システム管理者のための.NET入門 2.Web型システムの特長と問題点 デジタルアドバンテージ 小川 誉久2006/12/28 |
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アプリケーションの配布問題を抜本解決するWeb型システム
Webはもともと、主にネットワーク上で論文などの静的なドキュメントを広く参照可能にするための仕組みとして開発されたが、ボタンや入力用テキスト・ボックスなどといったGUI部品を扱えるようになったことから、こうしたGUI機能をうまく生かして、ブラウザでアプリケーション実行を可能にする努力が進められた。この仕組みをビジネス・アプリケーションに応用したものがWeb型システムである(Web型システムで作成されたアプリケーションは、「Webアプリケーション」と呼ばれる)。Web型システムでは、基本的にサーバ側でUIを含めたアプリケーションのほぼすべての処理を行い、データベースへのアクセスもサーバから行う。クライアント・コンピュータは、Webブラウザでサーバに接続することで、アプリケーションを実行できる。すべての処理はサーバ側で行われるので、クライアント側コンピュータにはブラウザだけがあればよい。ブラウザさえ動く環境であれば、クライアントOSはWindowsである必要はないし、極端な話PCである必要もない。利用できるブラウザのHTMLサポートの状況にもよるが、携帯電話などを使ってWebアプリケーションにアクセスすることも可能である。
Web型システムのビジネス・アプリケーションへの応用では、JSP(JavaServer Pages)/サーブレットなどをサポートしたUNIX/Java環境が先行したが、マイクロソフトもASP(Active Server Pages)と呼ばれるWeb型システム・プラトッフォームを提供してこれをサポートした。現在マイクロソフトは、.NET対応のWeb型システム・プラットフォームとして、ASPの.NET対応版であるASP.NETを提供している。
Web型システムの長所は、アプリケーションの機能がすべてサーバ側で実現されており、C/S型システムのようなアプリケーション配布の問題がないことだ。アプリケーションをバージョンアップするには、サーバ側だけを更新すればよい。次にクライアントがブラウザでアクセスしたときには、バージョンアップされた新しいアプリケーションにアクセスできる。クライアント管理にかかるコストはほとんど不要である。
Web型システムにおけるアプリケーションの更新 |
Web型システムでは、すべての機能がサーバ側に集中しているため、アプリケーションの更新がサーバ側で完結する。クライアントごとの管理コストはほとんどかからない。 |
C/S型システムでは、各クライアントがデータベースにアクセスするために、DBの接続管理がスケーラビリティ上のボトルネックになりやすいと述べた。これに対しWeb型システムでは、サーバ・アプリケーションだけがデータベースへのアクセスを行うので、この問題を回避して、より多くのクライアントからの利用をサポートできるという利点もある。
筆者が所属するデジタルアドバンテージ社では、Windows TIPSのディレクトリ作成支援ツールをWeb型システムで開発した。このツールでは、各Windows TIPS記事に対して分類用の属性を指定し、指定された属性情報から、ディレクトリのページを自動生成している。生成されたディレクトリ・ページは以下から参照できる。
Windows TIPSディレクトリ作成支援ツール |
こちらも筆者の所属するデジタルアドバンテージで開発した社内用ツール。Windows TIPSのディレクトリ・ページ作成を自動化する。Web型システムで構築されているため、ブラウザさえあればどこからでもアクセス可能だ。 |
Webアプリケーションとして構築されているため、ブラウザさえあれば、インストールや初期設定なしに、どのコンピュータからでもすぐにアクセスできる。サーバを更新すればよいので、アプリケーションのバージョンアップも非常に容易である。ASP.NETは、Web型システム開発に対し、高度で一貫性のあるアプリケーション・フレームワーク(アプリケーション開発のひな形となるクラス・ライブラリ群)を提供しており、拡張性や柔軟性、メンテナンス性に優れたWebアプリケーションを開発可能にしている。
ただし、先にご紹介したC/S型アプリケーションに比較すると、UIがHTMLコンポーネントに制限されるため、ルック&フィールが非常に貧弱である。不可能ではないが、Windowsアプリケーションでは当たり前に使える、マウスによるドラッグ&ドロップや、右クリック・メニュー機能の実現などは困難であり、通常は使えない。大量の入力処理を行うWindowsビジネス・アプリケーションでは、Enterキーを押すことで、入力フォーカスが次のコントロールに自動的に移動するようにして入力生産性を高めることがあるが、Webアプリケーションでこれを実現するのも容易でない(これはもともとDOS上でのアプリケーションでよく使われた形式。Windowsの標準的なUIガイドラインにはマッチしない)。
INDEX | ||
システム管理者のための.NET入門 | ||
第2回 ビジネス・アプリケーションの現在と.NET | ||
1.C/S型システムの特長と問題点 | ||
2.Web型システムの特長と問題点 | ||
3.ビジネス・アプリケーションの論理3階層 | ||
「システム管理者のための.NET入門」 |
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