第9回 読者調査結果 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 |
情報システムの構築形態がクライアント/サーバ型から多階層型へと変化するにつれて、システム内に導入するサーバの数も多くなっている。そんな中で注目されているのが、1Uサイズのラックマウント型サーバやブレード・サーバといった「高密度サーバ」製品群だ。ではサーバ導入/管理の現場では、これら高密度サーバ製品をどのような観点から選択し、活用しているのだろうか? System Insiderフォーラムが実施した第9回読者調査から、その実態をレポートしよう。
高密度サーバの用途:フロントエンド層が中心
まず読者がかかわるシステムで、高密度サーバを現在どのような用途に使っているのか聞いてみた。その結果、最も多かったのは「フロントエンド層のWebサーバ」であった(グラフ1)。また、今後1年間のシステム構築/増強で、最も適用が進む用途においても、同様に「Webサーバ」がトップとなった。やはり並列処理のしやすさ/トランザクションに応じた柔軟な拡張性といった高密度サーバの特性は、フロントエンド・サーバに最適なものであるようだ。
ただしグラフ1を見ると、高密度サーバはすでに「中間層のアプリケーション・サーバ」や「バックエンド層のデータベース・サーバ」などの用途でも、一定の割合で使われていることが分かる。Oracle9i RACに代表されるように、最近ではスケール・アウト指向に対応したデータベースも登場してきており、こうしたデータベースを利用したシステム構築が注目されている。これまでは高密度サーバというと、密度を上げるために、消費電力(すなわち発熱量)が大きな高速のプロセッサが搭載できず、性能面で制限が多かった。しかし、最近ではIntel Xeonを搭載した1Uサーバが登場するなど、性能面においてもミッドレンジ・サーバに引けを取らないものが現れている。Oracle9i RACのようなデータベースの登場に加え、性能面の向上によって、高密度サーバの適用範囲は、今後ますます拡大していきそうだ。
グラフ1 高密度サーバの用途(N=208) |
高密度サーバの導入形態:当面は薄型ラックマウントが主流に
では上記用途に高密度サーバを適用する際、今後どのような形態のハードウェアが望まれるのだろうか? 読者の利用予定をたずねたところ、全体のおよそ半数が「薄型ラックマウント・サーバ」を挙げた(グラフ2)。「ブレード・サーバ」の利用予定率も3割を超えているが、読者からは、以下のような課題/疑問も聞かれた。
- ブレード・サーバの場合、ある程度まとまった用途がないと逆にコストがかかる。
- 同じブレードが継続的(数年間)に提供されるのか。エンクロージャを替えることなく、今後提供されるブレードを導入できるのか?
ブレード・サーバが普及するためには、まずこうしたユーザーの声にベンダがこたえる必要があるだろう。
グラフ2 今後利用予定の高密度サーバ形態(サーバ導入/管理者による複数回答 N=208) |
高密度サーバ選択時の重視点:コスト+耐障害性が決め手
次に、読者が高密度サーバ製品を選択する際に重視する点を聞いた結果、「RAID構成などの耐障害性」および「導入コスト」の2点が上位に挙げられた(グラフ3)。高密度サーバの用途には、拡張性/可用性が求められるシステムが多いだけに、機能/性能よりも、対障害性が重視されるのもうなずける。また上記2点に次いで「消費電力/発熱量が少ないこと」「複数サーバの導入設定や運用管理のしやすさ」のポイントが高いのも、設置面積当たりのサーバ集積度が高い高密度サーバならではといえそうだ。
グラフ3 高密度サーバ製品選択時の重視点(サーバ導入/管理者による5つまでの複数回答 N=208) |
高密度サーバ情報ニーズ:ハードウェア+ノウハウ情報に期待
今後も需要の高まりが予想される高密度サーバであるが、その導入/利用にあたって現在必要とされている情報とは、どのようなものだろうか? 3つまでの複数回答でたずねた結果、回答者の半数以上が「高密度サーバ製品の機能/性能評価」と同時に、「クラスタリングなどの構築ノウハウ」を選択している(グラフ4)。サーバ製品に関する情報といえば、「スペック+価格」に終始してしまうことが多いが、高密度サーバに関しては、それを利用するシステム構築自体が新しいプロセスであるだけに、ハードウェアに留まらないノウハウ情報が求められているようだ。
グラフ4 高密度サーバについて興味ある情報(サーバ導入/管理者による3つまでの複数回答 N=208) |
高密度サーバ・ベンダのマインド・シェア
最後に、高密度サーバ分野におけるベンダのマインド・シェア状況を見てみよう。読者に「高密度サーバ市場をリードしていると思われるベンダ」を1社だけ挙げてもらったところ、トップに立ったのは「サン・マイクロシステムズ」であった(グラフ5)。サン・マイクロシステムズが1位となったのは、インターネット普及時にプロバイダやデータセンターでの採用が多かった印象が影響しているものと思われる。また、サン・マイクロシステムズの次にはサーバ・ベンダとして成長が著しい「デルコンピュータ」が選ばれている。デルコンピュータは、薄型ラックマウント型サーバに加えて、独自のブレード・サーバを提供するなど、高密度サーバ分野においても積極的な姿勢を見せ始めている。高密度サーバ分野においても高い成長率を得られるかどうか、今後の動向に注目したい。
グラフ5 高密度サーバ・ベンダのマインド・シェア(サーバ導入/管理者 N=208) |
調査概要 | |
調査方法
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System InsiderフォーラムからリンクしたWebアンケート |
調査期間
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2003年3月10日〜4月10日 |
有効回答数
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291件(うちサーバ導入/管理に携わる208件を集計) |
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「System Insider 資料」 |
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