システムベンダブリーフィング

システムインフラベンダ ブリーフィング(11)

ITインフラの仮想化にはコスト削減の先がある


三木 泉
@IT編集部
2009/9/24

 IBMのサーバはほかとどう違うのか

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 では、IBMが提供するサーバ・ハードウェアは他社製品とどう違うのか。OpteronやXeon 5500番台を利用しているかぎり、サーバ製品間にはあまり大差がないのではないかと思う人も多いだろう。早川氏は、メインフレームに適用してきた信頼性や安定性の技術を、x86サーバでも同じように使えるようにしていくという設計思想に根本的な違いがあると話す。

 IBMは2009年3月に、インテルの新CPUを採用し、3つの製品ラインナップを更新した。ラックマウント型の「System x3550M2/x3650 M2」、ブレード型の「Blade Center HS22」、データセンター用集約サーバの「iDataPlex」だ。最近のお客様の最大の関心事は消費電力やワット当たり性能であるため、これらの製品では特に力を入れている。

 3650 M2は、1世代前のサーバと比べると空間的にかなりすっきりした内部設計になっている。これにより冷却ファンの数を10個から3個に減らすことができた。ファンは多少大型化したが、ファンのみの消費電力はフル稼働時でこれまでの78Wから29Wに減らすことができた。併せて排熱も40%減少した。

日本IBM システム製品事業 システムx事業部 テクニカル・セールス
システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト シニアITスペシャリスト
早川 哲郎氏

 ハードディスクに関しては、ブレードでもホットスワップはいまや当たり前だが、IBMではSAS、SATAに加え、SSDもサポートしている。

 日本では、SSDというと、書き込み回数の制限を心配する人が多い。しかし現在では、書き込みの分散を図る技術が進歩しており、その心配はあまり問題にならなくなっている。また、MTBFを単体で比較するとSSDはHDDに比べはるかに長い。

 サーバ向けのSSDはもともとIBMが約2年前、他社に先駆けて最初に発表したものだ。その後パフォーマンス、信頼性ともに向上している。自信を持って提供できる。

 また、高品質な電源装置で電力損失を減らし、電力効率をこれまでの80%台から90%台に引き上げた。これが設計の改善とともに、冷却ファンの削減にもつながっている。

 ブレード型のBladeCenter HS22も、左右対称のすっきりした配置に変更した。HDDを前面に移動し、メモリスロットは中央に置いた。メモリスロットを8スロットから12スロットに増やしたことで、サーバ仮想化の統合度を従来以上に高められるようになった。なお、Xeon 5500番台を採用したサーバでは、スペック上18スロットを設けることができるが、HS22ではあえて12スロットに抑えている。これは、1チャンネルに3枚のメモリを差すと、メモリ転送速度が大幅に低下することが分かっているからだ。ただし、ハイエンドのサーバでは18以上のメモリスロットに対応している。

右がBladeCenter HS22。左は従来モデルのHS21だ。内部設計の対称性が大きく異なっている。両モデルとも、シャーシとの接続は二重化されている

 エアフローはメインフレームからの伝統で、IBMのエンジニアがスキルを持っている部分だ。今回のHS22は前から入った空気がそのまま後ろに流れるようなデザインになっている。前面パネルの空気取り込み用の穴も大幅に設計変更し、全面に設けることで、空気を大量に取り入れることができるようになった。同じ設置面積でも効率的に冷却可能だ。さらに前面パネル横からも空気を入れられるようにしている。

 HS22は搭載できるメモリの枚数が増え、ブレード1枚当たりの消費電力は多少増大するが、空冷ファンの負担は大きくなっていない。

 IBMのブレードと他で、最も異なる部分は徹底した二重化だ。特に注目できるのはブレードとシャーシのコネクタ部分だ。IBMではネットワークと電源のコネクタをともに二重化している。完全に冗長化することが基本のメインフレームからの伝統だ。この部分を二重化していないベンダは多い。しかし、ここが壊れると、全シャーシが落ちることにもなりかねない。

 こうしたハードウェアにおける改善の一方で、管理ツールの存在も重要だ。

 IBMではまず、ブレード型とラックマウント型の管理手法がこれまで若干違っていたものを統一した。これにより、管理者から見て「IBMのサーバだったらこういう風に管理すればいい」と思ってもらえるようになった。
従来から提供してきた便利な管理ツールで、これまであまり使われてこなかったものも、今回名称を変更するなどして、より身近なものにしようとしている。

 例えば「Bootable Media Creator」だ。このツールでは、CDやUSBメモリでお客様のファームウェアのイメージを作成し。何十台ものアップデートを行うことができる。今回はRAIDやBIOS設定などを、OSの導入と同じタイミングで一括して行えるようになった。

 また、「Service and Support Manager」は、ハードウェアの障害が発生すると、自動的にIBMに連絡する。メインフレームなどでは一般的な「コールホーム」という機能だが、x86サーバでも標準で提供している。

 さらに電力モニタリング機能は、IBM製品だけでなくネットワークスイッチや他社サーバの消費電力も計測できる。これはIBMモニタリング機能付きPDUで電力を測ることによって実現している。IBMサーバ製品では、モニタリングだけでなく、消費電力の上限を設定し、制限することもできる。機器1つ1つの電力消費を細かく制限するというよりも、複数機器をグループ化して合計の消費電力を抑える使い方が便利だ。

 これらのツールはIBMが以前から提供してきたものだが、あまり広く知られていなかった。今後はこれらを含めて、ほかと異なるIBMの良さをアピールしていきたい。

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仮想化はリアルタイム性のために必要
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