解説Virtual Serverで仮想サーバ構築体験1.Virtual Serverを体験してみようデジタルアドバンテージ 小林 章彦2006/11/18 |
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仮想化技術の進歩やプロセッサ性能の向上により、これまでメインフレームやRISC/UNIXサーバなどのハイエンド・サーバ向けの技術であった「仮想化技術」がIAサーバでも十分実用レベルで利用できるものとなってきた。特に、プロセッサのデュアルコア化、クワッドコア化によって、1台のサーバに搭載できるプロセッサ・コアの数は増えている。こうしたマルチコア化によって、エントリ・クラスのIAサーバの性能が、2〜3年前のミッドレンジ・クラスやハイエンド・クラスのIAサーバを追い越すまでになってきた。一方のミッドレンジ・クラス、ハイエンド・クラスにおいても、その性能は飛躍的に向上している。
こうして向上した性能を生かす用途として、複数のサーバを1つのサーバに統合する「サーバ統合」の動きが出てきた。サーバ統合を行うと、複数のサーバを管理する手間が軽減される。また負荷にばらつきがあるサーバ同士をうまくまとめて、負荷を平準化できれば、サーバの利用効率を向上させることも可能だ。
これまでサーバ統合を行うには、それぞれのサーバ上で動作していたアプリケーション環境を、移転先のサーバ上のOSで動くように変更する必要があった。しかし異なるOSに移行するなど、大幅な環境変化が伴う場合には、全体工数や互換性の問題から、移行があまり現実的とはいえないことも多い。また、別々のサーバで動作していたアプリケーションを1つのサーバ上で動かした場合、システムのトラブル時に双方のアプリケーションが影響を受けてしまうという、耐障害性の低下の問題もあった。
こうした問題は、仮想化技術を用いることで解決可能である。統合先のサーバ上に仮想マシンを構築し、そこに以前のサーバ環境をそのまま移動させることで、複数のサーバを運用したのとほぼ同じ状態を1つのサーバで実現できるからだ。また、最新のサーバでは動作が保証されなくなってしまったWindows NTなどの古いOS環境も、仮想マシン上で稼働させることも可能になる(仮想化ソフトウェアが古いOSをサポートしている必要はあるが)。
Windows Server上で仮想マシンを実現するための仮想化ソフトウェアとしては、マイクロソフトのVirtual Server 2005 R2(以下、Virtual Server)やVMwareのVMware Serverなどがある。この2製品は、どちらも現在は無償で提供されており、Windows ServerをホストOSとして、複数のゲストOS環境の構築が可能である。基本的な概念は共通しているが、仮想化ソフトウェアを導入するための物理サーバの条件や、サポートするホストOS/ゲストOS、管理手法などでは両者に違いがある。仮想化ソフトウェアは無料だといっても、いったん実運用向けの仮想環境を構築した後でやり直しとなると、構築にかかった作業が無駄になるうえ、必要となるメモリ容量がサーバが実装可能な容量を超えてしたり、プロセッサの性能が足りなかったりといったことから、最悪の場合は購入した物理サーバの買い換えを迫られることにもなりかねないので注意が必要だ。
残念ながら仮想化ソフトウェアによるサーバ統合の動きは、始まったばかりであり、その手法における定番や定石といったものがまだない。そのため失敗を防ぐには、管理者自らがある程度、仮想化ソフトウェアの機能や管理手法を把握しておく必要がある。まず、自ら仮想化ソフトウェアを体験してみるのが手っ取り早い方法だろう。幸いなことに、前述のようにVirtual ServerとVMware Serverは無償で提供されており、ゲストOSのライセンスが別途必要になるとはいえ、手軽に試用可能だ(Windows Server 2003 R2 Enterprise Editionの場合、仮想サーバ上に最大4つのWindows Server 2003 R2 Enterprise Edition環境を追加ライセンスなしに構築可能)。
またVirtual Serverならば、実運用を目的としない用途に限定されるものの、ホストOSとしてWindows XP Professional SP2の利用ができる。Virtual Serverによる仮想マシンの構築方法や管理方法などを知るといった目的ならば、手元のWindows XP Professional SP2で試してみるのもいい。今回は、仮想化ソフトウェアを知るという意味からWindows XP Professional SP2上にVirtual Serverをインストールし、その使用方法ならびに注意点などについてまとめる。Windows Server上にインストールした場合は、接続先の(IISの)ポート番号やパスが一部異なるが、基本的な操作はすべて同じである。
Virtual Serverで仮想環境を構築してみる
ここからは、Virtual Serverを利用した仮想マシンの構築とゲストOSのインストール方法、それらの注意点について紹介する。Virtual Serverがサポートする環境は、下表のとおりである。
ホストOS |
Windows XP Professional SP2 |
Windows XP Professional x64 Edition |
Windows Server 2003 Standard Edition |
Windows Server 2003 Standard x64 Edition |
Windows Server 2003 Enterprise Edition |
Windows Server 2003 Enterprise x64 Edition |
Windows Server 2003 Datacenter Edition |
Windows Small Business Server 2003 Standard Edition |
Windows Small Business Server 2003 Premium Edition |
