サーバ仮想化バトルロイヤル(3)
3つの仮想化ソリューションの近未来
三木 泉
@IT編集部
2008/8/20
シトリックス:マイクロソフトとの関係を生かす
以下は、第1回、第2回に引き続き、元XenSourceのCTOで、現在は米シトリックス・システムズ・バーチャライゼーション&マネジメント部門のCTOを務めるサイモン・クロスビー(Simon Crosby)氏へのインタビューからお届けする。インタビュー時期は2008年5月下旬だ。
シトリックスは、いわゆる「シンクライアント・ソリューション」で伸びてきた企業だ。「XenApp」(旧製品名「Citrix Presentation Server」)で、ターミナル・サービスとアプリケーション・ストリーミングの機能を提供してきたが、XenSourceの買収によって、デスクトップ仮想化についても、すべての要素を自社ソリューションとして提供できるようになった。XenServerは、米シトリックスが2008年5月に発表したデスクトップ仮想化ソリューション「XenDesktop」に組み込まれている。このことは、近未来におけるXenServerの用途として、デスクトップ仮想化が最重要であることも意味している。
米シトリックス・システムズ バーチャライゼーション&マネジメント部門 CTO サイモン・クロスビー氏 |
業界では一般的に理解されていないが、シトリックスはマイクロソフトとの関係で、ユニークなビジネスモデルを築いている。マイクロソフトはシトリックスから年間数億ドルの売り上げを手にしている(Terminal Servicesのライセンス料の意)。われわれはマイクロソフトのいいパートナーだ。このパートナーシップを裏切ることはしない。時には彼らが違和感を持つようなことをするかもしれないが、それはわれわれの仕事が(世界を)広げることにあるからだ。
絶対やるべきでないのは、Windowsの一部、Linuxの一部を売りながら、ほかとは違うと言い張ることだ。なぜなら、そこに顧客にとっての価値はないからだ。この業界は前進し続ける。われわれも前進し、革新をもたらす。顧客にとっての価値を提供する。われわれは、顧客が価値を感じられるような形でWindowsプラットフォームを拡張していく。そしてマイクロソフトと協力していく。
マイクロソフトは、われわれが彼らの嫌がることはしないということを理解してくれている。シトリックスはこれを前提として自社のビジネスを進めている。
XenDesktopの例でいえば、マイクロソフトのフィールド(セールス)はXenDesktopを推奨(preferred)仮想デスクトップ・ソリューションとして、顧客に勧めてくれている。これがシトリックスにとってどれほど意味を持つことか。マイクロソフトのフィールド(セールス)全体が、われわれの製品を推薦してくれているわけだ。
(マイクロソフトにとって、XenDesktopを推薦することのメリットについては)マイクロソフトは顧客をVECD(Windows Vista Enterprise Centralized Desktops)、つまりサブスクリプション・モデルに移行させるという、戦略的なインセンティブを持っている。
VECDとは、マイクロソフトが2007年4月に発表したWindows Vista Enterprise Editionライセンスの新たな選択肢。サーバで仮想マシンとしてWindows Vistaを動作させる、仮想デスクトップ形式での利用を対象としている。クライアント端末がPCか、新クライアント端末かによって分かれるが、いずれも年間利用料でライセンス料を請求する。サーバ上で無制限にWindows Vista Enerpriseを実行することができ、各端末は最大4つのサーバ上のWindowsインスタンスに同時アクセスが許される。
企業データセンターにおいてWindowsを仮想マシンとして稼働する場合、顧客はVECDに移行することを要求される。このことはマイクロソフトにとって戦略的に重要だ。XenDesktopは、これを前進させることができる。われわれはさらに、マイクロソフトと協業し、マイクロソフトのエコシステムと親和性の高い製品を開発して、Windowsプラットフォームを拡張できるようにしていく。XenAppがTerminal Servicesを拡張するのとちょうど同じように。
企業が購入済みのPCのほとんどは、(非力なため)Vistaを動かすことができない。(VECD)は、Vistaを仮想マシンとして動かすことによって、導入済みのPCでも使えるようにするという点で、Vistaの普及を助ける素晴らしい方法だ。
