サービス化は業務プロセス標準化と表裏一体
- - PR -
こういう基盤サービスを使うことで、ユーザー企業がクラウドに期待することの1つであるコスト削減にはどれだけ効果があるのか。
複数のサービスを組み合わせたからコスト削減ができるとは思っていない。よそのサービスを使っていては組み込めなかった機能を、比較的安価に提供できるということはある。ただし、システム間連携を実現したことでトータルのコストが削減できるという考え方では、お客様は納得してくれていない。1つ1つのデータセンターでのコストをもっと下げてくれといわれている。これに対しては、ハード面のアプローチと運用面のアプローチを、両方組み合わせてやっていく。ハード面では仮想化を使って、性能の高いハードを仮想化で小分けすることで、複数のサーバを乗せる形でコストを下げる。ただし、われわれはサーバの仮想化だけでなく、データセンターのなかのネットワーク機器やストレージも含めてすべてを仮想化し、コストを下げようとしている。
また、運用面では、いままでデータセンターというと、サーバが100台、200台ではそれなりの人数のインフラ管理者を張り付けなければならなかった。しかし、運用管理ソフトを強化することで、1人100台あるいは200台見るということができると、人件費を下げられる。このようにハードと運用の両方でコスト削減をやろうとしている。
ユーザー企業からサービスへの接続に関して、インターネットを使うのか使わないのかという点では、NECとしての考えはあるのか。
両方用意している。企業の間には、まだインターネットに安心感を持たない人が多い。そこでキャリアのVPNを使っている。VPNをすでに使っている企業は多いので、これにさらにNECの新しいデータセンターをつないで使っていただくやり方がある。一方で、インターネットでもいいよというお客様もいるので、データセンターからはVPNへの出口とインターネットへの出口を2つ持っている。すなわち、ネットワークは用途に応じて選んでもらう。
セールスフォース・ドットコムはNTTコミュニケーションズと組んでVPN経由でサービスを提供している。日本ではVPNを使いたいという要望は多い。われわれもセールスフォース・ドットコムとの連携では、NTTにVPNのゲートウェイを用意してもらい、お客様がNTTのどのVPNに入っているかを確認したうえで、お客様了解のもとで、そのVPNをデータセンターに引き込む。いまこうしたゲートウェイ・サービスを提供しているのはNTTのみだが、今後ソフトバンクやKDDIもやってくれることになっている。あと半年も経てば、キャリアフリーでそういうことができるようになると思う。
フルアウトソーシングに対してアプリケーション単位でも始められる安価なアウトソーシングとして利用するユーザー企業も多いのではないか。
それはそのとおりだと思う。しかし懸念事項はある。セキュリティはどうか、ピークが重なったときにどれくらいフォローしてくれるのか、障害発生時にどれくらいのスピードで回復してくれるのか、そういうお客様にとっての多数の懸念事項を1つ1つ説明しているという段階だ。特にSaaSでは、品質はどうか、トラブル対応力はどうか、情報部門の存在をどうしてくれるのか、新たなビジネスプロセスにどれだけ対応してくれるのかといった疑問をユーザー企業から受けている。
アプリケーションを開発する人々にとっても課題はある。用意されている共通機能は自分たちの要求にどれだけ合うのか確認したいとか、連携はどれだけできるか、拡張はどれだけできるか、セキュリティはどこまで確保しているか、サービス化するに当たってNECはどこまで助けてくれるのか、などだ。こうした点は、細かい部分ではどうしても確認が必要になる。お客様の反応はさまざまだが、あと1〜2年すればコモンセンスができるのではないかと思う。
一連の発表では、ユーザー企業のビジネスプロセス改革についてのコンサルティングを含めた話が出てくるが、これはどういう意図なのか。
