第22回 iPhoneのAjax戦略、そして今日もWeb APIは増加する
株式会社ピーデー
川俣 晶
2007/6/22
AppleのAjax戦略の本質とは? WebOSの現状は? Googleの新サービスは? 多様化して増加し続けるWeb API/マッシュアップなどについて(編集部) |
ハイライト1・Ajaxに突き進むAppleの新戦略
- 米Apple、Windows版Safariをβ公開
- アップルにWindows版Safari開発を決断させたある認識
- Webアプリが標準となる「iPhone」
- iPhoneアプリ開発は「Web2.0標準で」――Appleがデベロッパーに指針
「普通のWindowsパソコンでは嫌だ……」というユーザー層の受け皿になってきたAppleが、ここに来て急速にAjaxに対して強い関与を見せています。具体的な話題としては2つあります。1つは、WebがプラットフォームになるというAjax/Web 2.0時代に、Safariの存在感を埋没させないために、Windows版を開発しているという話題。もう1つは、これまで外部の開発者をシャットアウトしてきたiPhoneのアプリ開発をWeb 2.0つまり実質的にAjax技術によって開放するという話題です。
SafariでSafariのダウンロードページを開く(画面をクリックすると拡大します) |
この2つの話題は、一見して開放的な技術であるAjaxに接近することで、Apple自身も開放的になる方向性を目指しているかのようにみえます。しかし、そもそもAjaxとは何か……ということを考えると、単純な話ではないことが分かります。
まず、Ajaxとは「すでに利用者が使っているWebブラウザを変更することなく、何も追加ソフトをインストールすることなく、即座に利用できる技術」です。そのような世界観と、新しいWebブラウザをインストールせよ、というメッセージ性は整合しません。これがMacOS上の話ならまだ分かります。MacOSのユーザーにとって、Safariとは標準で入っているWebブラウザであり、「何も追加ソフトをインストールすることなく即座に利用できる」からです。しかし、Windows版はそうではありません。
iPhoneのGoogle Mapsデモページ |
一方、iPhoneの開発をAjaxで行う……というのも、あくまで特定機器の専用ソフトの開発と考えれば奇異です。Ajaxのベースにあるのは、信用できない相手から送り込まれたプログラムを安全に実行するための技術で、システムの低レベルの詳細にはアクセスできないように制約されています。
しかし、特定機器の機能をフル活用するためには、システムの低レベルの詳細にアクセスする必要が生じる可能性があります。このような状況から考えると、実はApple自身はサードパーティーや個人開発者を信用していない……という可能性が考えられます。もちろん、MacOSでは彼らに対して低レベルの詳細にアクセスすることを許していますが、iPhoneでは違うということなのでしょう。
これらをどのように解釈するかは、読者の皆さん次第です。しかし、簡単に割り切れない世界があるのは間違いないでしょう。
ハイライト2・加速するWebOSとWebオフィスの世界
オンラインでのワープロ、表計算などを提供するアドベントネットと、Webブラウザで稼働するデスクトップ環境を開発する米スタートフォースとが業務提携すると発表しました。
「Start Force Webデスクトップ」のサンプル画面(Start Forceのサイトより引用) |
このような動きは、現在のWebアプリ(Ajaxアプリ)の不満を解消する方向性として、RIA(Rich Internet Application)のほかに極限までWebブラウザ上の機能性を高めるやり方が健在であることを示します。
現状の印象でいえば、Webブラウザの制約を超えるためにWebブラウザから出してしまおう……という方向性(RIA)と、あくまでWebブラウザの中で極限まで勝負しよう……という方向性の2つが競い合っているようにみえます。前者はランタイムのインストールという壁があり、後者にはWebブラウザそのものという壁があります。どちらが勝利するとも現状ではいい切れません。興味深く見守っていきたいですね。
ハイライト3・Google Mashup EditorとGoogle Gears
- Google Mashup Editor - Mashup Framework and Tools
- Google Gears
- グーグル、Webアプリをオフライン対応にする「Google Gears」開発
- Remember The Milkがオフライン対応──Google Gearsで
Googleが活発に新しいサービスや技術をリリースしています。
まずGoogle Mashup Editorは、容易にマッシュアップを作成できるサービスです。Yahoo! PipesやMicrosoftのPopflyに対抗サービスか……という意見も見られます。
一方、Google GearsはWebアプリを「ネットワーク接続抜きで」ローカルのパソコン上で動作させるソフトです。デスクトップアプリからは、「どのパソコンからでも自分の環境を使えるWebアプリは便利過ぎる」とみえますが、Webアプリの立場からは、「ネットワーク接続なしでも動作するデスクトップアプリは、Webアプリが使えないときでも動作して脅威」と受け取られるかもしれません。このギャップを埋めるものが、このGoogle Gearsです。
Google Gearsの仕組みのアイデアはそれほど珍しいものではありません。しかし、これを完全に動作させるには、おそらくWebアプリ側にも対応が必要でしょう。Googleという大きなブランドがあって、初めて成立する技術といえるかもしれません。
いち早くGoogle Gearsに対応したToDo管理サービス、Remember The Milk |
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