時々、両社の関係には変なことが起こる。XenAppはアプリケーション・ストリーミング機能を組み込んでいるが、彼らもMicrosoft Application Virtualizationを持っている。だからといってこれが両社にとって重大な競合上の問題に発展するわけではない。われわれは無料(でXenAppに組み込んでいる)だし、彼らは7ドルで売っている。これは誰も気にするようなことではない。Windowsプラットフォームの一部になってしまえば、どうでもよいことになる。
われわれはマイクロソフトのパートナーとしてWindowsの世界を尊重する行動を行い、その機能をさまざまなやり方で拡張する。同時に、マイクロソフトにとっての競合企業と闘う。仮想化に関していえば、XenSource時代にわれわれは、毎日ヴイエムウェアと闘ってきた。また、マイクロソフトとの緊密なパートナーとして、Hyper-Vを助けるべく、(Hyper-V上でLinuxを動かすための)コードを提供した。もし、仮想化でマイクロソフトと競合しようとしていたなら、Linuxが彼らのプラットフォームで動くような仕組みを提供しなかっただろう。
彼らと競合するつもりはない。(ハイパーバイザは)高速で、無料で、互換性があり、普遍的なものであり、単なる機能であって、そこにビジネスモデルはないからだ。
■ 管理ツールベンダにはならない
Hyper-Vを(システム管理ベンダの提供するような管理ツールで)管理するつもりもない。われわれは、自社の製品以外を管理するほど信頼されるとは思っていない。エンジンと自動車のたとえに戻って言えば、基本的なハイパーバイザである「Hyper-V Server」に関しては、マイクロソフトに対して、彼らが自動車をつくるのを助けるために、われわれが提供できる機能はある。この自動車をより速く走らせたり、より良いタイヤを与えたりすることは可能だ。
すでにXenServerでは、仮想マシンを動的にプロビジョニングすることができるが、Hyper-Vを動的にプロビジョニングすることも可能だ。Hyper-Vの機能を拡張することは容易にできる。
こうしたことはマイクロソフトの「SystemCenter Virtual Machine Manager」(VMM)とは無関係だ。VMMは仮想化のための管理ツールだ。一方、われわれのXenCenterはちょっとしたGUIにすぎず、MMCスナップインとして利用できる。われわれのコンソールを使いたくなければ、捨ててもらってもかまわない。コンソールにステートは存在しないからだ。すべてのステートは(仮想化の)リソースプールやクラスタ環境に存在する。どんなものでもわれわれを管理できる。HPはProLiantサーバでわれわれの(仮想化)製品を提供しているが、管理ツールとしては「HP VMM」を搭載していて、マイクロソフト、ヴイエムウェア、そしてわれわれを管理できている。HPの顧客にとってはそれでいいはずだ。そうすれば、われわれが(管理を)しなくていい。
われわれは、HPサーバを活躍させる仕事ができる。HPサーバが自動的にリソースプールを構成するようにできるし、クラスタにして仮想マシンによる可用性の向上も図れる。しかし、われわれはデータセンターの管理ツールになろうとはしていない。われわれはシステム管理ベンダではない。われわれはデリバリ(機能提供)に特化していて、これを(他社の)全体的な管理アーキテクチャから管理できるようにしていく。(例えば)「Workflow Studio」を通じ、われわれをSystemCenterに組み込むことができる。Workflow Studioでは、あらゆるシステム管理ベンダのツールから、われわれのすべての製品を統合的に制御できるようになる。
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Index | |
3つの仮想化ソリューションの近未来 | |
Page1 ヴイエムウェア:デスクトップとクラウドは新たなフロンティア |
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Page2 マイクロソフト:サポートやライセンスの整備が先決課題 |
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Page3 シトリックス:マイクロソフトとの関係を生かす |
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