Competition

[Competition]

ビジネス向けSaaS版ワードプロセッサ

デジタルアドバンテージ 島田 広道
2009/07/09

「Competition」は、特定ジャンル/テーマのWindows対応製品をスペックで横並び比較するコーナーです。

スペック表インデックス
グーグル
Google Apps Standard Edition
グーグル
Google Apps Premier Edition
スタートフォース
Startforce Personal(SFライター2)
スタートフォース
Startforce Enterprise(SFライター2)
スタートフォース
Startforce Enterprise+Startforce Writer
ゾーホージャパン
Zoho Writer
ゾーホージャパン
Zoho Business

 あらゆる業務で必要とされるアプリケーションといえば、ワードプロセッサが筆頭に挙げられるだろう。ビジネス文書の多くは、自分以外の他人に見せるものなので、何よりきれいな字で書く必要があるし、表などを使って読みやすく体裁を整えたりしなければならないからだ。

 Windowsで使える「ワープロ」といえば、マイクロソフトが販売するOffice製品の1つ、Microsoft Wordを指すことが多い。ワープロ製品は数あれど、メールに添付されて届くワープロ・ファイルのほとんどはWord形式だろう。Wordは歴史も古く、高機能であらゆる「ワープロ・ニーズ」に応えてくれる。

 しかし逆にいえば、めったに使わない機能も多い。Office製品は比較的高価ということもあり、「もっと機能は少なくていいから安いものを」と思っても、ビジネス上でやりとりされる文書がWord形式であることから、やめるにやめられないと嘆いている向きも少なくないようだ。

 こんな悩みを解決する手段として注目されているのが、インターネットを利用したSaaS(Software as a Service)版アプリケーションである。アプリケーションはベンダのデータセンターで実行され、ユーザーはWebブラウザからインターネット経由でそのデータセンターに接続し、オンラインのサービスとしてそのアプリケーションを利用する。クライアント側では基本的にはWebブラウザを利用できればよく、対象アプリケーションの導入や管理の必要がない。

 機能面では、文字修飾や作表などひととおりのことはできるので、少なくとも一般的なビジネス文書なら問題ないレベルで作成可能だ(もちろん実際の機能レベルはサービスによって異なり、高機能なサービスもある)。そしてSaaSアプリケーションはインターネットにアクセスさえできれば文書の共有が可能であり、また社外への公開も容易なため、前述した文書交換の問題もクリアしやすい。社内、社外を含め、対外的に交換する文書に気軽に使えるわけだ。

 そこで本稿では、ビジネス・シーンで利用できるSaaS版ワードプロセッサを取り上げる。対象としたのは、クライアント側にソフトウェア版ワードプロセッサを必要とせず、Webブラウザなど基本的なコンポーネントだけで文書作成が可能なサービスである。ワードプロセッサ単体だけではなく、SaaS版オフィス・スイートやグループウェアなどの総合的なサービスに含まれるワードプロセッサ機能についても取り上げている。

SaaS版ワードプロセッサの分類と用途

 SaaS版ワードプロセッサは、単体のアプリケーション・サービスとして提供されている場合もあるが、ほとんどは複数のアプリケーション/機能をセットにした総合サービスに含まれる形で提供されている。そのため、SaaSを利用するなら、ワードプロセッサ以外のアプリケーション(表計算やスケジューラなど)も検討した方が選択肢は広がる。

 無償版と有償という分類もできる。傾向としては、無償版は主に個人やスモール・ビジネスが対象で、サポートやパフォーマンスなどが制限されている場合が多い。本稿では有償版との違いを比較できるように無償版も掲載しているが、例えばユーザー数が多いビジネス用途などで無償版が適さないこともあるので注意していただきたい。

 さて、本稿で取り上げるSaaS版ワードプロセッサは、次の3つのベンダが提供するサービスから選んだ。

■グーグル Google Apps
 Google Appsはメールやチャット、カレンダー、表計算などのアプリケーションをセットにした総合サービスで、ワードプロセッサの機能も含まれる。有償でビジネス向けのGoogle Apps Premier Editionと、無償で小規模グループ向けのGoogle Apps Standard Edition、教育機関向けのGoogle Apps Education Editionがラインアップされている。本稿では、Premier EditionとStandard Editionを取り上げる。

■スタートフォース Startforce
 Startforceは、クライアントのデスクトップ環境をデータセンター上で実行し、Webブラウザからデスクトップ環境が利用できるサービスで、「WebTopシンクライアント」と呼ばれる。ワードプロセッサや表計算などのオフィス・アプリケーションやグループウェアの機能が提供されている。有償でビジネス向けのStartforce Enterpriseでは、ワードプロセッサ機能として標準装備のSFライター2とオプションのStartforce Writerが利用可能なので、それぞれ取り上げる。また無償のStartforce Personalは主に個人向けのエディションだが、限定的ながらスモール・ビジネスでの利用は可能とのことで、これも取り上げる。

■ゾーホージャパン(旧アドベントネット) Zoho
 Zohoでは、オフィス・アプリケーションのほか、CRMやグループウェア、Web会議などさまざまなSaaS版アプリケーションがラインアップされている。ワードプロセッサとしては単体で無償のZoho Writerが提供されているほか、Zoho Writerを含む複数のアプリケーションをセットにしたパッケージも用意されている。本稿ではZoho Writerと、有償でビジネス向けパッケージであるZoho Businessを取り上げる。

