PDFによるJ2EEリッチクライアント計画(2) Page 1/3

J2EEを拡張するAdobe LiveCycleの全容

アドビ システムズ
小島 英揮
2005/10/27
リッチクライアント製品と認識されることは少ないが、PDFは業務システムのクライアントにリッチな機能を提供する機能を持っている。本連載では、J2EEのクライアントにPDFを採用することで、開発者がどのようなメリットを得られるのか、全4回の記事で紹介していく。(編集部)

 前回「J2EEのMVCモデルを変革するインテリジェントドキュメント“PDF”の正体とは?」では、PDFがシステム構築にもたらすバリューを中心に述べたが、今回は実際にシステムを構築する際にAdobe LiveCycle(以下、LiveCycle)製品群がどのような役割を果たすのかについて説明する。

LiveCycleで実現する4つのソリューション

 PDFには、アウトプットフォーマットとしてだけではなく、入力用UI(ユーザーインターフェイス)やデータパッケージとしてのさまざまな側面がある。こうした特性を生かしつつ、従来のWebアプリケーション以上の仕組みを提供するのが、LiveCycle製品群である。提供されるソリューションは、以下の4つのカテゴリに分類される。

  • プロセス管理
    主にPDFフォームをデータ入力や決済用のUIとし、人が介在するプロセスの自動化、効率化を実現する。ワークフローやシステム間連携の構築がこのカテゴリに相当。
  • コラボレーション
    プロセス管理のような、ある程度定型のプロセスではなく、参加者やルーティングプロセスがアドホックに変わるようなフローの電子化を実現する。PDFの特性を生かし、「オフライン」や「システム非依存」での実現が可能である。具体的には、企画書、仕様書などのレビューや校正プロセスの電子化など。
  • ドキュメント生成
    文字どおりPDFを生成する機能。ワークフローの決裁結果をアーカイブ用途でPDF化したり、請求書のテンプレートと顧客ごとのデータをオーバーレイし、顧客ごとの請求書をバッチ処理やオンデマンドでPDF生成するといったもの。
  • ドキュメントコントロール&セキュリティ
    ドキュメントとして生成されたPDFや、申請者やシステムからデータパッケージとして送付されたPDFを、改ざんや不正アクセスから保護するためにセキュリティを付与する機能。

 Java/Web系のシステムでは、プロセス管理やセキュリティ、ドキュメント生成などのシーンごとに、それぞれ違う技術(入力環境はWebフォーム、セキュリティにはXMLへの電子署名、ドキュメントにはPDFなど)やプラットフォームを利用しての実現となる。これに対し、LiveCycleを活用すれば、PDFという共通かつシンプルなプラットフォームにより、これらのカテゴリをカバーすることができる。

 また、Java/Web系と最も異なる点として、PDFファイルのやりとりさえできれば、オフラインやシステム非依存の環境でも、業務処理や情報交換が可能な点がある。コラボレーションやセキュリティはその最たる例で、PDFに必要な機能や、セキュリティを詰め込み、そのファイルをやりとりするだけで、安全かつ効率的に情報の交換やレビューを行うことができる。

 LiveCycleはこうしたPDFの便利な運用を引き出すための開発・運用ツールである。多くのLiveCycle製品がIBM WebSphere、BEA WebLogic Server、JBossといったJ2EE環境で動作し、フォームやワークフローのデザインツールはEclipseなどの開発環境とも親和性が高い。既存のシステム環境をさらに拡張し、いままでにない付加価値をもたらすのがLiveCycle製品の役割といえる(図1)。

 図1 LiveCycle製品群のJ2EE環境での構成

 アドビが提供するLiveCycle製品が、それぞれどのカテゴリを満たすものかについては以下を参照して欲しい。

製品名 製品概要 プロセス管理 コラボレーション ドキュメント生成 ドキュメントコントロール&セキュリティ
LiveCycle Designer フォームの設計ツール  
LiveCycle Barcoded Forms PDFフォームによる2次元バーコード処理      
LiveCycle Reader Extensions PDFの機能拡張    
LiveCycle Forms フォームテンプレートによるデータキャプチャ&ドキュメント生成    
LiveCycle Form Manager 電子フォームのポータル構築ツール      
LiveCycle Workflow Designer プロセス設計ツール      
LiveCycle Workflow ワークフロー、アプリケーション連携構築ツール      
LiveCycle Document Security PDF暗号化、電子署名、セキュリティポリシー付与      
LiveCycle Policy Server セキュリティポリシーの設定、管理      
表1 LiveCycle製品群の概要と用途
LiveCycle各製品に関する質問は「アドビ法人向けソリューション:お問い合わせフォーム」を利用できる。

次ページへ続く)

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 INDEX

PDFによるJ2EEリッチクライアント計画(2)
J2EEを拡張するAdobe LiveCycleの全容
Page1
LiveCycleで実現する4つのソリューション
  Page2
PDFファイルへの「フラグ」打ち込みで情報共有とセキュリティを実現
 ・PDFの機能拡張を施すReader Extensions
  Page3
 ・PDFの利用範囲を制限するPolicy Server
Webサービスとドキュメントサービスの統合ソリューションを実現する「QPAC」




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