第5回情報セキュリティEXPOレポート
セキュリティ分野にも
「仮想化」「SaaS」「国際基準」の波
宮田 健
@IT編集部
2008/5/26
WAFやデータベース保護製品が再度注目される理由
日本に対するSQLインジェクション攻撃の波はいまだ続いており、すべてのWebアプリケーションをいま一度チェックする必要がある状況だ。もちろん、Webアプリケーションを完全にチェックし、問題があればすぐに改修するのが一番の策ではあるが、改修に時間がかかる、という場合も多いだろう。その場合、まずはWAF(Web Application Firewall)でまず安全性を確保し、さらに根本的な脆弱性対策を進めるという方法を取る必要がある。
東京エレクトロンデバイスはインパーバの製品である「SecureSphere」を展示していた。これはデータベース監査ゲートウェイ、データベース・セキュリティゲートウェイ、WAFを提供するアプライアンス製品で、WAF機能だけでなくデータベースに対して発行されるSQL文を監査、記録することができる。これらの機能が一体化しているため、外部からWebを経由してログインしたユーザー名と、内部でデータベース接続された情報を特定し、ひも付けできるのが特徴だ。
データベース監査が行えるSecureSphere DMG(クリックすると拡大します) |
【参考】 SecureSphere|東京エレクトロンデバイス http://cn.teldevice.co.jp/product/imperva/securesphere/index.html |
【関連記事】 Webアプリケーションファイアウォールの必要性(1) 機密情報に合法的に近づけるWebアプリケーションを守れ http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/rensai/waf01/waf01.html |
また、アメリカではこのようなWebアプリケーションの保護およびデータベースの保護製品は国際基準である「PCI DSS」(Payment Card Industry Data Security Standard)の観点からも注目されている。PCI DSSはアメリカのクレジットカード団体が策定した要件で、ISMS(Information Security Management System)で決められた要件をさらに一歩進め、「安全性の高いシステムとアプリケーションを開発し、保守すること(PCI DSS要件6)」「ネットワーク資源およびカード会員データに対するすべてのアクセスを追跡し、監視すること(PCI DSS要件10)」など、より具体的なものとなっている。今後は日本においても、ECサイトなどクレジットカード情報を扱う業種では、このPCI DSSに対応できるかという点に注視しなくてはならないだろう。
“セキュリティ”・アズ・ア・サービスへ
「カスペルスキー」はロシア、ヨーロッパ圏では代表的なアンチウイルス製品であり、多くのアプライアンス製品にOEMとしてエンジンを提供している。その日本法人であるカスペルスキーラブスジャパンのブースでは、カスペルスキーラブスCEOのユージン・カスペルスキー氏も来日し、かなりの注目を集めていた。
ここで注目したいのは、アンチウイルス製品の多様化だ。同社はアンチウイルス製品に「セカンド・オピニオン・ソリューション(SOS)」というものを追加した。これはすでに他社のアンチウイルス製品を導入している状態でインストールする製品となり、同一エンジンながらリアルタイムのスキャン機能を省き、個別のファイルのウイルスチェックなどに特化した。
そしてカスペルスキーラブスジャパンが次に進出する分野はSaaS(Software as a Service)だという。象徴的に「カスペルスキー・アズ・ア・サービス」と表現されていたのは「カスペルスキー・ホステッドサービス」という新たなサービスで、ネットワークのゲートウェイとなる部分にカスペルスキーエンジンを使った検疫サービスを提供することで、管理コストをほとんどかけずに脅威を排除するというサービスとなっている(日本での提供時期は未定)。
ブースではカスペルスキー・ホステッド・セキュリティというキーワードを強調していた。右は他社製品と同時に動いている「セカンド・オピニオン・ソリューション」。(クリックで拡大します) |
【参考】 カスペルスキーラブスジャパン http://www.kaspersky.co.jp/ |
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セキュリティ分野にも「仮想化」「SaaS」「国際基準」の波 | |
Page1 アプリケーションを二重化してもネットワークが落ちると…… こんなに小さい、けれどもしっかり“UTM” |
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