「ビジネスモデルコンサルティング」(BMC)と呼んでいる。従来はお客様のビジネスモデル(業務プロセス)に合わせてシステムをつくってきた。ところがパターンオーダーにしようとすると、新しいビジネスモデルにお客様を合わせてもらわなければならなくなる。この、パターンを合わせるための活動がBMCだ。有償だが、これをNECから提供しようとしている。ビジネスプロセスを変革しないと、パターン化された業務システムをお客様が使うことがなかなかできない。業務システムをサービスに載せる際には必ずBMCとペアでやるつもりだ。特に売り上げ1000億や5000億の大企業だと業務プロセスは簡単には変わらない。プロセス改革に半年から1年、長いところでは2年かかるかもしれない。
ネガティブな表現をすると、アプリケーションにユーザー企業の仕事のやり方を合わせろといっているように聞こえる。
業務プロセスを標準化すれば、その分コストが下がるだけでなく、国際会計基準や内部統制に合わせやすくなる。例えば内部統制では、お客様ごとに業務プロセスがばらばらだと、内部統制ポイントをお客様ごとにつくっていかなければならない。すると金と時間が掛かる。ある程度標準化されたプロセスなら、内部統制や国際会計基準に合わせるためのポイントが最初から用意できる、というメリットがある。
それはお客様の判断次第だ。特に上場企業にとっては内部統制が必須になる。そういう意味では、アプリケーションに業務を合わせることに対する拒否感は少なくなったのではないかと思っている。もちろん現実には、ビジネスプロセスを変えるというのは大変だ。この検討のために基幹業務システムのサービス化は時間が掛かる。
NEC社内ではSAPを採用しているというが、ユーザー企業にもSAPを標準として使ってもらうという話なのか。
大企業については、当面そうなると思う。あまりいくつものアプリケーションに対応すると分散してしまうためだ。中小企業向けは業務プロセス改革をやる必要があるかということもあるが、サービスで使っていくのはERPだと当社製のEXPLANNERや、関連会社がやっているGrandItだ。SIではほかの製品も使っているが、これらはそのまま残る。
NECのクラウドが他社と違う部分は何かを改めて表現してほしい。
当社は基本的にSIとサービスを組み合わせて提供する、そのなかでもSIに力を入れたサービス化を考えるというのが特徴ではないかと思う。従来からサービスに適しているとされてきたものは当然やるが、昔は無理だといわれていた領域にもチャレンジしているというのが1つの特徴だ。特に社内で(SAPを)まず実践して、これを拡販していく取り組みをしているところはないと思う。
2/2 |
Index | |
NECのクラウドはどこを向いているのか | |
Page1 システム間連携や基盤の共通化を目指す |
|
Page2 サービス化は業務プロセス標準化と表裏一体 |
- Windows 10の導入、それはWindows as a Serviceの始まり (2017/7/27)
本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者向けに、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能について解説していきます。今回は、「サービスとしてのWindows(Windows as a Service:WaaS)」の理解を深めましょう - Windows 10への移行計画を早急に進めるべき理由 (2017/7/21)
本連載では、これからWindows 10への移行を本格的に進めようとしている企業/IT管理者に向け、移行計画、展開、管理、企業向けの注目の機能を解説していきます。第1回目は、「Windows 10に移行すべき理由」を説明します - Azure仮想マシンの最新v3シリーズは、Broadwell世代でHyper-Vのネストにも対応 (2017/7/20)
AzureのIaaSで、Azure仮想マシンの第三世代となるDv3およびEv3シリーズが利用可能になりました。また、新たにWindows Server 2016仮想マシンでは「入れ子構造の仮想化」がサポートされ、Hyper-V仮想マシンやHyper-Vコンテナの実行が可能になります - 【 New-ADUser 】コマンドレット――Active Directoryのユーザーアカウントを作成する (2017/7/19)
本連載は、Windows PowerShellコマンドレットについて、基本書式からオプション、具体的な実行例までを紹介していきます。今回は、「New-ADUser」コマンドレットです
|
|