特集
Windows Server 2003完全ガイド
―― 新世代WindowsサーバOSの機能と構造 ――

1.Windows Server 2003オーバービュー(1/2)

デジタルアドバンテージ
2003/06/20

本稿は、製品直前版(RC1)のWindows Server 2003を元に作成し、2002年10月25日に公開された記事「Windows Server 2003完全ガイド ―― 次世代Windowsサーバはこうなる ――」を、製品版の情報を元に改訂し、一部を加筆したものです。元の記事は以下のリンクを参照してください。

・2002年10月25日公開の元記事「Windows Server 2003完全ガイド ―― 次世代Windowsサーバはこうなる ――

 Windows Server 2003は、Windows 2000 Serverの後継となるWindowsサーバ製品である。.NET対応アプリケーションの実行環境である.NET Framework(.NET Framework 1.1)を標準搭載した初のWindows OSとなることから、当初は“Windows .NET Server”と呼ばれていたが、製品発売間際になって「.NET」が取り外され、最終的には“Windows Server 2003”と呼ばれることとなった。

 Windows Server 2003は、2003年6月2日より企業向けなどのボリューム・ライセンス販売が開始され、6月25日からはパッケージ販売も開始される予定だ。本稿では、企業のシステム導入担当者や、ネットワーク管理者などを対象に、このWindows Server 2003概要をお届けする。

Windows Server 2003
Windows Server 2003では、セキュリティ面、性能面、管理面などを中心として、さまざまな新機能追加、機能拡張が行われた。

Windows Server 2003製品概要

 上で触れたとおり、Windows Server 2003は、まず企業向けのボリューム・ライセンス販売が2003年6月2日より開始された。原稿執筆時点(2003年6月中旬)の段階で、いくつかのIAサーバ・ベンダから、Windows Server 2003を搭載したサーバ製品の販売も開始されている。これに引き続き、6月25日からはパッケージ版の販売が開始される予定だ。

 日本語版Windows Server 2003の製品構成は以下のとおりである。

OS ターゲット
Windows Server 2003, Web Edition MUI(Multilingual User Interface)版 単機能のWebサーバとして利用することを目的とする機能制限版。このためActive Directoryサーバ機能など、LANのサーバとして必要となる機能は提供されない。ASP.NETを利用したWebアプリケーション/Webサーバ・プラットフォームなどとして利用する。MUIは、英語版に多国語対応キットを追加したもの。パッケージ版は用意されない
Windows Server 2003, Standard Edition SOHOや特定部門など、ワークグループ環境や小規模なビジネス・インフラを提供することを目的とするエディション。Active Directoryを始めとするネットワーク管理機能は提供されるが、クラスタリング・サポートやSANストレージ・サポートなど、中規模〜大規模ネットワークが対象となる機能は提供されない
Windows Server 2003, Enterprise Edition 中規模〜大規模なエンタープライズ環境をターゲットとするエディション。8プロセッサまでのマルチプロセッサ・システム・サポート、8ノード・クラスタリングなど、エンタープライズ環境におけるミッション・クリティカルなシステム(基幹業務アプリケーション・システムなど)を安全かつ効率的に構築、運用するための機能が提供される
Windows Server 2003, Datacenter Edition エンタープライズ環境における大規模なデータベース・システム、リアルタイム・トランザクション・システム、EAIによるサーバ統合など、最高レベルの信頼性や可用性、拡張性などが求められるシステム向けのエディション
64bit版 Windows Server 2003, Enterprise Edition 64bitプロセッサ搭載システムを用いる大規模エンタープライズ環境向け
64bit版 Windows Server 2003, Datacenter Edition 64bitプロセッサ搭載システムを用いる大規模データセンタ環境向け
Windows Server 2003の製品構成

 これらのうち、Web Edition、Datacenter Editionおよび64bit版については、パッケージ販売はされない。

 Web Editionは、ほかの製品と同列に日本語化を行ったものではなく、英語版をベースとしてMUI(Multilingual User Interface)と呼ばれる多国語対応パッケージを組み合わせたものだ。またこのWeb Editionにはパッケージ版は用意されない。企業向けボリューム・ライセンス・プログラムのSelect、またはISP(Internet Service Provider)などが利用するService Provider License Agreementでのみ提供される。

 Datacenter Editionは、サーバ・ハードウェアを提供するOEMメーカーが製品にプリインストールして販売される。また64bit版は、ボリューム・ライセンス・プログラム経由でのみ提供される。

 Windows Server 2003のライセンス価格体系は、例えばEnterprise Edition(25CAL付き)のパッケージ版は71万9000円、Standard Edition(5CAL付き)は17万6000円である(いずれも推定小売価格)。サーバ・ライセンスの体系や価格などは、Windows 2000 Serverのそれとあまり変わりはないようだ。価格体系や推定小売価格の詳細については、以下のマイクロソフトのWebページを参照されたい。

ユーザー数をベースとする新たなクライアント・アクセス・ライセンスを追加

 ただしクライアント・アクセス・ライセンス(CAL:Client Access License)については、従来から大幅な変更がなされた。

■ユーザー数ベースのCALを新たに追加
 変更点の1つは、サーバを使用するユーザー数を単位とする「ユーザーCAL」が新たに追加されたことである。これにより、1人のユーザーがデスクトップPCだけでなく、ノートPCやPDAなどの多数のコンピュータを所有してサーバにアクセスするような企業では、CALにかかるコストを大幅に低減できるようになる。

 「ユーザーCAL」は、サーバに接続するコンピュータの数をベースとしていた「デバイスCAL」に加えて新たに用意されたオプションである。双方とも、サーバ側のモードは「接続デバイス数または接続ユーザー数モード」を利用する(このモードは、従来は「接続クライアント数モード」と呼ばれていた)。

