特集 Windows Server 2003完全ガイド

2.Windows Server 2003オーバービュー(2/2)

デジタルアドバンテージ
2003/06/20

マイクロソフトから見たWindows Server 2003

 Windows Server 2003とは、ひと言でいえばどのようなOSで、いまと何が変わるのか? 手っ取り早くこの答えを知りたいと思っている人は少なくないだろう。多機能なサーバOSの特徴や目的をひと言で表すのは容易でないが、ここでそのヒントとして、マイクロソフトの幹部が説明している「Windows Server 2003のトップ12機能」をご紹介しよう。

  • セキュリティ
  • 安全なネットワーク・アクセス
  • Active Directory
  • 信頼性と可用性
  • パフォーマンスとスケーラビリティ
  • マネジメント
  • ストレージ・マネジメント
  • ボリューム・シャドウ・コピーとシャドウ・コピー・リストア
  • ターミナル・サービス
  • Windows Mediaサービス
  • .NET Framework統合
  • Internet Information Services 6.0(IIS 6.0)

 これは、2002年8月にマイクロソフト主催で開催されたWindows Server 2003の記者向け説明会「Reviewer's Workshop」において、マイクロソフトWindowsサーバ製品部 部長の高沢冬樹氏が語ったリストである。半年ほど前の情報ではあるが、本質的な部分は変化していないと考えてよいだろう。実はこれは、米MicrosoftのWindows Server 2003開発の責任者であるBill Veghte氏が語ったリストと一致している(ただし、Veghte氏のリストでは3番目にあった「セキュリティ」が、高沢氏のリストでは1番目に移動された)。

 これがWindows Server 2003の本質を表しているかどうかはともかく、開発しているマイクロソフト自身が考えるトップ12機能がこれである。ざっとリストを見ると、「Active Directory」「ボリューム・シャドウ・コピー(オープン中のファイルもバックアップ可能にする機能)」「.NET Framework」「IIS 6.0」などといったマイクロソフト独自の機能もあるが、「セキュリティ」「安全なネットワーク・アクセス」「信頼性と可用性」といった抽象的な文言が数多く並んでいる。

 ここから分かることは、Windows Server 2003は、独自の突出した新機能を華々しく組み込んだ新OSというよりも、安心して使えるサーバOSとして、一見しただけでは見えにくい機能追加や機能改善を幅広く施したものだろうということだ。本稿の後半には、Windows Server 2003の新機能や改良された機能一覧を掲載している。具体的にどのような点が変わっているのか、これをざっと見渡せば、その方向性を理解できるだろう。

3つの目的

 ケースによってさまざまな見方があるだろうが、筆者はWindows Server 2003の目的を次の3つととらえている。

■安心してミッション・クリティカルなシステムにして使えるベースOS
 先に触れた「Reviewer's Workshop」において、Windowsサーバ製品部 シニア・プロダクト・マネージャの吉川顕太郎氏は、「現状のWindows 2000 Serverも、ミッション・クリティカルなシステムに耐えるだけの堅牢性と可用性を備えているが、顧客は未だに疑念を持っている」と述べた。確かに、自分の身の回りで見聞きする限りでも、IAサーバは普及しているとはいえ、重要度の高いサーバにWindows OSを使うことには拒否反応を示す管理者が少なくない。これは、クライアント用OSから、ボトムアップ的にサーバ領域に到達したWindowsが背負わざるを得ない十字架なのかもしれない。

 しかしWindowsが次に開拓しなければならない領域の1つは、従来はメインフレームやUNIXワークステーションなどが担ってきた、企業の基幹業務などのミッション・クリティカルなシステムである。Windowsが背負っている、こうした負の先入観を払拭して、ミッション・クリティカル・システムにコストパフォーマンスの高いIAサーバ+Windowsを導入してもらうためのベースOSとして、Windows Server 2003は機能しなければならない。このためWindows Server 2003では、サーバ・クラスタリング機能の強化やセキュリティ機能の強化、ストレージ管理機能の強化などが図られている。

■システム管理、システム運用のTCOを削減する
 GUIで操作できるので便利ではあるが、だからといってWindowsサーバにすればTCO(Total Cost of Ownership)を削減できるかといえば、答えはノーである。セオリーどおりに設定して、そのまま使い続けるならよいが、イレギュラーな処理がひとたび起こると、途端にGUIなどが使いものにならなくなった、という経験はだれにでもあるだろう(そして、たいていはコマンド・プロンプトが活躍することになる)。

 こうした問題を解消し、Windowsシステムの導入や設定、管理にかかる手間を低減するために、Windows Serverでは、システムの柔軟性向上に加え、さまざまな支援機能、支援ツールが提供されている。

 例えばWindows 2000では、ディレクトリ・サービスとしてActive Directoryが新たに組み込まれたが、いったんドメインを構築すると簡単に構成変更ができないなど、柔軟な運用は困難だった。これに対しWindows Server 2003では、後からドメイン名を変更できるようになるなど、Active Directoryの柔軟性が大幅に改善されている。これ以外にも、サーバのコンポーネント構成や管理をウィザードで手軽に行えるようにする「サーバの管理」ツールが追加されたり、管理作業をバッチ型で処理する目的などのためにコマンドライン・ツールが大幅に強化されたりしている。

■来るべき.NET時代のインフラストラクチャを整備する
 マイクロソフトは、.NET Frameworkという新しいアプリケーション・フレームワークを開発し、その開発環境(Visual Studio .NET、以下VS.NET)を発表している。Windows Server 2003には標準で.NET Frameworkが組み込まれており、VS.NETで開発した.NET対応アプリケーションを追加ソフトウェアなしで実行することができる。またWindows Server 2003には、企業内でUDDIサーバ(Webサービスのディレクトリ・サービス)を構築するための機能も標準で組み込まれている。

