第1回 SELinuxの出自とキソのキソ
古田 真己サイオステクノロジー株式会社
インフラストラクチャービジネスユニット
Linuxテクノロジー部
OSSテクノロジーグループ
2005/11/25
SELinuxのアクセス制御の基礎
現在のSELinuxは、2.6カーネルのLSM(Linux Security Module)をベースにしたカーネルに対する拡張で、以下のような特徴があります。
- 柔軟なセキュリティ定義
- カーネルに統合された強固なセキュリティ
- プログラムを修正なしで動作可能
SELinuxの機能は、LSMを通じた各システムコールに対するフックとなっており、通常のLinuxのパーミッション処理に追加してSELinuxのアクセス制御機能が機能します。
SELinuxでは、セキュリティコンテキストと呼ばれるラベルを、プロセス(サブジェクト:実行イメージ)とリソース(オブジェクト:アクセス対象)に対してそれぞれ付与し、その組み合わせでアクセスの可否を判断します。その結果が許可されていればアクセス可能に、そうでなければ拒否されることになります。
Type Enforcement(TE)とは
SELinuxのセキュリティコンテキストは次のような3つの識別子を組み合わせたものになっています。
●ユーザー識別子
図ではrootとなっており、Linuxのユーザー(uid)に対応しているかのように見えますが、SELinux独自の定義によって【注2】、セキュリティポリシー上で定義されています。
【注2】 ちなみにFedoraのStrictポリシーでは、一般ユーザーは「user_u」というユーザー識別子となります |
Linuxシステム上のuidとのひも付けは、/bin/loginや/usr/sbin/sshd、/usr/sbin/telnetdなどを通じたシステムへのログイン時に行われます。
●ロール識別子
後述のRBACで使用する、root(特権)権限の最小化で効果を発揮する識別子です。
●タイプ識別子
SELinuxで最も重要な位置を占める識別子です。すべてのアクセス制御は、このType識別子の組み合わせがセキュリティポリシーで定義されているかどうかを基に決定されます。
タイプ識別子は、オブジェクト(ファイル、ソケット、メモリ、ポートなど)においてはそのまま「タイプ」としてLinux上の拡張属性という位置付けになりますが、サブジェクト(プロセス)においては「ドメイン」と呼ばれています。
ドメインとは、多少乱暴に表現すると、そのプロセスが持つ権限範囲ということができます。権限範囲に目的のオブジェクトのタイプが含まれるかどうかでアクセスが決定されることになります。
また、SELinux上の各ドメインはお互いにコンパートメント化されており、ほかのドメインからの不正なアクセスを許可しないように定義されています。
2/3
|
Index | |
SELinuxの出自とキソのキソ | |
Page1 SELinuxが生まれるまで SELinuxの現在 |
|
Page2 SELinuxのアクセス制御の基礎 Type Enforcement(TE)とは |
|
Page3 ドメインとアクセス制御 Role Based Access Control(RBAC)とは SELinuxを使用するメリット |
Security&Trust記事一覧 |
- Windows起動前後にデバイスを守る工夫、ルートキットを防ぐ (2017/7/24)
Windows 10が備える多彩なセキュリティ対策機能を丸ごと理解するには、5つのスタックに分けて順に押さえていくことが早道だ。連載第1回は、Windows起動前の「デバイスの保護」とHyper-Vを用いたセキュリティ構成について紹介する。 - WannaCryがホンダやマクドにも。中学3年生が作ったランサムウェアの正体も話題に (2017/7/11)
2017年6月のセキュリティクラスタでは、「WannaCry」の残り火にやられたホンダや亜種に感染したマクドナルドに注目が集まった他、ランサムウェアを作成して配布した中学3年生、ランサムウェアに降伏してしまった韓国のホスティング企業など、5月に引き続きランサムウェアの話題が席巻していました。 - Recruit-CSIRTがマルウェアの「培養」用に内製した動的解析環境、その目的と工夫とは (2017/7/10)
代表的なマルウェア解析方法を紹介し、自社のみに影響があるマルウェアを「培養」するために構築した動的解析環境について解説する - 侵入されることを前提に考える――内部対策はログ管理から (2017/7/5)
人員リソースや予算の限られた中堅・中小企業にとって、大企業で導入されがちな、過剰に高機能で管理負荷の高いセキュリティ対策を施すのは現実的ではない。本連載では、中堅・中小企業が目指すべきセキュリティ対策の“現実解“を、特に標的型攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)対策の観点から考える。
|
|