第8回 なぜクラスタリングにSELinuxを使わないのか!
面 和毅
サイオステクノロジー株式会社
OSSテクノロジーセンター
開発支援グループ
グループマネージャー
2008/4/16
クラスタリングの動作を確認する
すべての設定が終わったら、プライマリ/セカンダリの両方で
# /etc/init.d/heartbeat start |
としてHeartbeatを起動します。その後、
# /usr/sbin/crm_mon |
でステータスをチェックします。Heartbeatの起動後、ステータスチェックにしばらく時間がかかるようですが、しばらく(筆者のノートPC上では5分程度)たつとリスト5のようにクラスタリングを構成しているノードの情報と、リソース情報、現在リソースを提供しているノードの情報(リスト5ではセカンダリ)が表示されます。
[root@primary ~]# /usr/sbin/crm_mon Defaulting to one-shot mode You need to have curses available at compile time to enable console mode ============ Last updated: Fri Mar 28 22:58:59 2008 Current DC: secondary (1d19af62-ee33-490a-91e3-5353cdd0d5c3) 2 Nodes configured. 1 Resources configured. ============ Node: secondary (1d19af62-ee33-490a-91e3-5353cdd0d5c3): online Node: primary (2d343f83-10fa-4ae9-8b6a-90907164cc37): online Resource Group: group_apache ipaddr (heartbeat::ocf:IPaddr): Started secondary fs0 (heartbeat::ocf:Filesystem): Started secondary apache (lsb:httpd): Started secondary |
リスト5 セカンダリのノード情報などを取得 |
また、クライアント上のWebブラウザから、http://192.168.135.100/testdir/index.htmlにアクセスすると、ページが表示されます。
図3 テストページが表示された様子 |
現在リソースを提供しているノードがセカンダリと分かりましたので、この状態でセカンダリマシンを、
# shutdown -h now |
としてシャットダウンします。セカンダリマシンがシャットダウンした直後では図4のようにクライアントからWebコンテンツへのアクセスに失敗しますが、しばらくすると元のようにアクセスができます。
図4 シャットダウン直後はアクセスに失敗する |
その際に、プライマリ上で、
# /usr/sbin/crm_mon |
を実行すると、リスト6のようにセカンダリがオフラインになり、すべてのリソースがプライマリ上で動作していることが分かります。
[root@primary ~]# /usr/sbin/crm_mon Defaulting to one-shot mode You need to have curses available at compile time to enable console mode ============ Last updated: Fri Mar 28 23:02:34 2008 Current DC: primary (2d343f83-10fa-4ae9-8b6a-90907164cc37) 2 Nodes configured. 1 Resources configured. ============ Node: secondary (1d19af62-ee33-490a-91e3-5353cdd0d5c3): OFFLINE Node: primary (2d343f83-10fa-4ae9-8b6a-90907164cc37): online Resource Group: group_apache ipaddr (heartbeat::ocf:IPaddr): Started primary fs0 (heartbeat::ocf:Filesystem): Started primary apache (lsb:httpd): Started primary |
リスト6 すべてのリソースがプライマリで動いていることが分かる |
また、httpdはhttpd_tドメインで動作しており、/var/www/html/testdir以下もhttpd_sys_content_tタイプが付けられていることが分かります。
[root@primary ~]# ps axZ | grep http root:system_r:httpd_t 2945 ? Ss 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2947 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2948 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2949 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2950 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2951 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2952 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2953 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd root:system_r:httpd_t 2954 ? S 0:00 /usr/sbin/httpd |
リスト7 httpdはhttpd_tドメインで動作している |
[root@primary ~]# ls -lZ /var/www/html -rw-r--r-- root root root:object_r:httpd_sys_content_t index.html drwxr-xr-x root root system_u:object_r:httpd_sys_content_t testdir [root@primary ~]# ls -lZ /var/www/html/testdir -rw-r--r-- root root system_u:object_r:httpd_sys_content_t index.html drwxr-xr-x root root system_u:object_r:httpd_sys_content_t LIDS-JP drwx------ root root system_u:object_r:httpd_sys_content_t lost+found |
リスト8 testdir以下がhttpd_sys_content_tタイプとなっている |
静的コンテンツでは問題なし!
以上のテスト結果から、CentOS 5.1+Heartbeat(extraパッケージ)を利用したクラスタリング環境では、SELinuxを有効にしていても、静的コンテンツを提供するApacheはきちんと動作することが確認できました。
しかし、今回は動的コンテンツを確認していませんので、動的コンテンツを扱う場合にはさらに検証を行う必要があります。
また、Apache以外のサービスのクラスタリングも(原理的には静的/動的を確認すれば同じになるはずですが)確認の必要があります。
次回は動的コンテンツの確認を行いたいと思います。また、今回設定したシステムでSELinuxを有効にしてなぜきちんと動くのか、またどのようなときに動かなくなるのかを、検証結果を交えて解説したいと思います。
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Index | |
なぜクラスタリングにSELinuxを使わないのか! | |
Page1 クラスタリングとSELinux、相性はバッチリ……? クラスタリング・Powered by SELinuxの検証環境 VMWare Serverを用いた共有ディスクの実現 |
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Page2 Heartbeatで実現するクラスタリング SELinuxの設定はほぼデフォルトで |
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Page3 クラスタリングの動作を確認する 静的コンテンツでは問題なし! |
Profile |
面 和毅(おも かずき) サイオステクノロジー株式会社 OSSテクノロジーセンター 開発支援グループ グループマネージャー 学生時代よりUNIXに親しむ。1997年からサーバ構築およびセキュリティ全般を扱う仕事に従事、Linuxを使い始める。 現在はLIDSの普及活動に注力。LIDSユーザ会(LIDS-JP)の立ち上げやLIDS関連文書の日本語化、LIDSを用いたシステム構築の紹介などを行っている。また、サイオステクノロジーでビジネス面でのLIDSの普及活動に注力している。 2005年12月より、LIDS Teamに参加し、LIDSの公式な開発チームの一員として活動している。 |
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