 特にWindows Server 2003では、ASP.NETを利用したWebアプリケーションやWebサービスを実行するためのアプリケーション・インフラとして、従来版から大幅に作り直した新バージョンのIIS 6.0が同梱されている。このIIS 6.0では、Webアプリケーションなどのプロセス(ワーカー・プロセス)の独立性を向上させ、いずれかのプロセスが不具合を起こしても、ほかのプロセスは影響を受けないように改良された。また、問題が発生したプロセスをいったん停止して自動的に再起動できるようにするなど、WebサーバとしてのIISの堅牢性が大幅に強化されている。Code RedやNimdaなどの一件により、何かと槍玉に上げられることが多かったIISの汚名を返上して、.NET対応アプリケーションのインフラとして機能すること。これはWindows Server 2003の大きなミッションといってよいだろう。

企業コンピューティングを支援する各種アドイン・ソフトウェアを追加提供

 マイクロソフトは、Windows Server 2003発売後も、システムの機能性向上や管理性を向上させるさまざまなアドイン・ソフトウェアを提供する予定である。Windows Server 2003に組み込んで利用するものではあるが、それで可能になることは、Windows Server 2003単体の機能を拡張するというよりは、ネットワーク全体の機能性向上を狙っている。典型的なのは、MetaDirectory Service 2003(MMS 2003)とWindows SharePoint Services(WSS)だろう。これらは有償で提供されるミドルウェアの機能限定版である。必要に応じて有償版の製品を購入することで、スケールアップを図ることができる。

ソフトウェア名 機能
グループポリシー管理コンソール(GPMC) グループ・ポリシー・オブジェクト(GPO)のバックアップ/リストア、ドラッグ&ドロップによる移動やコピー、GPO適用のシミュレーション機能などを提供する管理コンソール・アドイン。これまでは取り扱いが簡単でなかったGPOの取り扱いを容易にする
MetaDirectory Service 2003(MMS 2003) 異なる複数のディレクトリ・サービスを統合して管理可能にするソフトウェア。無償ダウンロードが可能なStandard Editionと製品として販売されるEnterprise Editionの2つがある
Auomated Deployment Services(ADS) 主にデータ・センターなど、大量のWindowsサーバを展開(プロビジョニング)する場合の作業を自動化するためのツール。展開用のディスク・イメージをあらかじめ作成しておき、これを複数のWindowsサーバに展開可能にすることで、システム管理者の負担を軽減する
Windows SharePoint Services(WSS) Office 2003と連携することで、チーム単位の高機能なコラボレーションを実現するソフトウェア。複数のWSSをとりまとめて全社的な情報ポータルを実現する有償製品として、SharePoint Portal Server 2003が提供される
Real-Time Communication Server 2003(RTC Server) インスタント・メッセージングや音声通話などを社内サーバで運用可能にするソフトウェア。ユーザー認証やロギング、暗号化通信など、管理者によってその使用状態が把握できるような機能を持ち、管理されたメッセージング/コラボレーション機能を提供する
Windows Rights Management(RMS) 企業内の高度な情報保護を可能にするソフトウェア。メールや文書に対して、再配布禁止や印刷/画面キャプチャ禁止など、機密情報の漏洩を防ぐ機能を提供する

 ADSおよびRMSの詳細に関しては、それぞれ以下の記事を参照されたい。

Windows Server 2003の必要環境

 Windows Server 2003の各エディションと必要システム構成は以下のとおりである。

必要条件 Web Edition Standard Edition Enterprise Edition Datacenter Edition
対応プロセッサ Intel Pentium/Celeronファミリ、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品 Intel Pentium/Celeronファミリ、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品 Intel Pentium/Celeronファミリ、Itanium、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品
最低CPU速度 133MHz 133MHz 133MHz (x86) / 733MHz (Itanium) 550MHz (x86) / 733MHz (Itanium)
推奨CPU速度 550MHz 550MHz 550MHz(x86)
最少RAM容量 128Mbytes 128Mbytes 128Mbytes(x86)/1Gbytes(Itanium) 512Mbytes/1Gbytes(Itanium)
推奨最低RAM容量 256Mbytes 256Mbytes 256Mbytes(x86)
最大RAM容量 2Gbytes 4Gbytes 32Gbytes (x86) / 64Gbytes (Itanium) 64Gbytes (x86) / 512Gbytes (Itanium)
マルチプロセッサCPU数 1CPU〜2CPU 1CPU〜4CPU 1CPU〜8CPU 8CPU〜32CPU(x86)/8CPU〜64CPU(Itanium)
最低ディスク必要量 2Gbytes 2Gbytes 2Gbytes (x86) / 4Gbytes (Itanium) 4Gbytes (x86) /4Gbytes (Itanium)
グラフィックス VGA以上(800×600ドット以上を推奨) VGA以上(800×600ドット以上を推奨) VGA以上(800×600ドット以上を推奨)
クラスタ・ノード なし なし 8ノードまで 8ノードまで
Windows Server 2003各製品の必要システム構成

 以下本稿では、Windows Server 2003の新機能や機能改良点を一覧にし、ごく簡単な説明を加える。これまでに、Windows Server 2003は、安心して使えるサーバOSとして機能するために、多数の新機能追加、機能改良がなされていると述べた。以下の表は、それらを具体的に示す材料となるだろう。


 INDEX
  [特集] Windows Server 2003完全ガイド
    1.Windows Server 2003オーバービュー(1/2)
  2.Windows Server 2003オーバービュー(2/2)
    3.新機能/改良機能一覧(1)
    4.新機能/改良機能一覧(2)
    5.新機能/改良機能一覧(3)
    6.新機能/改良機能一覧(4)
 
目次ページへ  Windows Server 2003完全ガイド


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