Flash Player 11/AIR 3は10月4日、正式リリース
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米アドビシステムズ(以下、アドビ)が毎年恒例で開催しているユーザーカンファレンス「Adobe MAX」では、世界中から集まった開発者やデザイナ、ビジネスユーザーに向けて、最新の技術や新製品、業界の動向、アドビの戦略などが発表される。今年のMAXは、米カリフォルニア州にあるロサンゼルスコンベンションセンターにて10月3〜5日に行われた。
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さまざまな発表やプレゼンテーションが行われる中で、中心的な話題の1つとなったのがFlashランタイムの最新版である「Flash Player 11」「Adobe AIR 3」だ。両製品ともに早い段階からプレビュー版が公開されていたが、正式なリリースはMAX会期中の10月4日に行われた。
本稿では、アドビのエバンジェリストChristian Cantrell氏による技術セッションで紹介されたAdobe AIR(以下、AIR)の新機能の数々を、Flashプラットフォームに関するアドビの戦略と重ね合わせながら、テーマごとにまとめて紹介したい。
- Flash Player 11/AIR 3の目玉機能の1つ「Stage3D」
- Stage3Dを2Dに適用する「Starling Framework」
- ビデオパイプライン処理にGPUを利用する「StageVideo」
- H.264ビデオエンコーディングのサポート
- JPEG-XRのサポート
- その他マルチメディアに関する新機能
- AIR 3の目玉機能の1つ、ネイティブ拡張
- ネイティブのテキスト入力フィールド
- 前面カメラのサポート
- モバイルデバイスのスピーカー利用
- モバイル版Encrypted Local Storage(ELS)
- iPad用カメラロールの改善
- AIR実行環境同梱
- Android Market Lisencingの統合
アドビのエバンジェリスト Christian Cantrell氏 |
2D/3Dグラフィック描画性能の向上
アドビのプロダクトマーケティングディレクターAnup Murarka氏によれば、Flashプラットフォームの長期的なビジョンでは、そのフォーカスを「ビデオ」「ゲーム」「データ中心アプリ」の3点に当てているという。
特にゲームに関しては、近年急成長を遂げている分野であり、Flashの今後を担う重要な市場といえる。Flash Player 11/AIR 3でも、ゲーム開発に不可欠となるさまざまな要素が追加されているが、その中心が強化されたグラフィック機能だ。
アドビのプロダクトマーケティングディレクターAnup Murarka氏「HTML5関連技術が実現できることよりも常に一歩先をFlash技術は提供し続ける」 |
■ 【1】Flash Player 11/AIR 3の目玉機能の1つ「Stage3D」
Flash Player 11およびAIR 3の新機能のうち、目玉の1つとなっているのが新しいグラフィックレンダリングアーキテクチャ「Stage3D」(開発コード「Molehill」)である。開発者は、Stage3Dで提供される低レベルのAPIによって、GPUによる高速なグラフィック描画を利用できるようになる。「従来の1000倍のポリゴンが処理できる」とのことで、グラフィック表現の革新的な向上が期待できる。MAXの基調講演でも、下記のように3Dグラフィックのデモが行われた。
Stage3D自体は低レベルなAPIしか提供しないものの、すでにさまざまな3DフレームワークがStage3Dをサポートしている。Stage3Dをサポートしたフレームワークには、Alternative3DやAway3D、Flare3D、Sophie3D、Unity、Yogurt3D、M2D、Unreal Engineなどがある。
Stage3DはFlash Player 11とAIR 3の両方で利用できるものの、現時点ではデスクトップ版とテレビ版にしか対応しておらず、モバイル版には搭載されていない。アドビでランタイム製品のディレクターを務めるMark Hopper氏によれば、モバイル版は現在プライベートベータの段階に入っており、早ければ2012年の前半にはリリースできる見込みとのことである。
アドビでランタイム製品のディレクターを務めるMark Hopper氏 |
■ 【2】Stage3Dを2Dに適用する「Starling Framework」
Flash Player 11/AIR 3の機能というわけではないが、Stage3Dに関連して紹介しておきたいのがActionScript用の2Dグラフィックスフレームワーク「Starling Framework」だ。
Stage3Dは、その名前から3D専用の機能だと誤解されがちだが、2Dグラフィックスのレンダリングでも活用できる。Starlingを利用すれば、Stage3Dの複雑なAPIを触ることなく、使い慣れた表示リスト風のAPIで高速なレンダリングが実現可能になる。
MAXの基調講演では、著名なゲーム「Angry Birds」のFlash Player 11版のデモとして、倒れたパーツが爆発し、粉々になって舞い上がるという演出効果が紹介された。このようなグラフィック効果はStage3DとStarlingを活用することで実現しているとのことだ。
強化されたマルチメディア機能
動画再生を含むマルチメディア機能の強化も、Flashランタイムで重点を置かれているポイントの1つである。マルチメディア機能が向上することによって、ユーザーに優れたコンテンツを提供できると同時に、商用サービスでのFlash利用の優位性が高まることになる。
■ 【3】ビデオパイプライン処理にGPUを利用する「StageVideo」
StageVideoはビデオパイプライン処理にGPUのハードウェアアクセラレーションを利用することによって、CPUやメモリの利用効率を向上させ、滑らかなビデオ再生を実現する技術である。すでにFlash Player 10.2やAIR for TV 2.5には搭載されていたが、モバイル版のAIR 3でも利用できるようになった。デスクトップ版については今後のリリースで対応予定とのことである。
StageVideoの基本的な考え方は、GPUで行える処理はGPUに任せるということ。そのためにStageVideoのビデオオブジェクトは表示リストとは別の独立したステージに描画される。描画は「ビデオデータのデコード」「色やサイズ加工および他の表示データとの合成」という2つのステップに分けて行われる。
StageVideoによる描画プロセスの概念図 |
そして後者はGPUで、前者はGPUが対応している場合はGPU、対応していない場合はCPUで処理される。このプロセスによって、従来CPUで行っていた仕事の大部分にGPUを活用できるようになるというわけだ。
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