CALの種類

内容

デバイスCAL CALが割り当てられたクライアント・コンピュータから、社内のすべてのWindowsサーバにアクセスできる。社内に複数のサーバがあり、1台のクライアントから複数のサーバにアクセスするような場合に利用する
ユーザーCAL 今回新たに追加されたオプション。CALが割り当てられたユーザーは、自分が使用する複数のコンピュータから、社内のすべてのWindowsサーバにアクセスできる。1人のユーザーが、デスクトップPCやノートPC、PDAなど複数のコンピュータを利用し、複数のサーバにアクセスするような場合に利用する
 
Windows Server 2003で新たに導入された「ユーザーCAL」
CALが割り当てられたユーザーは、自分が使用する複数のコンピュータから、社内のすべてのWindowsサーバにアクセスできる。1人のユーザーが複数のコンピュータを利用し、複数のサーバにアクセスするような環境で有用である。

 なおこの「ユーザーCAL」は、Windows Server 2003をベースとするサーバにアクセスできることはもちろん、ユーザー単位のCALが提供されていなかったWindows 2000 Serverに対するアクセスにも有効である。複数のサーバを持つ大規模なネットワークで、一部のサーバから順次Windows Server 2003に置き換えていくような場合でも、ユーザーCALを持つユーザーは、自分が所有する複数のコンピュータから、社内のすべてのWindows 2000 ServerおよびWindows Server 2003サーバにアクセスできる。

 このほか、従来同様、同時使用するログオン・セッションの数をベースとする同時使用ユーザー単位のCALも利用可能だ(サーバは「同時使用ユーザー数モード」を選択する)。複数のユーザーが1台のWindowsサーバを共有するような小規模な企業ではこちらが一般的だろう。

■社外ユーザー向けのCALを追加
 従来のWindows Server 2000では、不特定多数の顧客が社内のWindowsサーバにアクセスできるように、実質的に無制限のクライアント・アクセスを提供する「インターネット・コネクタ・ライセンス」が用意されていた。しかしこのライセンスは高価で、かつビジネス・パートナーや特定の外部ユーザーといった、限定的なインターネット・アクセス用途には適用できなかった。インターネット・コネクタ・ライセンスでは、インターネットの普及によって多様化したネットワーク形態に対応できなくなっていた。

 このためWindows Server 2003では、インターネット・コネクタ・ライセンスが廃止され、以下の2つの新しいオプションが提供されるようになった。1つは、外部からアクセスするユーザーが特定のパートナーなど限定できる場合で、この場合は、それらの外部ユーザーごとにCALを購入できる。これは、社内クライアント向けのCALを社外向けにも拡大したものだ。

 一方、不特定多数の外部ユーザーがWindows Server 2003サーバにアクセスできるようにするには、サーバごとに「エクスターナル・コネクタ・ライセンス」と呼ばれる新しいライセンスを購入する。この場合、無制限の外部ユーザーがサーバにアクセスし、Windowsサーバの認証を受けた上でサーバの資源を利用できる。これによりWebサーバへの匿名アクセスばかりでなく、認証を前提とした業務アプリケーションなども利用できるようなるわけだ。

■ターミナル・サービスCAL
 ターミナル・サービスとは、リモートからWindowsサーバに接続し、あたかもローカルのデスクトップと同様にして利用可能にする機能である。Windows 2000 Serverから標準で提供されるようになった。

 基本的な原則では、ターミナル・サービスにアクセスするには、通常のCALとは別にターミナル・サービス用のCAL(以下TS CAL)が必要である。ただしマイクロソフトは、Windows 2000 Serverの発売にあたり、Windows 2000 ProfessionalユーザーにTS CAL不要でWindows 2000 Serverのターミナル・サービスにアクセスできる権利を与えた。これは次のWindows XP Professionalでも継承されたため、実質的にWindows 2000 ProfessionalユーザーとWindows XP Professionalユーザーは、別途TS CALを購入しなくても、Windows 2000 Serverのターミナル・サービスにアクセスできるようになっていた。

 しかし基本的にWindows Server 2003のターミナル・サービスにアクセスするには、原則どおりクライアントごとにTS CALが必要になる。従って企業によっては、ターミナル・サーバをWindows 2000 ServerからWindows Server 2003にアップグレードすると、サーバ・ライセンスだけでなく、多大なTS CALコストが発生する可能性がある。

 これに対しマイクロソフトは、大きな負担を発生することなく、Windows Server 2003のターミナル・サービスに移行できるようにするため、TS CALの移行に関する支援プログラム(無料のTS CAL)を提供する。

 具体的には、Windows Server 2003が正式発表された2003年4月24日時点で、正規のWindows XP Professionalライセンスを所有するユーザーを対象に、無償でWindows Server 2003 TS CALの権利を提供するというものだ。このとき、ボリューム・ライセンスや、一定期間にわたり最新のソフトウェアを利用可能にするソフトウェア・アシュアランス(SA)を利用している企業ユーザーは、以後のアップグレード権を含むWindows Server 2003 TS CALを取得できる。一方、パッケージ版などを購入したWindows XP Professionalユーザーは、以後のアップグレード権を含まないWindows Server 2003 TS CALを取得できる。

 これらTS CALに関する詳細については、マイクロソフトの以下のページを参照されたい。

 

 INDEX
  [特集] Windows Server 2003完全ガイド
  1.Windows Server 2003オーバービュー(1/2)
    2.Windows Server 2003オーバービュー(2/2)
    3.新機能/改良機能一覧(1)
    4.新機能/改良機能一覧(2)
    5.新機能/改良機能一覧(3)
    6.新機能/改良機能一覧(4)
 
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