Webオーサリングツールを使ってみよう:番外編

ブラウザの限界を超える「今」のリッチコンテンツ


セカンドファクトリー 新谷剛史

2007/5/22

今回は番外編ということでオーサリングツールを離れ、Webを取り巻く新しい流れについて見ていくこととしよう

 Webを取り巻く新テクノロジーの熱い戦い

 

 4月30日から5月2日にかけて米国で開催されたMicrosoft Mix07では、米国でのExpression Studioの出荷が始まったばかりだというのに、早くもExpression Webの次バージョンに関するインフォメーションが出されていた。

 「Windows Media Player」やこれから紹介していく「Silverlight」といったMicrosoftのソリューションへの対応のほか、「Adobe Flash」や「PHP」のサポート、あるいはExpression Webだけが遅れていたExpression Studioファミリー共通のデザインの適用、FTPのusername/passwordが保存できるようになるなど、これまでの弱みを解決する予定となっている。

 また、待ちに待ったAdobeのDreamweaver CS3の発売も間近に迫っている。こちらもこれから紹介していく「Spry」の標準搭載やPhotoshop CS3との連携など、魅力的な商品となっている。Webオーサリングツールについてはしばらくホットな状況が続きそうである。

 さて、これまで有償版3大Webオーサリングツールの特徴とは?Webオーサリングツールでコーディングできる人になる!の2回にわたってWebオーサリングツールの紹介をさせていただいたが、今回は番外編ということで、オーサリングツールを離れてWebを取り巻く状況について注目していくこととしよう。

 これから紹介していく内容は、過去には@ITで紹介されているものも含まれるが、これまでのスタイルを引き継いで、「どのソリューションのどの部分が優れているのか」という観点でそれぞれのテクノロジを紹介していくこととしよう。

 ブラウザの限界を超えるソリューション:
 ApolloとWPF

 リッチなユーザー体験を支えるソリューションとして注目されているのが、MicrosoftのWPF(Windows Presentation Foundation)とAdobeのApolloだろう。

 WPFはWindows Vistaにデフォルトで採用されている、3次元グラフィックスなどの表現力やデータ連携などを行うためのプラットフォームで、Windows XPを使用しているユーザーでも、.NET Framework 3.0を導入してもらうことにより、その表現力を手に入れることが可能だ。

 必要とされるマシンスペック(特にグラフィックス性能)やOS/ブラウザの制約、などの理由から、その表現力を誰でもすぐに体験できる、とは言い難いが、これまでFlashの独壇場であった「リッチなユーザー体験」というフィールドを覆すソリューションとなるだろう。

 システム開発者向けのFrameworkである.NET Frameworkがベースとなっているためか、実装の柔軟性についてはFlashと勝手が異なる部分も多いようだが、逆にボタン押下時のブロッキングなど、バグが生まれにくいアプリケーション開発という面ではメリットが多いのではないかと感じている(参考:「Windows Presentation Foundationのデモンストレーション)。

 WPF上で動作するコンテンツは、Expression Blendのほか、SDKに含まれるXAML Pad、Visual Studioなどで開発を行う。ポイントは、システム開発者寄りのVisual Studioとデザイナー寄りのExpression Blendという、大きく2つの開発環境が用意されることだ。作業区分が複雑化してきている開発の実態にマッチする開発ソリューションが用意されている。

画面1 WPFの開発ツールの1つである「Expression Blend」

 WPFはWindows Vistaや.NET Framework 3.0を導入したWindows XPといった環境で確認できるので、まずは上記デモンストレーションページへアクセスしてその可能性を体感してほしい。少しずつではあるが、開発に関する情報も提供され始めており、また、Expression Blendは現在CTP版を無償で試すことが可能なので、興味のある方はぜひ開発も行ってみてほしい。

 一方、98%の普及率を誇るといわれるFlash Playerを有するAdobeも、この状況を黙って見ているわけではない。これまでにも、Flashとのデータ通信に配慮したサーバーソリューションであるColdFusionや、システム開発者向けのFlash制作環境ともいえるFlexを用意するなど、非常に高い普及率を誇るFlash Playerを生かしたソリューションを提供してきた。

 しかし、ブラウザのプラグインであるが故の制約が存在するFlash Playerの壁を乗り越えるソリューションとして準備が進められているのが、アプリケーションの実行環境Apolloである(Apolloについても開発中のものであるため、以下の内容が変更されてしまう可能性があることをご了承いただきたい)。

