セキュリティを形にする日本のエンジニアたち


第4回 ウイルスはなぜウイルスなのか


株式会社フォティーンフォティ技術研究所
技術本部 ソフトウェア開発部 シニアソフトウェアエンジニア
永田哲也

2010/6/14


 誤検出問題――守る側にも変化が必要

 このように、さまざまな検出ロジックを搭載し、プロトタイプは非常に高い検出率を実現した。しかし、最大の難関が控えていた。誤検出問題である。

 汎用的なロジックで検出を行うため、正常系アプリを検出してしまうことがある。PCゲームや商用アプリケーションの中には、クラック対策のため、ウイルスなどと同じように圧縮・暗号化を施してあるケースがまれにあり、これらを誤検出することがあった。

 そのため、検出率を落とさない前提で、誤検出を減らすため、さらに工夫を施していった。しかし、パターンファイルに依存しない汎用ロジックベースのヒューリスティック方式は、完全パターンマッチング方式と比較すると、仕組み的にどうしても誤検出が多くなる。

 新たなウイルスが日々数万件レベルで発生し、パターンマッチング方式が新しいウイルスの多くを検出できなくなっているという現状を考えると、意味のある対策を実施するためには「疑わしきは罰せよ」の精神にのっとるしかない。誤検出は、ときに管理者の大きな負担となるが、守れないものを運用することは、負担が小さかったとしても結局無駄な投資となってしまう。

 yaraiでは、誤検出してもファイルを削除せず「実行できなくなる」という仕組みを作った。どうしても誤検出が許されないアプリケーションについてはホワイトリスト登録できる仕組みも用意している。いままでのアンチウイルスソフトとは運用方法に対する考え方が若干異なるが、時代背景の変化に伴い、守る側にもある程度の変化が必要な時期に来ていると私は考えている。

 yaraiのスタティック分析エンジンは、今後も新たなウイルスに対抗できるよう、常に磨き続けられていく。


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Index
ウイルスはなぜウイルスなのか
  Page1
スタティック分析――ウイルスはなぜウイルスなのか
ウイルスがやりたいことが見えた
Page2
誤検出問題――守る側にも変化が必要


Profile
永田哲也(ながた てつや)

株式会社フォティーンフォティ技術研究所
技術本部 ソフトウェア開発部
シニアソフトウェアエンジニア

マルウエア解析、セキュリティエンジニア技術研修セミナー講師、セキュリティ関連プロダクトの開発。

自社製品のウイルス対策ソフトウエア「yarai」では、主要開発メンバーとして、Windows用実行ファイルの構造を解析し、マルウエアを検出するヒューリスティック技術「スタティック分析エンジン」を担当。

現在は「yarai」プロジェクトのリーダーを引き継ぎ、新バージョンや関連製品の開発を担当。


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