飛び出すFlash、知ってますか?
さくーしゃ2009/4/14
四角いマーカーをWebカメラの入力画像から探し出しCGを合成することで、その場にオブジェクトが存在するかのように見せるARToolKitというライブラリをFlashに移植しました。
Flasherリレーコラム1回目「Flashをやる人を増やし、Flasherをつないでいきたい」の道家さんからご紹介いただきました。大阪をベースに活動するさくーしゃです。リレーコラムの6つの質問にお答えます。
質問1「Flashのバックグラウンドは?」
いまでこそ、以下の写真のようなFlash版のAR(Augmented Reality:拡張現実)ツールを作れてしまっている僕ですが、ここに至るまでにやってきたことがらやFlashでの取り組みをご紹介します。
Flash版ARToolKitのならWeb上でもこんなことができます |
Flashと出合ったころの記憶があまりはっきりとしていないのですが、おそらくFlash 4、中村勇吾のMONO*craftsをリアルタイムに感動してた世代です。どちらかというとまだDirector(Shockwave)に勢いがあった時代です。
小学校で、文豪miniというワープロ専用機で音楽会のプログラムを作り、中学生2年生でFM-TOWNSで3D CGを作ってました。母親がピアノ教室をやってたので、家にたくさんあった楽譜を活用してMML(Music Macro Language)という簡単にコンピュータ上の楽譜となる言語を使って、MIDIデータを打ち込んだり、Towns GEARというDirector互換アプリで、図書館の本の蔵書管理システムっぽいものを作ってみたりとか、BASICでゲームを作ったりしていました。いまから思うとProcessingみたいなGenerative Artに近いようなことをしたり、当時のパソコン通信のチャットルームに入り浸ったりしていました。
高校で、OASYS Pocketというワープロで動く対戦型テトリスをC言語で書きました。Strata 3Dとか3D Studio MAXを使って3D CGアニメーションを作る傍ら、プライベートでWebサイトも作りました。Perlで掲示板システムとか日記システムとか組んだり、JavaScriptやDirectorを覚えたり、Lingoをガリガリと書いたりしていました。Flashに目覚めたのは、AID-DCCに所属してからです。
Flasherリレーコラム 気になるあの人への6つの質問 |
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2. 「Flashで得意なこと・したいこと」
得意なFlashは、プログラミングの比重が大きいもの。プログラミングから生まれるビジュアルっていうのは予測が不可能な点も結構あって、コードを書いていくうちに変化していくビジュアルを見てるのが面白いので好きです。この間Wonderflに投稿したForce Fieldも、最初っからこういうのを作ろうと思ってたわけではありません。あとはもう、新しい技術が好きなので、そういうのは取りあえず食い付いています。
いま一番興味を持っている人はFlight404のRobert Hodginです。技術レベルもビジュアルのセンス的にもレベルが高く、僕が理想とするテクノロジーとアートをうまく融合させるっていうのを実現させられる数少ない人物です。自分のブログで手の内をいろいろ明かしているオープンさもいいです。
3. 「Flashの気になること・次にやりたいこと」
「若い人ってFlashに興味を持つ瞬間って存在するの?」ということが気になります。僕らの世代が興味を持ち始めた時期というのは、インターネットそのものがまだそんなにメジャーではなく、なんか面白そうなことができそうな感じがして、Flash もそんな中、「すげー、動いてる! 面白い!」って感覚で飲み込まれてった感があるのですが、いまの20歳ぐらいの人たちってそういう感覚はおそらくないんだろうなとか思うと、じゃあFlashの次の世代はどうやって作っていったらいいんだろう、と不安になります。
大阪てら子という Flash 好きのための集会を毎月していますが、そんなにめっちゃ若い人は参加していません。こういうコミュニティって、学生レベルまで広げられたらいいですよね。
技術的に興味を持っているのは僕がJavaから移植したFLARToolKitです。ARToolKitがFlashでも動いたら面白いのになーとか思ってた矢先にSourceForgeからJava版が登場、これならActionScript3に移植するのも簡単!って思ってやったらできました。
