サーバ仮想化バトルロイヤル(3)
3つの仮想化ソリューションの近未来
三木 泉
@IT編集部
2008/8/20
マイクロソフト:サポートやライセンスの整備が先決課題
以下は、第1回、第2回に引き続き、マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 コア インフラストラクチャ製品部 マネージャ 藤本浩司氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年7月中旬だ。
サーバOSやサーバ・アプリケーションで大きなシェアを持つマイクロソフトにとっては、サーバ仮想化は仮想化ソフトウェアだけの話では済まない。サポートとライセンスがサーバ仮想化普及に向けての最も大きな壁になることは広く認識されている。事実上、一般企業が仮想化ソフトウェア上で利用するサーバOSのほとんどがWindows Serverであることを踏まえると、マイクロソフトが仮想化環境におけるWindows Serverとその上のアプリケーションの利用について、サポートとライセンスでどう対応するかは、サーバ仮想化市場の行方を根本的に左右する問題だ。同社が2008年9月19日に発表した、仮想化環境に対応するサーバ・アプリケーションについての新たなライセンス・ポリシーは、サーバ仮想化の普及に直結する動きの1つとして期待される。
マイクロソフト サーバープラットフォームビジネス本部 コア インフラストラクチャ製品部 マネージャ 藤本浩司氏 |
アプリケーションベンダにとっては、(Hyper-Vが入ってきても)Windows Server 2008の上で動くアプリケーションをつくってくれれば、いままでと同じようにWindowsでサポートされるということが重要だ。特に日本では、(OSも含めて)セットでパッケージをつくっているところが多い。これを分けてしまい、ハイパーバイザのうえにWindows Server 2008を入れてやるということになると、全部組み上げ直して、これをテストして、次にこれを(組み合わせて)テストして、これしか動作保証をしないということになる。すると、特に小規模ユーザー向けにパッケージを売っている人たちのビジネスがやりにくくなる。
ISVやSI業者からは、まず仮想化上で動くアプリケーションやライセンス(の環境)を整えてほしいという要望を受けている。例えば、ある経理パッケージのライセンス条項には、1台のサーバ機に1つ(しか動かせない)としか書かれていない。ではこれを仮想マシンの上で動かしたらどうなるか、バックアップとしての(仮想マシン)イメージはどうなるか、世代管理はどうなるかといった問題がある。いまは普及期であるので、仮想化環境上で動くアプリケーションやライセンスについて、個々の会社(仮想化ベンダ)で考えるのではなく、ヴイエムウェアやシトリックスと一緒になって、仮想化が(当たり前のように)動くように広げていく必要がある。
(大きな)会社に仮想化が入ったといわれているが、いま進んでいるのはUNIXを使っていたような高いハードウェアで、それなりの管理ソフトでしかサポートしないというようなビジネスモデルだ。その下にはもっと大きなマーケットがある。このマーケットをちゃんとサポートすることで、ISVやSIerが乗ってくるとわれわれは思っている。大きなベンダだけで仮想化のビジネスを広げていけるとは思っていない。もっと下にある(より小規模なユーザー企業を相手にビジネスをしている)われわれのエコシステムの人たちと一緒にやっていきたい。
お客様が、一番気にするのはサポートとライセンスのモデルだ。あとはデバイスドライバや動作保証の部分で、こちらについては1つの答えとして、デバイスドライバはWindows Serverのものを使えるようにした。これでベースのところは普及していくだろう。ユーザビリティや管理性についても、Windows Serverと合わせることで、できるだけ普及できるようにした。
■ アプリケーションベンダとどう協力していくか
今後問題になっていくのは仮想化の上で動くアプリケーションやSI業者だ。こういう人たちと(うまく)やっていく作業がこれから必要になる。マイクロソフトだけで、仮想化というメッセージはあまり出したくない。Windows Server 2008のなかの仮想化ではあるが、皆さんと一緒にやっていきたいと考えている。SI業者から、ハイエンドでこういうことをやりましょうとよく言われる。ハードウェア寄りの人たちはそれでもいいが、落とし込んでいくと、ボリュームが大きくなったときには、サポートなど多数の細かい問題がある。われわれとしては、いかにこういう問題を解決するかに注力している。ISVに対して、仮想化上でアプリケーションを動かす際に、仮想マシンのバックアップや世代管理を含めてテストし、ライセンス証書に含めないと、お客様が買えないですよと伝えている。このモデルは、Windows Server上でアプリケーションを動かすかぎりは(どの仮想化ソフトウェアでも)一緒なので、ヴイエムウェアだからどうこうということも考えていない。
マイクロソフトは、さまざまな仮想化ソフトウェア上でのWindows Serverの利用について、仮想化ソフトウェアを認定するプログラム、「Windows Server Virtualization Validation Program」(SVVP)を、2008年6月に発表した。SVVP認定済みの仮想化ソフトウェア上でWindows Serverを稼働するユーザーは、通常のWindows Serverのテクニカルサポートの枠内でマイクロソフトからサポートを受けられる。
最近発表したが、(仮想化ソフトウェア上で)Windows Serverを動かす際の動作保証をするための認定モデルもつくっている。シトリックスなどもこれに参加すると思う。いまはあくまで普及期なので、ISVがマイクロソフトだけをサポートし、ほかをサポートできないようなモデルを作る気はない。来年の春など、もっと普及してきたときに、コンペティティブな話にもっていきたい。
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Index | |
3つの仮想化ソリューションの近未来 | |
Page1 ヴイエムウェア:デスクトップとクラウドは新たなフロンティア |
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Page2 マイクロソフト:サポートやライセンスの整備が先決課題 |
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Page3 シトリックス:マイクロソフトとの関係を生かす |
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