リッチクライアント導入事例(1) Page 3/3

ERP資産から
“本当に知りたいこと”を紡ぎ出すCurl

吉田育代
2006/2/17

    “本当に望む形で
情報を手に入れる環境が手に入った”

 Curlでフロントエンドを組み上げたこうしたシステムを、日立ディスプレイズが本格展開しだしたのはここ1年半ぐらいのことなのだが、その導入による変化は着実に表れている。

 その1点は、システム企画を立ててから本番稼働まで最短2カ月と非常に早いペースで新システムを次々とリリースしていること。やり方はこうだ。

社内プロジェクトメンバーが“こういうものを作りたい”と要求仕様をまとめる。
クオリテックに相談。そこで“このように作った方が効率がいい”などといった技術的なアドバイスを受け、コア開発を依頼。
日立ディスプレイズがオフショアのパートナーに直接開発を依頼。
コーディングそのものは1カ月ほどで完成し、テスト工程、検査工程を経て本番リリースに至る。

 留意しているのは、「エンドユーザーが使いやすい操作性を実現すること」だと語る同社 業務改革本部 ビジネスプロセス改革センタ Eプロ推進グループ 技師 斉藤万也(かずや)氏。そのため、プロトタイプを早めに作りエンドユーザーにテストしてもらい、その意見を取り入れながら徐々に完成度を上げていく。

 そのようなプロセスを踏む理由を、同社 業務改革本部 主任技師 大道克也氏は次のように語る。「Webベースで展開しているのは、可能な限りたくさんのエンドユーザーに使ってもらいたいから。そのためには操作性がよくないと広がらない。開発側の自己満足に陥らないためにも、ユーザーの意見は最大限尊重している」

 導入による変化の2点目は、自社に合った経営指標データが明確に見えるようになったことで、企業活動の透明性が上がったこと。経営トップは自分の見たかったデータを見たかったスタイルで見て製造現場を指導する。それに対して現場はいい訳できない。それまでなら「データがないから分かりません」と逃げることもできないわけではなかったのだが、もうそうはいかないのだ。

 矢野氏は明言する。「Curlでリッチクライアントを実現し、われわれが本当に望む形で欲しい情報を手に入れる環境が構築できたことについては、200%満足している」。ただし、技術的には要望がないわけではない。その点を斉藤氏は次のように語る。「Curlの表現力は確かに素晴らしい。こちらがどんなに高い要求を出してもそれに応える。作れない画面はないのではないかと思うほどだ。だが、Curlはプラグインをブラウザにインストールしないと動かない。社内ならいいが社外と情報共有したいとき、“プラグインをインストールして使ってください”とはいいづらい。企業によってはセキュリティの観点から拒否されることも考えられる。Curlはそこが悩ましい」

    今後は顧客、サプライヤーにも公開し、
情報サプライチェーンの確立へ

 同社でのCurl活用は、今後どこまで広がっていくのだろうか。斉藤氏も少し言及したが、大道氏によると、内容をどんどん充実させている営業ポータルを、顧客、サプライヤー、物流業者まで水平展開し、サプライチェーンを途切れることなくつないでいきたいのだそうだ。それが現実のものになれば、実需に根ざしたジャスト・イン・タイム生産も夢ではなくなる。同社は中国に販売拠点と生産拠点を有しているのだが、そこでも活用してもらいたい、とすでに英語版の営業ポータルは準備した。まさにWebベースだからこそ自然に進められる拡大構想である。しかも、それがグラフや表を自在に盛り込める表現力の高いフロントエンドでだ。

写真:リッチクライアント・アプリケーション開発チーム
手前右:株式会社日立ディスプレイズ 業務改革本部 主任技師 大道克也氏、手前右:同社 業務改革本部 ビジネスプロセス改革センタ Eプロ推進グループ 技師 斉藤万也氏、中央:クオリテック株式会社 リッチクライアントソリューション事業部 部長 中川恵介氏。

 日立ディスプレイズのリッチクライアント導入は、見たい形で見たい情報が手に入ること、その利便性の大きさを実感できる事例だといえるだろう。(次回に続く)

製品データ
Curl
製品概要:HTMLのようなテキスト記述から3Dグラフィックスまで幅広い開発が可能なWebブラウザ型のリッチクライアント製品。ブラウザにCurl独自のプラグインをインストールすることによりリッチなユーザーインターフェイスを実現する。Webサーバに特別なモジュールは必要ない。
販売元:株式会社カール
製品価格
  ・Curlランタイム「Surge RTE」:無償
  ・Curl実行ライセンス(サーバライセンス):150万円

  3/3  

 INDEX

リッチクライアント導入事例(1)
ERP資産から“本当に知りたいこと”を紡ぎ出すCurl
  Page1
デジタル社会に対応した先進製品を提供するディスプレイ専業メーカー
“気持ちの入ったBIを実現しようと思ったら自社で一から作るしかなかった”
  Page2
同じ目線でものがいえるベンダだったCurl社のCurlを選択
日立ディスプレイズで利用されているCurlでの業務システムの一例
Page3
“本当に望む形で情報を手に入れる環境が手に入った”
今後は顧客、サプライヤーにも公開し、情報サプライチェーンの確立へ




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