 Dreamweaverでアプリケーション開発?
 Apolloの現状と今後

 Apolloは、デスクトップでアプリケーションを実行するためのプラットフォームである。FlashやFlexなど既存のWeb開発スキルを利用し、WindowsとMac OSの2つのOS上で動作し、またLinuxや携帯電話用の動作環境も提供予定である点に特に注目したい。

画面2 Apollo Applicationはインストールする必要がある

 例えば、スタンドアロンで動作するFlashを作成する場合、Windows用とMac用の2つのファイルを用意しなければならなかった。これが、Apolloのプラットフォーム上で動作させる場合、1つのファイルでWindowsとMacで動作させることが可能になるのだ。

 また、これまでのFlashには難しかったローカルリソースへのアクセスなど、制作の可能性も広がっている。また、Webアプリケーションでは実現できないオフラインでの利用や自由なユーザーインターフェイスの構築が可能になっている。

 一方で、実行のためにはアプリケーションのインストールが必要であるという、これまでのブラウザとは異なる使い勝手も存在するのだが、インストーラはApollo標準のものがあるため、デスクトップアプリケーションのように自前のものを用意する必要はない。

 もう一点注目すべきことは、Apolloの開発環境である。現在テストが可能なのはFlex Builderなのだが、開発環境にDreamweaverが含まれる予定なのだ。リッチコンテンツの開発にあまり縁がなかったユーザーも、これまで使用していた開発環境で身構えることなくスタートできるので、Dreamweaverでの開発ができるようになったらぜひ一度お試しいただきたい。

現在公開されているサンプルアプリケーション

 Apolloの世界をAdobeから提供されているサンプルで体感するためには、「Apollo Runtime」をインストールする必要がある。「Adobe Labs」のApolloサイトから、このランタイムとサンプルアプリケーションをダウンロードし、それぞれインストールすることで確認が可能となる(参照記事:背景が透けて表示されるApolloアプリを作成してみよう)。

画面3 現在公開されているApolloのサンプルアプリケーション
画面3 現在公開されているApolloのサンプルアプリケーション

 「Silverlight」とは、どのようなソリューションなのか

 WPFにせよApolloにせよ、開発という意味ではすでに現実のものとなっているが、制作物を見ていただくユーザーのことを考えると、まだまだ「ごく近い将来のソリューション」ととらえるのが妥当であろう。そのため、WPFをベースに開発が進められているのが、「今」のリッチアプリケーションを制作するための環境であるSilverlightだ。

画面4 Silverlightのトップページ
画面4 Silverlightのトップページ

 Silverlightは以前、WPF/E(Windows Presentation Foundation / Everywhere)と呼ばれていたもので、Mac OS XやWindows MobileなどのOS、FirefoxやSafariといったブラウザなど、Windows VistaやXP以外のさまざまなプラットフォーム上でリッチなユーザー体験を実現するために開発が進められているソリューションである。Silverlightはまだまだ開発途中のため不明な点も多いが、3Dレンダリングなどの一部の機能をカットする代わりに、クロスプラットフォーム・クロスブラウザを実現している。

 HDのムービーが扱える点と、そのムービーを「容易に」編集する環境まで用意している点が現在ベータとして公開されているVer. 1.0の特徴であるが、本命はCLR(Common Language Runtime、共通言語ランタイム)がサポートされる、Ver. 1.1であろう。.NET Framework(のサブセット)をブラウザ上から使用することが可能で、また、処理速度が速いのだ。Ver. 1.0では、アニメーションとムービー配信環境程度の印象が拭いきれないSilverlightであるが、すでにアルファ版という形で見えている1.1以降の動向を含めて、注目すべきソリューションである。

1/2

 INDEX
ブラウザの限界を超える「今」のリッチコンテンツ 
Page1
Webを取り巻く新テクノロジーの熱い戦い│ブラウザの限界を超えるソリューション:ApolloとWPF│Dreamweaverでアプリケーション開発? Apolloの現状と今後│「Silverlight」とは、どのようなソリューションなのか
  Page2
リッチコンテンツの「今」に応えるソリューション:SpryとASP.NET AJAX│「デザイナー向けのJavaScript」という明快コンセプトの「Spry」│SpryはDreamweaver導入前にマスターしてしまおう│広く活用され始めている「ASP.NET AJAX」

 関連記事



HTML5 + UX フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

HTML5+UX 記事ランキング

本日 月間