ゲストOS |
Windows NT Server 4.0 SP6a |
Windows 2000 Server |
Windows 2000 Advanced Server |
Windows XP Professional SP2 |
Windows Server 2003 Standard Edition |
Windows Server 2003 Enterprise Edition |
Red Hat Linux |
SuSE Linux |
Virtual Server 2005 R2の対応OS |
プロセッサの動作クロック | 550MHz以上(1GHz以上を推奨) |
プロセッサ数 | 最大32プロセッサ(Enterprise Edition) |
対応プロセッサ | Celeron、Pentium III、Pentium 4、Intel Xeon、AMD Opteron、AMD Athlon、AMD Athlon 64、AMD Athlon X2、AMD Sempron、AMD Duron |
最小メモリ | 256Mbytes(ゲストOSごとに追加のメモリが必要) |
必要なハードディスクの空き領域 | 2Gbytes(ゲストOSごとに追加のディスク領域が必要) |
推奨ディスプレイ | Super VGA(800×600ドット)以上 |
Virtual Server 2005 R2の必要システム |
上記の要件を満たすコンピュータに対応ホストOSをインストールしておく。必要システムは、現行のクライアントPCでも条件を満たすような仕様なので、実験目的ならば手元のデスクトップPCを利用してもよいだろう。ただし、後述のようにメモリ容量が足りないと、ゲストOSが起動できないので注意したい。
まずVirtual Serverのセットアップ・ファイルをマイクロソフトのダウンロード・センター「Virtual Server 2005 R2 - Enterprise Edition」)からダウンロードする。ダウンロードするためのリンクが「注意事項」の「自己展開型の実行可能ファイル」の下にあるので間違えないようにしたい。ここで、ホストOSに合わせてx86版(32bit版)か、x64版(64bit版)を選択してダウンロードする。30Mbytesほどあるので、インターネット回線が細い場合、マイクロソフトの「Virtual Server 2005 R2 Enterprise Edition日本語版CD-ROMの配布サービス(送付手数料:1260円)」を利用するとよい。
Virtual Serverをインストールする前準備として、Internet Information Services(IIS)をインストールしておく必要がある。Virtual Serverでは、管理Webサイトを使用して仮想マシン(Virtual Server)を管理するため、IISの「World Wide Webサービス コンポーネント」を事前にインストールしておかなければならない。これにより、Internet Explorer(IE)とActiveXでゲストOSの管理を行えるようになる。ただしIISをインストールすると、Virtual Serverを管理するために必要な機能以外にもさまざまなサービスを外部に提供してしまうことになるので、不要なサービスは止めるなどのセキュリティ設定も同時に実行しておいた方がよい。
IISのインストールが完了したところで、仮想マシンを構築したいコンピュータ上で、ダウンロードしたVirtual Serverのセットアップ・ファイル(setup.exe)を実行する。ウィザードが起動するので、以下の手順で設定を行う。
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[セットアップの種類]が表示されるまでウィザードを進め、ここで[完全]を選択してから[次へ]ボタンをクリックする。
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[コンポーネントの構成]で、管理Webサイトのポート番号をデフォルトの「1024」から変更したい場合は、[Webサイトのポート]に使用するポート番号を入力する(Windows XP Professional SP2ではIISで使用しているポート番号に固定されており変更はできない)。
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Windows XP Professional SP2では、[WindowsファイアウォールでVirtual Serverの例外を有効にする]のチェックを確認して、[次へ]ボタンをクリックする。
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[管理Webサイトを常に承認されたユーザーとして実行するように構成する]か[管理Webサイトを常にローカル システム アカウントとして実行するように構成する]を選択する。通常は、デフォルトの[管理Webサイトを常に承認されたユーザーとして実行するように構成する]を選択しておけばよい(Windows XP Professional SP2ではこの設定はない)。
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[次へ]ボタン、[インストール]ボタンをクリックし、インストールを開始する。
以上で、Virtual Serverのインストールは完了する。IISが事前にインストールされていれば、非常に簡単にインストールできる。
INDEX | ||
[解説]Virtual Serverで仮想サーバ構築体験 | ||
1.Virtual Serverを体験してみよう | ||
2.仮想マシンを作成してゲストOSをインストールする | ||
「System Insiderの解説」 |
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