第5回情報セキュリティEXPOレポート
セキュリティ分野にも
「仮想化」「SaaS」「国際基準」の波
宮田 健
@IT編集部
2008/5/26
2008年5月14日から16日までの3日間、東京ビッグサイトにて「第5回 情報セキュリティEXPO」が開催された。内部統制対策の言葉も浸透し、新たな動きは少ないかと思いきや、新たな手法を用いた製品や、言葉だけでなく実際に導入のステージへと動きだした分野もある。展示されたものの中から特徴のある技術、製品をいくつか紹介しよう。
アプリケーションを二重化してもネットワークが落ちると……
システムの可用性を高めるために取るべき手段は多いが、ネットワークの基礎となるDNSやDHCPを止めないことに注目する必要がある――Infobloxの製品はそのような目的のために作られたものだ。
ソリトンシステムズの販売する「Infoblox」は、DNS/DHCP/TFTP/RADIUSなどのサービスを提供するアプライアンス製品だ。冗長化機能を持っており、冗長化プロトコルVRRPを使用し、複数台で構成することにより、これらの基本的なネットワークサービスを止めることなくフェイルオーバーできる。
ソリトンシステムズのブースではInfobloxが持つMACアドレス認証を利用し、簡易的なNAC(Network Access Control)機能のデモを行っていた。あらかじめ登録されたMACアドレスを持つクライアントのみに対してIPアドレスを配布する設定と、DHCPによって配布されたIPアドレスのみを許可し、固定IPアドレスのクライアントをブロックする設定を組み合わせることにより、意図しない持ち込みPCによる通信を排除できる。
Infoblox製品を使って持ち込みPC対策も可能(クリックで拡大します) |
【参考】 ソリトンシステムズ Infobloxシリーズ http://www.soliton.co.jp/products/infoblox/ |
【関連記事】 もう一度見直したいDNS/DHCP 連載インデックス http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/index/index_corenet.html |
こんなに小さい、けれどもしっかり“UTM”
「UTM(統合脅威管理)アプライアンス」という言葉はすでに浸透し、どのようなものなのかというのはすでにご存じの方も多いだろう。情報セキュリティEXPOでもUTMゾーンが設けられており、言葉の浸透から実際の導入フェイズに入ったことが見て取れる。
チェック・ポイントのUTM製品では、オールインワンで多くの脅威に対応できるという点がアピールされていた。現在、UTM製品に注目しているのはSMB領域と呼ばれる中小規模事業者だという。大きな企業では、アンチウイルス製品やスパム対策製品がすでに導入されており、ある程度のIT管理コストをかけられる。しかし中小規模の企業では専任のIT管理者が置けないこと、そして多種のセキュリティ対策製品を管理するコストが非常に大きいということもあり、いずれかのセキュリティ対策製品をリプレースするタイミングでUTM製品を選択する、ということが多いそうだ。
チェック・ポイントではエンタープライズ規模向けの製品ももちろん提供しているが、中小規模に向けての製品も拡充されている。最大190Mbpsのスループットを持つ「UTM-1 Edge」や、同製品を製造業向けに防塵対策などを施したモデル「UTM-1 Edge Industrial」などを展示していた。
製造業向けに提供される「UTM-1 Edge Industreal」(クリックすると拡大します) |
【参考】 チェック・ポイント http://www.checkpoint.co.jp/ |
また、図研ネットウエイブではフォーティネットの「FortiGate」シリーズを展示していた。やはりフォーティネット製品でも中小規模やブランチオフィス向けの製品に力を入れており、「FortiGate-310B」はミドルレンジでありながら、ファイアウォールのスループットをハイエンド並みに引き上げた製品である。
さらに仮店舗やセミナー会場など、一時的にネットワークを確保するという分野にもUTMは進出する。「FortiGate-60B」はイー・モバイルのPCカードをアクセスラインとしても利用でき、一時的な場所に敷設するネットワーク回線であっても、安全性を提供できることが特徴だ。また有線での接続も可能なので、モバイルアクセスをバックアップ回線として確保し、小売業の店舗と本部をつなぐなど、止められない、かつ安全に接続したいというニーズにも活用できるUTM製品となっている。
イー・モバイルをアクセス回線に使える「FortiGate-60B」(クリックすると拡大します) |
【参考】 FortiGate|図研ネットウエイブ http://www.znw.co.jp/product/fortigate/index.html |
1/3 |
Index | |
セキュリティ分野にも「仮想化」「SaaS」「国際基準」の波 | |
Page1 アプリケーションを二重化してもネットワークが落ちると…… こんなに小さい、けれどもしっかり“UTM” |
|
Page2 WAFやデータベース保護製品が再度注目される理由 “セキュリティ”・アズ・ア・サービスへ |
|
Page3 「怪しい?」を「怪しい!」に――ボット対策の新手法、仮想化 |
Security&Trust記事一覧 |
- Windows起動前後にデバイスを守る工夫、ルートキットを防ぐ (2017/7/24)
Windows 10が備える多彩なセキュリティ対策機能を丸ごと理解するには、5つのスタックに分けて順に押さえていくことが早道だ。連載第1回は、Windows起動前の「デバイスの保護」とHyper-Vを用いたセキュリティ構成について紹介する。 - WannaCryがホンダやマクドにも。中学3年生が作ったランサムウェアの正体も話題に (2017/7/11)
2017年6月のセキュリティクラスタでは、「WannaCry」の残り火にやられたホンダや亜種に感染したマクドナルドに注目が集まった他、ランサムウェアを作成して配布した中学3年生、ランサムウェアに降伏してしまった韓国のホスティング企業など、5月に引き続きランサムウェアの話題が席巻していました。 - Recruit-CSIRTがマルウェアの「培養」用に内製した動的解析環境、その目的と工夫とは (2017/7/10)
代表的なマルウェア解析方法を紹介し、自社のみに影響があるマルウェアを「培養」するために構築した動的解析環境について解説する - 侵入されることを前提に考える――内部対策はログ管理から (2017/7/5)
人員リソースや予算の限られた中堅・中小企業にとって、大企業で導入されがちな、過剰に高機能で管理負荷の高いセキュリティ対策を施すのは現実的ではない。本連載では、中堅・中小企業が目指すべきセキュリティ対策の“現実解“を、特に標的型攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)対策の観点から考える。
|
|