストから、Pentium III-1.13GHzはOpenGLアプリケーションの実行速度向上に貢献することは分かった。しかし、OpenGLの性能を高めるには、グラフィックス アクセラレータの高速化/高機能化も役立つ。そのため、コストパフォーマンスを意識した場合、Pentium III-866MHzと高機能なOpenGL対応グラフィックス アクセラレータを組み合わせたほうが、Pentium III-1.13GHzに投資するより効率的かもしれない(テストに使用したグラフィックス アクセラレータは、OpenGLについては最も高機能な製品とはいえない)。
次のページでは、データベース サーバとしての性能をチェックしてみよう。
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1.クライアントPC向けアプリケーションでの性能差 | ||
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2.OpenGLアプリケーションでの性能差 | |
3.データベース サーバでの性能差 | ||
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