システムベンダブリーフィング

システムインフラベンダ ブリーフィング(9)

ヴイエムウェアがvSphereを「クラウドOS」と呼ぶ理由


三木 泉
@IT編集部
2009/6/16

 ヴイエムウェアは第2のネットスケープにならない

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 マイクロソフトは賢い会社だ。ノベルのサーバOSも、あなたが在籍したことのあるネットスケープのWebブラウザも、結局のところ駆逐された。サーバ仮想化でもマイクロソフトは、「みんなのための仮想化」という観点から浸透を図ってくる。ヴイエムウェアはこれにどう対抗できるのか。

 まず全般的なところから話し、次に具体的な話をしたい。

 第1にいえるのは、ポール・マリッツ、トッド・ニールセンといった、ノベルやネットスケープとの闘いを指揮した人々が、現在ヴイエムウェアの経営に携わっているということだ。彼らは(当時、対抗戦略の)台本を書いていた人々なので、(何が必要かを)分かっているはずだ。これは当社にとっていいことだ。

 第2に、マイクロソフトに負ける企業は、社内的にも何か間違ったことをした会社だといえる。いい例がネットスケープだ。製品ラインを多様化することができなかった。顧客に対する価値提案も広げられなかった。われわれは十分な革新性を備えておらず、顧客にとって意味を持つような形で、製品を前進させていくことができなかった。

 しかし電子メールサーバやコラボレーション製品など、(製品を広げる)努力はしていたはずだ。

 そうした製品は、マイクロソフトがすでにやっていたことと、根本的に異なるものではなかった。

 現在見られる仮想化の革新ペースと、仮想化によって実現できることは、当時とはまったく別の次元にある。

 例えば、いったん中核的な仮想化環境を構築したら、仮想化によってデータセンター管理を変え、セキュリティや可用性などを変えることができる。これが一段落したら、クラウド・コンピューティングの考え方に移行できる。つまり、われわれは複数のサーバにまたがる技術をテーマとし、データセンター全体に、水平的に適用できるものを目指しており、データセンターの内側と外側をカバーするものを志向している。これは、単一のマシンにハイパーバイザを導入するのとは、非常に異なる問題定義の仕方だ。

 過去3〜4年の間にも、仮想化技術のゲームは目覚しく変化した。われわれは顧客に提供する価値提案という点で、ゲームをチェンジし続ける。

 マイクロソフトは、現時点では社内クラウドを稼働できると主張することはできない。彼らがどう言おうと、顧客はそれを信じることはない。マイクロソフトは、われわれが2年前あるいは1年半前に提供していたレベルの可用性、セキュリティ、管理性を提供していると主張することもできない。仮想化技術の中核部分をとってみても、ヴイエムウェアは顧客に対し、経済性の観点からマイクロソフトと比べて非常に強力なアドバンテージを提供している。

 それは仮想マシンの集約度が高いという話か。

 そうだ。サーバ統合だけをとっても、われわれは非常に大きな価値を提供している。結果的にわれわれのソリューションは安くつき、顧客はそれを歓迎している。

 また、われわれが顧客に提示している戦略的な将来は、マイクロソフトの方向性とは異なる。だからこそ、今回の闘いは以前のものとは異なるといえる。もし、仮想化が中核的なサーバ統合機能だけのことだったら、あなたの言うことは正しいだろう。しかし、これは次世代データセンターを構築するということだ。マイクロソフトはこうしたことを語っていない。10年越しのビジョンでは語るだろうが、顧客はマイクロソフトを選択肢に入れていない。顧客は次の世代に自社でデータセンターを運営するのか、外部のデータセンターに移るべきか、クラウド・プロバイダに頼るのかと考えている。これはまったく(これまでとは)別のゲームだ。

 顧客の視点からは、選択という要素がますます重要になってきている。非常に多くの顧客が、「マイクロソフトを使っているけれど、自社のデータセンターのすべてをマイクロソフトにはしたくない」と話している。「自社はすべてのアプリケーションでマイクロソフトに依存したいのか」という問いに対する答えがノーであるなら、マイクロソフトをあなたのデータセンターの基盤にしたりはしない。すなわち、われわれは顧客の戦略とより密接につながっているといえる。サーバ統合という点でも、より少ないコストでより多くの価値を生み出している。

 しかしHyper-Vは利用しやすく、敷居も低い。事業部門、あるいは草の根レベルのHyper-Vの広がりを止めることはできないのではないか。

 いくつかのことが指摘できる。もし、事業部門でサーバが必要になったとしても、自分たちでサーバを導入する必要はない。ヴイエムウェアの顧客を訪ねれば、多くの場合、(事業部門は社内の)Webポータルで申請を行っている。社内のサービスではあっても、EC2のように利用できる。彼らにとってこれほど簡単なことはない。この点では、(仮想化プラットフォーム自体の管理の)親しみやすさという要素の重要性は相対的に低下する。

 そして今回は、アプリケーションとOSのレイヤをハードウェアから切り離す新たなレイヤが登場した。過去の経験から学んだ人は、アプリケーションをハードウェアから切り離したいと考える。これが仮想化という新しいモデルだ。マイクロソフトの強みと考えられてきたことが、それほどの強みでもなくなってきている。

 部門レベルの人々にとって、Hyper-Vは使い始めるのが楽だというあなたの指摘は正しい。それを無視することはできない。これは、約1年前にわれわれが無償のESXiを提供し始めた理由の1つでもある。週1万件のダウンロードがあるが、だれが使っているかを見てみると、まさにそうした(部門レベルの)ユーザーだということが分かる。(ESXiは)非常に簡単に使い始めることができる。

 このようにわれわれはいくつかのことをしている。しかしデータセンターでアプリケーションを動かすこと、そしてデータセンターの運用におけるエコノミクスを根本的に変えるという、まったく違う議論にわれわれは踏み込んでいるのだ。

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ヴイエムウェアがvSphereを「クラウドOS」と呼ぶ理由
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「クラウドOS」は新たな製品カテゴリだ
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ヴイエムウェアは第2のネットスケープにならない

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