システムインフラベンダ ブリーフィング(6)
[ガートナー]サーバ仮想化の普及は混乱への道筋?
三木 泉
@IT編集部
2009/3/30
不況の影響で、サーバ仮想化に取り組むユーザー企業が増えている。しかし、状況は正しい方向に進んでいるのだろうか。今回は特別編として、調査会社ガートナーのバイスプレジデント兼最上級アナリストに、サーバ仮想化の動向を聞いた |
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今回は特別編として、ガートナー リサーチ バイスプレジデント兼最上級アナリスト、カール・クランチ氏にサーバ仮想化の動向を聞いた。
同氏はサーバ分野のテクノロジ・トレンドを専門とし、グリッド・コンピューティングの市場とテクノロジや、クラスタ・コンピューティングに関する主要な調査を行っている。銀行および製造業などのITユーザーやベンダを対象としたコンサルティングも行っている。取材は2009年3月初めに行った。太字は編集部による質問である。
サーバ仮想化の価値は統合だけではない
企業ITにおけるサーバ仮想化の意義に関して、もう企業はかなり認識していると考えていますか? それともまだ強調する必要があると思いますか?
明らかに後者だと思います。多くの人々は企業ITに仮想化がもたらす価値を理解していると思っており、ほかの企業に広く使われていることを知っています。しかし仮想化が、さまざまな形で彼らのITの状況を改善したり変えたりできるということを知りません。
この現象は今年、特に顕著に起こります。困難な経済環境のなかで人々は金の節約に貢献し、今年のうちにメリットをもたらしてくれ、すぐに元がとれるものを求めています。仮想化はこうした節約を可能にしてくれる技術の1つです。従ってまだ仮想化を広く導入していない人々は(サーバを)統合し、コストをカットします。これが現在のところのリアルな価値です。
しかし、価値はほかにもたくさんあります。柔軟性を確保し、ビジネスに対応できるといったことに、人は最初から気付きはしません。まずコストのために仮想化を考え、その後に「ああ、ディザスタリカバリ計画を改善できるはずだ」「もっとビジネスに臨機応変に対応できるようになる」と考えるようになります。こうした点に気付くには教育や説明が必要です。
その文脈でいえば、サーバ仮想化をどのように実行するかによって、コストを削減することもできますが、コストが上昇することもあり得ます。特に企業が仮想化を導入する際、最初に必要となる投資が問題です。例えば、より拡張性の高いストレージ・インフラを導入しようとすれば大きなコストが掛かります。あなたは、コスト削減を最初の年から求められている人々に、少なくとも最初の年にコスト上昇の可能性が高いサーバ仮想化の利用についてどうアドバイスしますか?
明らかに、全体としての改善が必要です。初期投資を理解してビジネスプランを構築し、その後のコスト削減から、十分な節約効果を得て、全体として1年以内にポジティブな価値にする必要があります。これを確実に実現するには、注意深く計画を組み立てなければなりません。
状況によって違いが出てきます。もし、すべてのサーバ機を買い換えた後で仮想化をしようとし、これらのサーバ機を買い直さなければならないことになれば、無駄は大きく、このコストを克服するのは困難になります。
しかし、大多数のサーバ機が買い替えの時期に達している段階なら、仮想化はほとんど無償でできることになります。なぜなら、すでにエネルギーコストの節約など、ほかの名目で金が使われているからです。
そこでガートナーでは、仮想化計画を構築しようとしている人に対し、ソフトウェアコストの上昇を把握すべきだと伝えています。ソフトウェアコストの上昇は、ハードウェアの節約を上回ってしまうかもしれません。
まずは仮想化しやすい部分に注力して仮想化を進めるべきです。往々にして正しい方法は、シンプルな処理を統合してしまえるような、現在の課題に集中することです。
昨年、ガートナーは複数の仮想化プラットフォームがそれぞれ普及することで、企業内に混乱が生じるとの予測を出しました。しかし、これを心配しなければならない理由が私には分かりません。企業内で目的や導入担当者により、導入する仮想化プラットフォームが違ってくるのは避けられません。ユーザーに期待されるSLAやアプリケーションなど、ニーズに応じて異なる仮想化プラットフォームを使い分けることは逆にいいのではないかと考えますが。
私は、各企業が根本的な判断として適材適所でいくのか、効率化のために標準化するかを決めるべきだと思います。各CIOは自らの判断で、標準化をいつやめて、用途に適したさまざまなアプローチを認めるかを決めるべきです。
ただし、この業界における経済効率上のベストプラクティスとしては、標準化ができると、効率化によりいくつかの点でコストを押し下げられる傾向にあります。
1つは、担当者をさまざまなシステムのために訓練しなくて済むことです。運用の質も高められます。人は1つのアプローチに非常に習熟してこれに専念すれば、複数のアプローチを使い分けるのに比べ、間違いをおかす確率は低くなります。たしかに別の部門でやれば、これは大きな問題にならないかもしれません。しかし、非常に大きな組織であっても、CIOは何らかの方法で1つのERPパッケージに統一しようとするとか、1つの技術に標準化してコストを減らそうとするのが常です。ボリュームをバックにベンダとの交渉ができますし。
標準化をすることにメリットはありますが、ベストフィットという点ではあきらめなければならないことになります。従って、適材適所ということを認めなければならない場面も出てくるでしょう。
サーバ仮想化に関していえば、複数技術がそれぞれ広まるということが、企業による意識的な選択によってもたらされるのではなく、選択をコントロールしないために起こってしまう可能性があります。
さまざまなベンダがそれぞれ別のソリューションを売った結果としてこれが起こってしまうのであれば、価値はありません。標準化のメリットを失うだけです。
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サーバ仮想化の普及は混乱への道筋? | |
Page1 サーバ仮想化の価値は統合だけではない |
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Page2 サーバ仮想化の焦点はますます管理に移る |
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