HTML5の先を行くFlash Player 11/Adobe AIR 3の新機能14選

HTML5の先を行く
Flash Player 11/Adobe AIR 3の新機能14選


Adobe MAX 2011まとめレポート(1)


有限会社オングス
杉山貴章
2011/10/26

Flash Player 11/AIR 3は10月4日、正式リリース

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 米アドビシステムズ(以下、アドビ)が毎年恒例で開催しているユーザーカンファレンス「Adobe MAX」では、世界中から集まった開発者やデザイナ、ビジネスユーザーに向けて、最新の技術や新製品、業界の動向、アドビの戦略などが発表される。今年のMAXは、米カリフォルニア州にあるロサンゼルスコンベンションセンターにて10月3〜5日に行われた。

 さまざまな発表やプレゼンテーションが行われる中で、中心的な話題の1つとなったのがFlashランタイムの最新版である「Flash Player 11「Adobe AIR 3」だ。両製品ともに早い段階からプレビュー版が公開されていたが、正式なリリースはMAX会期中の10月4日に行われた。

 本稿では、アドビのエバンジェリストChristian Cantrell氏による技術セッションで紹介されたAdobe AIR(以下、AIR)の新機能の数々を、Flashプラットフォームに関するアドビの戦略と重ね合わせながら、テーマごとにまとめて紹介したい。

  1. Flash Player 11/AIR 3の目玉機能の1つ「Stage3D」
  2. Stage3Dを2Dに適用する「Starling Framework」
  3. ビデオパイプライン処理にGPUを利用する「StageVideo」
  4. H.264ビデオエンコーディングのサポート
  5. JPEG-XRのサポート
  6. その他マルチメディアに関する新機能
  7. AIR 3の目玉機能の1つ、ネイティブ拡張
  8. ネイティブのテキスト入力フィールド
  9. 前面カメラのサポート
  10. モバイルデバイスのスピーカー利用
  11. モバイル版Encrypted Local Storage(ELS)
  12. iPad用カメラロールの改善
  13. AIR実行環境同梱
  14. Android Market Lisencingの統合
アドビのエバンジェリスト Christian Cantrell氏

2D/3Dグラフィック描画性能の向上

 アドビのプロダクトマーケティングディレクターAnup Murarka氏によれば、Flashプラットフォームの長期的なビジョンでは、そのフォーカスを「ビデオ」「ゲーム」「データ中心アプリ」の3点に当てているという。

 特にゲームに関しては、近年急成長を遂げている分野であり、Flashの今後を担う重要な市場といえる。Flash Player 11/AIR 3でも、ゲーム開発に不可欠となるさまざまな要素が追加されているが、その中心が強化されたグラフィック機能だ。

アドビのプロダクトマーケティングディレクターAnup Murarka氏「HTML5関連技術が実現できることよりも常に一歩先をFlash技術は提供し続ける」

【1】Flash Player 11/AIR 3の目玉機能の1つ「Stage3D」

 Flash Player 11およびAIR 3の新機能のうち、目玉の1つとなっているのが新しいグラフィックレンダリングアーキテクチャ「Stage3D」(開発コード「Molehill」)である。開発者は、Stage3Dで提供される低レベルのAPIによって、GPUによる高速なグラフィック描画を利用できるようになる。「従来の1000倍のポリゴンが処理できる」とのことで、グラフィック表現の革新的な向上が期待できる。MAXの基調講演でも、下記のように3Dグラフィックのデモが行われた。

 Stage3D自体は低レベルなAPIしか提供しないものの、すでにさまざまな3DフレームワークがStage3Dをサポートしている。Stage3Dをサポートしたフレームワークには、Alternative3DやAway3D、Flare3D、Sophie3D、Unity、Yogurt3D、M2D、Unreal Engineなどがある。

 Stage3DはFlash Player 11とAIR 3の両方で利用できるものの、現時点ではデスクトップ版とテレビ版にしか対応しておらず、モバイル版には搭載されていない。アドビでランタイム製品のディレクターを務めるMark Hopper氏によれば、モバイル版は現在プライベートベータの段階に入っており、早ければ2012年の前半にはリリースできる見込みとのことである。

アドビでランタイム製品のディレクターを務めるMark Hopper氏

【2】Stage3Dを2Dに適用する「Starling Framework」

 Flash Player 11/AIR 3の機能というわけではないが、Stage3Dに関連して紹介しておきたいのがActionScript用の2Dグラフィックスフレームワーク「Starling Framework」だ。

 Stage3Dは、その名前から3D専用の機能だと誤解されがちだが、2Dグラフィックスのレンダリングでも活用できる。Starlingを利用すれば、Stage3Dの複雑なAPIを触ることなく、使い慣れた表示リスト風のAPIで高速なレンダリングが実現可能になる。

 MAXの基調講演では、著名なゲーム「Angry Birds」のFlash Player 11版のデモとして、倒れたパーツが爆発し、粉々になって舞い上がるという演出効果が紹介された。このようなグラフィック効果はStage3DとStarlingを活用することで実現しているとのことだ。


強化されたマルチメディア機能

 動画再生を含むマルチメディア機能の強化も、Flashランタイムで重点を置かれているポイントの1つである。マルチメディア機能が向上することによって、ユーザーに優れたコンテンツを提供できると同時に、商用サービスでのFlash利用の優位性が高まることになる。

【3】ビデオパイプライン処理にGPUを利用する「StageVideo」

 StageVideoはビデオパイプライン処理にGPUのハードウェアアクセラレーションを利用することによって、CPUやメモリの利用効率を向上させ、滑らかなビデオ再生を実現する技術である。すでにFlash Player 10.2やAIR for TV 2.5には搭載されていたが、モバイル版のAIR 3でも利用できるようになった。デスクトップ版については今後のリリースで対応予定とのことである。

 StageVideoの基本的な考え方は、GPUで行える処理はGPUに任せるということ。そのためにStageVideoのビデオオブジェクトは表示リストとは別の独立したステージに描画される。描画は「ビデオデータのデコード」「色やサイズ加工および他の表示データとの合成」という2つのステップに分けて行われる。

StageVideoによる描画プロセスの概念図

 そして後者はGPUで、前者はGPUが対応している場合はGPU、対応していない場合はCPUで処理される。このプロセスによって、従来CPUで行っていた仕事の大部分にGPUを活用できるようになるというわけだ。

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HTML5の先を行くFlash Player 11/Adobe AIR 3の新機能14選
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Flash Player 11/AIR 3は10月4日、正式リリース
2D/3Dグラフィック描画性能の向上
強化されたマルチメディア機能
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デバイスネイティブの性能を引き出す
アプリ配布に関するサポート強化
Flex 4.6やFlash Builder 4.6はどうなる?


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