スペックにおけるSaaS版ワードプロセッサの注目ポイント

 同じワードプロセッサである以上、SaaS版であっても、従来のソフトウェア版と共通した注目すべきスペックが存在する。その一方で、管理・運用の主体がベンダのデータセンターにあるという点で、まったく別のスペックが重要になる。以下では、スペック表の大分類ごとに、注目ポイントを記す。

■料金体系
 基本的に年/月ごと、およびアカウントごとに利用料金の単価が定まっている。ただし、アカウント数によって単価が異なっていたり、アカウント数が一定以下なら無償だったりと複雑なので、その条件には注意が必要だ。

■基本情報
 サービスによっては、Webブラウザ以外のコンポーネントを必要とする場合があるので、「クライアントPC環境の要件」は要確認といえる。

 SaaS版ワードプロセッサでは、文書を格納するデータセンター内で、複数ユーザーによる文書の共有が可能だ。積極的に文書を共有してグループ作業を行うような場合、「複数ユーザー編集時の排他制御」にあるように、同時に複数ユーザーが同一文書を編集したとき、どのように排他制御が行われるか否かは注意した方がよい。

■文書作成機能
 ここではソフトウェア版ワードプロセッサの文書作成の基本機能を中心にスペックをリストアップしてみた。いずれのサービスも、編集機能についてはひととおり装備しており、それほど大きな違いはない(一部で目次など「挿入できる要素」が若干少ないサービスもあるが)。また印刷についても、Webブラウザの印刷機能に頼ることなく、いわゆるWYSIWYG印刷(画面上のイメージのまま印刷する)が利用できる。

 サービス間で若干差があったのは「インポート可能な文書フォーマット」「エクスポート可能な文書フォーマット」である。とはいえ、いずれのサービスもMicrosoft Word(.doc)やHTML、プレーン・テキストという、よく使われるフォーマットには対応している。外部への文書配布を考慮すると、PDFへのエクスポートが可能かどうかはポイントの1つといえるだろう。

 ソフトウェア版と同様にSaaS版でも、たいていはスクリプトあるいはAPIを使ったプログラミング機能がある。ただ、Microsoft Wordのマクロ言語(VBA)との互換性は現時点でないようだ。つまりマクロ言語を活用した既存のWord文書は、SaaS版への移行に際して困難が予想される。ソフトウェア版も併用するか、別の移行策を検討する必要があるだろう。

 SaaS版ゆえの注目の機能としては「オフラインでの文書作成」が挙げられる。データセンターとの接続がないオフライン状態のまま文書作成を進め、オンラインにしたときにクライアントからデータセンターにその変更が反映されるという機能だ。特にモバイルでもSaaS版ワードプロセッサを利用したい場合は注目すべきだ。

■保証とサポート
 SaaS版ワードプロセッサの場合、データセンター側で障害が生じるとサービスが利用できなくなり、業務が停止する恐れがある。これに対してSLA(サービス品質保証契約)を定めてサービス停止時の補償を用意しているベンダもある(「SLA(サービス品質保証契約)」「SLA未達時の補償」)。特にソフトウェア版から全面的に移行する場合は重視すべきスペックだろう。

 また、管理・運用の主体がベンダのデータセンターに移る分、ソフトウェア版に比べてベンダにサポートを求める機会は増える可能性がある。その点で「電話によるサポート」の有無などサポート内容には注意した方がよい。

■管理機能
 管理・運用の主体がデータセンターへ移っても、そこに格納される文書やユーザー・アカウントはユーザー側での管理を必要とする。そのため、ワードプロセッサ本来の機能からは外れるが、管理機能についても取り上げている。

 「管理者による全ユーザーの統合管理」は、システム管理者によるユーザー・アカウントの統合的な管理を想定している。無償版の一部でこの項目が「−」なのは、1ユーザー単位での管理しかできないことを表す。ユーザー・アカウントが増えると管理が難しくなるので注意が必要だ。

■ほかの機能
 前述のように、ワードプロセッサ単体より、そのほかのアプリケーション/機能とセットになった総合的なサービスの方が多い。例えば表計算やメール・クライアントなどの機能も、文書作成と同じくSaaSへの移行を検討するなら、「文書以外の作成機能」「そのほかの機能」を確認していただきたい。

ベンダ 製品名 提供形態 リリース時期 詳細スペック表へ
グーグル Google Apps Standard Edition 直販 2007年2月 この製品のスペック表へ
グーグル Google Apps Premier Edition リセラー / 直販 2007年2月 この製品のスペック表へ
スタートフォース Startforce Personal(SFライター2) 直販 2008年1月 この製品のスペック表へ
スタートフォース Symantec Startforce Enterprise(SFライター2) リセラー / 直販 2008年1月 この製品のスペック表へ
スタートフォース Startforce Enterprise+Startforce Writer リセラー / 直販 2009年5月 この製品のスペック表へ
ゾーホージャパン Zoho Writer リセラー / 直販 2005年9月 この製品のスペック表へ
ゾーホージャパン Zoho Business リセラー / 直販 2007年9月 この製品のスペック表へ
比較対象の製品一覧
(各スペック表は2009年7月9日の情報に基づいています)
前の回へ

 INDEX
  Competiton
ビジネス向けSaaS版ワードプロセッサ
    1.スペック表の各項目について
    2.スペック表: グーグル Google Apps Standard Edition
    3.スペック表: グーグル Google Apps Premier Edition
    4.スペック表: スタートフォース Startforce Personal(SFライター2)
    5.スペック表: スタートフォース Startforce Enterprise(SFライター2)
    6.スペック表: スタートフォース Startforce Enterprise+Startforce Writer
    7.スペック表: ゾーホージャパン Zoho Writer
    8.スペック表: ゾーホージャパン Zoho Business

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