解説

NASは新時代ファイル・サーバか?

2. IAサーバがベースになるNASのハードウェア

デジタルアドバンテージ
2004/03/16

解説タイトル

PowerVault 775Nのハードウェアを見てみよう

 では、実際にWindows Storage Server 2003を採用したNAS「PowerVault 775N」を見ていこう。PowerVault 775Nは、Intel Xeonのデュアルプロセッサ構成に対応しており、SCSIディスクのRAID 1(ミラーリング)やRAID 5などのディスク構成が選択可能だ。2Uラックマウント型を採用しており、ラック搭載キットも付属する。デルのNAS製品のラインアップとしてはハイエンド・モデルとなるが、NAS市場全体から見るとミッドレンジ・クラスとなる。

デルのWindows Storage Server 2003搭載NAS「PowerVault 775N」
外見やハードウェア構成からデルのミッドレンジIAサーバ「PowerEdge 2650」がベースになっているものと思われる。利用環境にもよるが、大企業の部署や中小企業全体のファイル・サーバとして利用可能な性能を持つ。

 さて、PowerVault 775Nを見ると、外観・システム構成がPowerEdge 2650とほぼ同じであることに気付く。ハードウェアのベースは、PowerEdge 2650であると思われる。PowerVault 775Nの価格は、ベーシック構成のWindows Storage Server 2003, Enterprise Editionで78万1000円である。PowerEdge 2650でほぼ同じシステム構成にし、Windows Server 2003, Enterprise Edition(25CAL付き)にすると74万2000円となる。価格的には、むしろPowerVault 775Nの方が高くなっている。Windows Storage Server 2003, Enterprise Editionは、機能的に制限があることを考えると、PowerVault 775Nよりも、PowerEdge 2650をファイル・サーバにした方が得なように感じる。だが、Windows Storage Server 2003では、前述のようにCALが不要であるため、PowerVault 775Nのメイン・ターゲットとなるミッドレンジ・クラスの利用人数を考慮すると、トータルな導入コストは安くなる可能性が高い。

 以下、写真をベースにPowerVault 775Nのハードウェア構成を見ていこう。

PowerVault 775Nの内部
Intel Xeonのデュアルプロセッサ構成に対応する。プロセッサは、Intel Xeon-2.4GHzもしくは2.8GHzから選択可能である。写真は、デュアルプロセッサ構成。
 
PowerVault 775Nの正面
フロントパネルを外すと、ホットスワップ可能なハードディスク・ベイが5つと、薄型のフロッピードライブとCD-ROMドライブが現れる。正面にもマウス/キーボード兼用のPS/2コネクタ、USBポート、VGAコネクタが装備されている。
 
搭載するグラフィックス・チップ
PowerVault 775Nには、グラフィックス機能としてATI TechnologiesのRage XLを搭載する。ネットワーク経由によるリモート管理はもちろんのこと、PowerVault 775Nにディスプレイを接続して、一般的なサーバと同様、直接管理することも可能だ。
 
搭載するSCSIコントローラ
PowerVault 775Nは、Ultra160 SCSIをサポートするAdaptec製SCSIコントローラ「AIC-7899W」を標準搭載する。また標準でハードウェアRAIDが装備されている。
 
PowerVault 775Nの電源ユニット部
PowerVault 775Nは、標準で電源が二重化されており、ホットスワップによる交換が可能だ。電源ユニットのレバーを引き上げることで、簡単に取り外すことができる。
 
PowerVault 775Nのチップセット
PowerVault 775Nは、チップセットとしてServerWorks製「ServerSet GC-LE」を採用する。Intel Xeon向けのサーバ・チップセットとしては、標準的なもので、多くのサーバが採用している。

 Windows Storage Server 2003は、Webベースのユーティリティでほぼすべての設定が可能だ。IPアドレスやドメイン名などのネットワーク設定を行い、共有ディスクを設定すれば、NASとして利用可能となる。ワークグループで利用する場合は、ローカル・ユーザーやローカル・グループの設定が必要になるが、ウィザード形式で追加可能なので、ある程度Windowsの知識があればそれほど戸惑うことはない。以下、Windows Storage Server 2003の設定画面を見ていこう。

言語の設定画面
Windows Storage Server 2003は、Multi User Interface版のため英語のほか、日本語、韓国語、中国語など8言語をサポートする。言語は、付属のWebベースのユーティリティにより簡単に切り替え可能である。ただし、切り替えには再起動が必要になるため注意が必要。
 
ネットワーク・インターフェイスの設定画面
静的にIPアドレスを設定するような場合は、ここで各ネットワーク・インターフェイスに対してIPアドレスを入力する。
 
ネットワークの設定画面
ここで参加するドメイン名を入力し、ドメインのアクセス許可権を持つユーザーのアカウントを設定するだけで、PowerVault 775Nをドメインに追加することが可能である。
 
サーバのローカル・ユーザー・グループの設定画面
ローカル・ユーザー/グループの管理もユーティリティで簡単に行える。
 
シャドウ・コピーの設定画面
Windows Storage Server 2003の目玉機能であるシャドウ・コピーの設定はこの画面で行う。各ボリュームに対して、シャドウ・コピーの有効/無効の設定が可能だ。

Windows Storage Server 2003のメリット/デメリット

 Windows Storage Server 2003搭載NASのメリットは、NAS機能に特化したことにより、設定が簡単に行えることにある。用途がファイル・サーバに限定されるのであれば、Windows Storage Server 2003搭載NASの管理が容易である点は魅力的だ。NASは、専任の管理者を置けないような中小企業や大企業の支店などのファイル・サーバとして威力を発揮するだろう。

 一方、Windows Storage Server 2003では、NASに特化しているためにWindows用のすべてのアプリケーションが利用できるわけではない点に注意が必要になる。アプリケーションによっては、機能的に動作しなかったり、動作してもサポートされなかったりするなど、Windows Server 2003のような汎用性はない。Windowsネットワークの知識がある程度あるならば、Windows Server 2003の方が汎用性が高い。

 機能を限定することで、本来ならばWindows Storage Server 2003搭載NASは、同等のWindows Server 2003搭載IAサーバに比べて、価格的に安価にできるはずだ。しかし、現状ではほぼ同等に留まっている。もちろん、NASの出荷台数が、IAサーバに比べて少ない、ということもあるだろう。だが、それはNASが魅力的な価格、機能を持たない(単なるWindows Server 2003のサブセットになっている)から、という面もある。Windows Storage Server 2003搭載NASを普及させるためには、Windows Storage Server 2003のストレージ管理機能をより充実させる必要があるだろう。また、NASに特化して、大幅に機能を削ることで、IAサーバに対する価格的な魅力を向上させることも必要だ。記事の終わり

 

 INDEX
  [解説] NASは新時代ファイル・サーバか?
    1.Windows Storage Server 2003の機能拡張ポイント
  2.IAサーバがベースになるNASのハードウェア
 
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