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.NET「本音」相談室 Q1：.NETとは何か？ 塩田 紳二 2007/10/31

.NETとは何でしょうか？

　いきなり本題だが、簡単にいうと.NETとは、マイクロソフトの推進する、とある構想の名前である。「構想」として語られることはたいていの場合、そんなに難しくないが、なぜ構想が出てきたのかということは意外と理解しにくいものだ。

　なので、構想をいくら説明しても、本質には到達できないと思われる。じゃ、何なんだ、って話になるが、誤解を恐れずに簡単にいうと、.NET構想ができたのは、「.NET技術」を普及させるためだ。取りあえず、「.NET技術」は何かって話は置いといて、.NETに至る背景は以下のようなものだ。

　マイクロソフトは、Windows用の「新しいプログラミング技術」（現在、「.NET Framework」と呼ばれているもの）を開発した。これは、既存のWindowsを大きく変えるもので、Windows用のプログラムは、みんなこの「新しいプログラミング技術」用に作ってほしいとマイクロソフトは考えている、だから、この新しい技術を普及させなきゃならない。

　技術屋だけが相手なら、技術的な長所を切々と語ればよいのだが、現在の情報システムは、文系・理系いろんな人が入り乱れて物事を決めているので、技術の普及といってもそう単純にはいかない。このため少しは高尚なこともいわなきゃならない。就職面接で「上場企業だったから」とホンネはいわずに「御社の経営理念に感動して」なんて建前をいうのと同じだ。人間は、ホンネよりも建前の方が物事を受け止めやすいのだ。そこで「構想」の出番だ。構想として語ることで、単なる技術の普及活動に大義名分や社会性が出てくる。また、「構想」といえば、何だか「すごい」って感じがしてくる。

　構想を語るには分かりやすい名前が必要だ。名無しの構想ではちとまずい。このために付けられた名前が「.NET（ドットネット）」である。名前からするとインターネット（.COM＝ドットコムとか）に関係ありそうだし、ネットワークにも関係がありそうだ。だが、.NETという名前自体は単なるラベルであり、具体的に何かを指し示すものではない。

　なんで、.NETなんて名前になってしまったのだろうか。実は、この.NET構想の発表当時、世間（特にアメリカ）はいわゆる「.com」ブームだったのだ。インターネットが商用化され、多くのベンチャーがインターネット関連ビジネスを目指していた。それで「.com」をほうふつとさせるような名前が付けられたわけだ。

　そして最初に取られた方針が、「Visual Studio .NET」とか「Windows CE.NET」など、どんな製品にも「.NET」を付けることだった。まあ、バットマンの自動車がバット・モービル、基地である洞窟がバット・ケイブというのとそんなに変わらない発想である。現在のWindows Server 2003も、一度は、Windows .NET Serverと呼ばれていた。

　ここで理解しておいてほしいのは、.NET構想があって、技術が作られたのではなくて、技術が最初にあって、それから構想や名前が出てきたということだ。ある意味、構想自体はどうでもいいのである。これは、技術を説明するのが困難だし、説明しても理解してもらえるとは思えない一般の人向けに、技術者ではないマイクロソフトのマーケティング担当部門の人たちが考えたものだ。技術的な話は、どうしてもソフトウェア開発者向けになってしまう。ある程度、開発にもかかわるような人ならば、それでもいいが、業務や分野が細分化された現在、ITにかかわる技術者のすべてがソフトウェア開発について詳しいわけではない。なので、システム管理者に代表されるような、ITには深くかかわるが、ソフトウェアを作るわけではないって人たちに関するアピールが不足してしまっている。まあ、ソフトウェアを作っている会社だから、ソフトウェアを開発するってことは、社内的には常識となっているんだろうが、世の中、そういう人ばかりではないのである。

　で、「.NET技術」に戻るが、これは「.NET Framework」のことだ。ほかにもいろいろあるが、突き詰めて考えるとすべて、この.NET Frameworkに行き着く。すべての.NETはここから始まる。では、.NET Frameworkとは何か。これについては別途解説するが、新しいAPI（アプリケーション・プログラミング・インターフェイス）のことで、Windowsがアプリケーションに対して提供する機能の集まりである。取りあえずは、一連の新しいAPI群だと思っておけば間違いはない。

.NET構想は、.NET技術を普及させるために後から作られた、いわば「建前」である。構想のために技術が開発されたように見えるが、実は逆である。

INDEX
	.NET「本音」相談室（第1回）
	Q1：.NETとは何か？
	Q2：.NETはなぜ分かりにくいのか？
	Q3：どうしていま、.NETなのか？

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