これが、拡張現実=ARだ! |
ARToolKitは、四角いマーカーと呼ばれる図形をWebカメラから入力された画像から探し出して、そのマーカーを目印にCGを合成することであたかも実際にその場にCGで作られたオブジェクトが存在してるかのように見える、AR(Augmented Reality:拡張現実)っていう技術を簡単に実現するためのFlashのライブラリです。
Webカメラで年賀状を撮影して、FLARToolKitのビューワーを通すと…… |
これまではデスクトップアプリケーションでしかできなかったこのARを、Flashに移植することでWeb上で簡単に体験できるようにしたというのがFLARToolKitの一番の特徴です。
僕が所属するKatamariとAID-DCCの年賀サイト(デモムービー)に実際にFLARToolKitを導入したのですが、本人が想像した以上に世界中で取り上げられてほんとびっくりしました。
ARに使う年賀状 |
あらかじめ弊社からこんな意味不明なマーカーだけの年賀状を送り付けておいて、その年賀状に書いてあるアドレスにアクセスしてWebカメラでその年賀状を写すと、うちの会社のメンバーの今年の抱負みたいなものとか牛とかロゴとかアレとかが単なる紙の年賀状から飛び出してくるっていう仕組みです。
マーカーを認識する部分にFLAR Tool Kit、3DのオブジェクトのモデリングにはBlender、そしてそれをFlashでレンダリングするのにPapervision3Dを使っています。年賀状をもらってなくってもサイトからマーカー印刷用のPDFファイルがダウンロードできるので、Webカメラを持っている人はぜひ体験してみてください。きっとびっくりすると思いますよ!
FLARToolKitはSpark projectという日本最大のFlash/Action Scriptオープンソースコミュニティでソースを公開しているので、すでにいろんな場所で使われていて、世界的に有名なWebプロダクションNorth KingdomもGEのPlug Into the Smart Gridというサイトで使ってくれました。今年はWeb以外でもARがブームになっているので、いいタイミングでリリースできたなと思っています。
FLARのヒットのおかげで4月25日からカナダのトロントで開催される世界的Flashイベント、FITC Toronto 2009にスピーカーとして参加させてもらうことになりました。Flash界の大御所が集まるこのでっかいイベントで僕もスピーカー側で参加するだなんて想像するだけで緊張しますが、こんな機会はめったにないので思いっ切り日本のFlashをアピールしてこようと思っています。
個人的に技術的に興味を持ってるのはAlchemy。これまでに築かれた膨大なC言語のライブラリがFlash上で使えるようになるっていうこの技術は、Flashの可能性をさらに広げる重要なポイントではないでしょうか。
4. 「Web以外でFlashの展開は?」
最近デジタルサイネージっていうのをよく見掛けるようになりましたが、ああいうのもFlashで作れます。美術館や科学館のコンテンツもFlashで作られていることがよくありますよね。Web 屋の技術はWeb以外でも生かせるので、Webに限定せずに外に出ていけばいいんじゃないかと思います。
5. 「Flashがなくなったらどうする?」
ShockwaveとかProcessingとかSilverlightとか。代替技術はいろいろあるのでそういうのを使っておんなじようにインタラクティブコンテンツを作ってるでしょう。「プログラミングとビジュアルがうまく組み合わさったインタラクティブなコンテンツ」っていうのが僕がやりたいところなので、そういうのができる環境であれば特にFlashにこだわるってことはないと思います。
6. 「もっと自由に表現するためにしたいこと」
僕自身じゃなくってみんなが、っていう点では、前回の道家さんも書いてたような、うまくお金に変える仕組みみたいなのはどうにかなんないかなあと思います。最近はiPhoneアプリが作れる人は、いい感じになりつつあるのかなと思います。いろいろ問題はあるにせよ、デジタルなクリエイタがモノを作って売るっていう場ができたのですから。
さくーしゃ(Saqoosha) Saqoosha.netでFlashとかのブログ書いてます。Katamari Inc.でFlashとかのお仕事してます。大阪てら子っていうFlashとかの集会を毎月やってます。 |
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