RIA/リッチクライアントの明日はどっちだ?
RIA in Developers Summit 2008 レポート
@IT編集部
平田 修
2008/2/20
2008年2月13・14日、今年も開発者のための祭典「Developers Summit(以下、デブサミ)」が開催された(Developers Summit 2008の開催概要)。
今回のデブサミでは初のテーマ別セッションが設けられ、その中に「DevelopmentStyle(RIA)」というテーマがあるなど、RIA/リッチクライアントは一層注目を集めているようだ。そんな中から本稿では、RIA/リッチクライアントのセッションを中心にいくつかお届けしよう。
「業務でリッチクライアント技術は本当に必要なのか」
多くのRIA/リッチクライアントのセッションの中でもひと際注目を集めたのが「リッチクライアント最前線」と題した討論会だ。@ITで「Windows Insider」フォーラムの編集を手掛ける、株式会社デジタルアドバンテージ 代表取締役 小川誉久 氏を司会に、アドビシステムズやカール、そしてマイクロソフトといったRIA/リッチクライアント技術を代表する3社の代表者が激論を交わした。
株式会社デジタルアドバンテージ 代表取締役 小川誉久 氏 |
まず小川氏は、「RIA/リッチクライアント技術は何を選ぶべきなのか」というテーマを挙げ、Webブラウザベース・アプリケーション/デスクトップ・アプリケーションの側面や対応OSなどから分析して、それぞれ次のように位置付けた。
アドビシステムズはFlashプラットフォームの高い普及率によるマルチOSのWebアプリケーションにおけるFlash/Flex技術が有名だが、その技術をデスクトップに応用したAdobe AIR(以下、AIR)でLinux以外のデスクトップ・アプリケーションにも新規参入した。アドビシステムズ株式会社 マーケティング本部 エンタープライズ&デベロッパーマーケティング部 部長 小島英揮 氏はアドビシステムズのRIA/リッチクライアント技術における強みについて、次のように語った。
アドビシステムズ株式会社 マーケティング本部 エンタープライズ&デベロッパーマーケティング部 部長 小島英揮 氏 |
「Webブラウザごとの互換性を解消するFlashプラットフォームとともに、デザイナーによく使われるクリエイティブ・ツール群で作られたユーザビリティ/ユーザーエクスペリエンス豊かなUIを使えるワークフローがアドビシステムズの強みです。さらに、この2つをAIRというデスクトップ・アプリケーションに生かして皆さんの仕事の範囲を広げていただきたいです」
マイクロソフトはアドビシステムズとは逆で、Windowsプラットフォームの高い普及率による.NET技術のデスクトップ・アプリケーションが有名だが、.NET技術をWebに生かしたSilverlightでWebアプリケーションの分野にも新規参入した。これについてマイクロソフト株式会社 デベロッパービジネス本部 デベロッパー製品部 マネージャー 春日井良隆 氏は次のように付け加えた。
「Silverlightの開発コンセプトは.NET FrameworkをWebの世界へ持ち込むことです。.NETの開発ノウハウをWebというクロスプラットフォームな環境で生かせるのが最大のポイントといえます。VBやC#で書いたコードがMac OS Xでも走るわけですから。一方で、JavaScriptにも対応しているので、Web開発者の皆さまのスキルも生かせます。またMonoプロジェクトでは、MoonlightというSilverlightのLinux版の開発も進められています。業務的な用途が求められることの多いデスクトップアプリにおいて、クロスプラットフォームであることはそれほど重要ではないと思います」
株式会社カール RIAエバンジェリスト 三野凡希 氏 |
カール(Curl言語)は歴史的に企業の社内向けシステムに強く、Web/デスクトップ両方に同じように対応した技術をマルチOSで提供している。「なぜカールはLinuxだけじゃなくMac OS Xもカバーしているのでしょうか」という小川氏の疑問に株式会社カール RIAエバンジェリスト 三野凡希 氏は次のように答えた。
「公共機関ではLinuxデスクトップの採用が増えていますし、品質管理や生産管理、設計でもMac OS Xは使われているので、マルチOS対応は不可欠なのです。さらにカールは、オンラインのWebアプリケーションだけでなくオフラインのデスクトップアプリケーションにも同じ技術で対応しているので、途中でユーザーの作業を止めることもありません」
さらに小川氏は、「そもそもリッチとは何か。イントラネットの社内システムでRIA/リッチクライアント技術は本当に必要なのか」というテーマで3者に聞いた。
「リッチとは、ユーザーにとっての業務の効率/生産性を上げる使いやすいUIと、HTMLでは実現できない機能をユーザーに提供できる開発者にとっての喜びです。バックエンドやSOAを含めたビジネスプロセスもリッチクライアントで操作できる時代で、Webアプリケーションでもマウスを使わないキー操作が求められるなど、入力生産性を上げるものが要求されることが最近は多いです」(三野氏)
マイクロソフト株式会社 デベロッパービジネス本部 デベロッパー製品部 マネージャー 春日井良隆 氏 |
「リッチとは、人が効率的に気持ちよくサクサクと操作できる心地よさ、つまりユーザーエクスペリエンスです。インターネットの消費者向けサイトに役立てるだけではなく、身近な経費精算、勤怠管理などのシステムの使い勝手に不満がある人を満足させるものだと考えます」(春日井氏)
「リッチとは、動画を付けたり色を付けるだけではなく、目的に紐づいたものです。いまのWebクライアントではユーザーの目的をカバーできない部分があるため必要とされています。消費者向けサイトの方がユーザビリティを追究する傾向が強いのも確かですが、イントラネットの社内業務でも、使う会社ならではの固有のデータの分析の仕方/見方を追究したUIのデザインができます。そんなものはいらないという意見は要件出しが甘いだけなのではないでしょうか。リッチクライアント時代に合わせた新しいタイプのコンサンルタントが必要だと思います」(小島氏)
このように、それぞれの意見が飛び交った結果、3者3様の特徴が浮き彫りにされる非常に興味深いセッションとなった。
■ 関連リンク
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RIA/リッチクライアントの明日はどっちだ? | ||
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