システムインフラベンダ ブリーフィング(12)
NECのクラウドはどこを向いているのか
三木 泉
@IT編集部
2009/10/14
国内システムベンダはこぞって何らかのクラウドに関する戦略や製品、サービスを展開し始めている。そのなかでNECのクラウド戦略は分かりにくいという思う人々が多いようだ。NECは共通基盤機能を提供し、サービスやアプリケーション間の連携を図る部分で、SIにおける同社の強みを生かしていこうとしている |
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国内システムベンダはこぞって何らかのクラウドに関する戦略や製品、サービスを展開し始めている。そのなかでNECのクラウド戦略は分かりにくいという思う人々が多いようだ。その一因としては、NECのクラウド/サービス関連ソリューションが広範なため、あいまいな感じがする点が挙げられる。しかし、より詳しく見ていくと、独自性を備えた部分も見えてくる。
今回はNECのマネージドプラットフォームサービス本部長 細田稔氏に、NECのクラウドへの取り組みについて聞いた。太字は編集部の質問および補足である。。
NECは2009年4月、クラウド指向のサービスプラットフォームソリューションを発表した。これが現在のNECにおけるクラウドに対する考え方だと細田氏は話す。この発表では、ユーザー企業の業務プロセスコンサルティング(同社では「ビジネスモデルコンサルティング」と呼ぶ)を提供、さらにNECの開発したサービス共通基盤を生かし「SaaS型」「共同センタ型」「個別対応型」の3つのモデルでサービス事業を伸ばしていくことが示されている。では、クラウド時代におけるNECの強みとは何なのか。
アメリカのクラウドは、Amazonなどユーティリティコンピューティングに近いところから広がってきた。それにSalesforceのような業務システム系のものが出てきて、クラウドが、単にCPU貸しからシステム貸しに広がってきたという認識を持っている。
当社がどうクラウドに取り組むかを考えたときに、自社の強みは何だろうか。当社はハードウェアをつくっているしSIもやっている。また、アウトソーシングもやっている。しかしハードウェアは最近コモディティ化し、以前に比べて特色が出しにくくなっている。すると残るNECの強みはSIと運用系のソフトだろう。これをベースにクラウドを考えている。
サービス事業の3つのモデルのうち、「共同センタ型」「個別提案型」は昔からやっていた、新しいのはSaaS型だ。この3つのパターンでクラウドと呼ばれる市場に出ていいこうというのが4月の発表の骨子だ。
当社は特に業務システムで、SI業者としてお客様のニーズに応じてお客様の要求するソフトをつくってきたという大きな特徴がある。一方で、お客様がクラウドにする1つの理由は、コストが下がるという期待にある。従来のような個別対応によるシステム構築ではコストが下がらないので、洋服でいえばオーダーメードでなくパターンオーダーあるいはレディメイドのようなサービスの提供を目指していく。
しかし、カスタマイズに特徴を出したいので、あまりレディメイドという言い方はしていない。自分たちのSI力を使ってお客様ごとのサービスをあらかじめ定義し、基本サービスにカスタマイズを加えて使ってもらうのがNECのクラウドの方向性だ。
いままでもユーザー企業向けの業務システム構築において、開発作業を効率化するためにある程度の標準化を図ってきただろうが、これはその延長線上といえるのか?
転換点をつくってしまうと過去の資産は生きない。われわれはこれまでSIをやってきたし、多くのSEも抱えている。そういう資産をうまく使ってクラウドにいくために、連続性を保ちなら舵を切ろうとしている。いまの推定ではSIとサービスの比率を考えたときに、しばらくはSIのほうがサービスよりはボリュームが大きい。サービス領域はこれから増やそうとしているが、SIに取って代わることができるかというと、しばらくはないだろう。しかし、新しいサービス形態にわれわれもチャレンジしようということで、特にSaaSの領域では、従来の延長線上ではあるがよりお客様のニーズを取り入れたようなものを増やしていきたいと思っている。
システム間連携や基盤の共通化を目指す
NECのクラウド関連の発表は、基幹システムに焦点を当てているのが特徴的だが、基幹業務システムはサービスへの移行がもっとも遅いのではないか。
基幹業務システムはゴールとして考えている。しかし、実際のビジネスはやはり周辺システムや情報系のシステムから進むだろう。RFIDやデジタルサイネージを使ったような新領域も含め、いわゆる基幹業務とは違った領域も並行的にやってどんどん広げていこうと考えている。業務システムをターゲットにしているというのは平行してやっている。全方向的かもしれないけれど、そういうところを狙ってやろうとしている。
ERPでは、NECは自社の中堅・中小企業向けパッケージである「EXPLANNER」をSaaS化し、提供を開始している。対象となる企業の数は多いため、市場機会は小さくない。その一方で、大企業のERPについてもサービスとしての提供を推進していきたいという。
PaaS的なサービスの提供については、どう進んでいるのか。
2008年10月に発表した「RIACUBE/SP」というSaaS基盤サービスで、そうしたサービスを提供しようとしている。このうえで、業種別のアプリケーションや、業種にかかわらず使えるアプリケーション、従来からやっているメール、グループウェアとかデータ交換など、またお客様開発のアプリケーションなどを、この基盤に載せることを進めている。RIACUBEは2次機能まで開発が終わって、普通に使えるようになってきた。
RIACUBEで提供する共通サービス基盤の機能は、われわれが定義したAPIを介して使うようにしようと思っている。企業向けの基盤なので、AmazonやGoogleのようにAPIを広く公開することはない。ユーザー企業だけに提供する。また、お客様の社内で使う業務パッケージやユーティリティパッケージを持っているベンダにも、これを使ってもらう。
それはSalesforceなどさまざまなアプリケーションが共通の認証を使え、相互のデータのやり取りも実現するということか。
当社は、セールスフォース・ドットコムとは打ち合わせをかなり進めている。共通サービス基盤のなかではOSRというサービス連携機能を使って、Salesforce側のAPIを、こちらからログインしただけで自由に使えるとか、Salesforce側でログインした人が、ある設定のもとでこちらの基盤を使うとか、そういうこともできるようにしようとしている。OSRのスペック自体はセールスフォース・ドットコムやオラクル、NTTコミュニケーションズなどと、やり取りする項目を検討しているところだ。
OSRは、ユーザー企業が自社のデータセンターで運用するアプリケーションからも利用できるようになるのか。
可能だ。ただしお客様のデータセンター側でOSR対応の環境を入れてもらわないといけない。そういう意味では準備に時間が必要なため、自由なやり取りというところまではまだいかない。逆にあまり自由にすると、セキュリティの問題が生じたり、それぞれのデータセンターで運用が違うあるいは、SLAのレベルが違うといった問題が発生し、使う人が混乱する。NECが連携対象とするデータセンターは、NECとほとんど同等の運用管理やセキュリティ対策ができるセンター、そういうところに絞り込もうと思っている。
アメリカでいうクラウドの、広く自由にやり取りできるというイメージではなくて、クラウドのなかでも雲の種類を選ぶというか、そういう感覚でわれわれと一緒にできるパートナーを探していこうとしている。
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Index | |
NECのクラウドはどこを向いているのか | |
Page1 システム間連携や基盤の共通化を目指す |
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Page2 サービス化は業務プロセス標準化と表裏一体 |
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