検証
ネットワーク管理者のためのNapster入門

2.Napsterを使う

井口圭一/デジタルアドバンテージ
2000/07/22

Napsterの起動

 Napsterのインストールを終えると、[スタート]メニューの直下にNapsterの起動用アイコンが登録され、また[スタート]−[プログラム]に[Napster]というメニュー(デフォルト時)が追加される。

 Napsterを起動すると、最初にシステムの状態(ローカルの通信ポートなど)やコミュニティに対して共有する(公開する)音楽ファイルの情報などが走査され、その後インターネット上にあるNapsterのサーバに接続される(Windows 2000のMS-IME 2000とNapsterの相性問題については前出のコラムを参照)。サーバに接続したら、インストール時に登録(指定)したユーザーIDとパスワードにより、ユーザー認証が行われ(ハードディスクに記録された情報が使われるので、ユーザーが明示的にこれらの情報を入力する必要はない)、先に走査された音楽ファイル情報がサーバ側に送信される。これにより、コミュニティにいる他のNapsterユーザーは、それらの音楽ファイルを検索し、ダウンロードできるようになる。この際に使用されるNapsterのサーバは1つではなく、複数のサーバを使って負荷分散を行っており、どのサーバに接続されるかは分からない(これらNapsterにおける通信メカニズムの詳細については後半にご紹介する)。

 Napsterが起動すると、次のようなウィンドウが表示される。

Napsterの起動画面
Napsterを起動すると、[Home]というボタンが押された状態で、その内容が表示されている。Windowsのインターフェイスでは、このような場合はタブを使用するのだが、Napsterではボタンと下のペインが連動して切り替わる形式になっている(Windows以外のOSを意識したからだろうか?)。
  インターネット上のNapsterのホームページが表示される。
  Napsterコミュニティにいる他のユーザーとチャットを行う。
  自分が保有している音楽ファイル(ライブラリ)を一覧したり、それらを再生したりできる。
  現在のNapsterコミュニティに存在する音楽ファイルを検索する。
  特定のユーザーをHot Listに登録し、そのユーザーが共有(公開)しているファイルを一覧表示する。
  ファイル転送(ダウンロード/アップロード)の状況を確認する。[Search]などでファイルを検索し、ダウンロードを指示すると、転送が開始され、その状況が表示される。
  Napsterコミュニティを音楽活動の場としているミュージシャンの情報などが表示される。
  Napsterの利用法、FAQなどが表示される。
  現在のNapsterコミュニティの規模。この例では、現在Napsterコミュニティに4990のライブラリ(ファイルを公開しているユーザー)があり、ファイル数は54万8153で、データサイズの総計は2233Gbytes(約2Tbytes)ということを表している。

 画面の上部に並んでいるボタン([Home]、[Chat]など)は、一般的なWindowsアプリケーションではタブに相当するもので、これらのボタンをクリックすることで、それに連動して下の画面が切り替わるようになっている。

 ウィンドウの下部にあるステータス バーには、現在のNapsterコミュニティの規模が表示されている(画面の)。この例(「Currently 548,153 files (2,233 gigabytes) available in 4,990 libraries」)では、Napsterコミュニティで音楽ファイルを公開しているライブラリ(ファイルを公開しているユーザー)が4990あり、公開されているファイルの総数は54万8153個、データ総量は2233Gbytes(約2Tbytes)である。Napsterコミュニティは、接続を切断するユーザーがあれば、新たに接続するユーザーもあるので、これらの数値は使用中常に変動する。

 またNapsterを起動すると、上記のウィンドウが表示されると同時に、タスクバーのインジケータ領域(システム トレイ領域)に、Napsterのアイコンが表示される。

タスク バーのインジケータ領域に表示されたNapsterアイコン
Napsterを起動すると、ウィンドウが表示されると同時に、インジケータ領域(システム トレイ領域)にアイコンが表示される。
  インジケータ領域に表示されたNapsterアイコン。Napsterウィンドウを閉じても、このアイコンが表示されている状態では、Napsterはバックグラウンドで動いているので注意すること。

 Napsterのウィンドウを閉じても、このインジケータ アイコンが表示されているうちは、バックグラウンドでNapsterが動いている(公開中のファイルを他のユーザーが取り出せる)ので注意が必要である。Napsterを完全に終了するには、このインジケータ アイコンをマウスの右ボタンでクリックして、表示されるショートカット メニューの[Exit]を実行しなければならない。

[Library]ボタン

 [Library]ボタンをクリックすると、次のように、自分のライブラリ(自分が所有している音楽ファイル一覧)が表示される。またここでは、NapsterのビルトインMP3プレイヤー(またはMedia Playerなどの外部プレイヤー)を利用して、音楽ファイルを再生することができる。複数のファイルを指定して、それらを順に(ランダムに)再生する簡単なジュークボックス機能も備えている。

[Library]ボタンをクリックしたところ
[Library]では、自分が所有するライブラリの内容を一覧表示し、NapsterのビルトインMP3プレイヤーを利用してこれらを再生できる。複数のファイルを指定して、それらを順に(ランダムに)再生する簡単なジュークボックス機能も備えている。
  ライブラリに保存されている音楽ファイル一覧。ここではテスト用のファイル名を指定したが、通常は曲名とアーティストなどの文字列がここに表示されることになる。
  ファイルのデータサイズ(バイト単位)。
  音楽ファイルのビットレート。MP3エンコード時に指定されたもの。
  音楽ファイルの周波数。通常は音楽CDクオリティの44100Hz=44.1KHz。
  音楽ファイルの演奏時間。
  Napsterに組み込まれているビルトインMP3プレイヤー。
  指定したファイルを連続して(ランダムに)再生するためのジュークボックス。

 詳しくは以下で説明するが、Napsterコミュニティから音楽ファイルをダウンロードすると、そのファイルがこのライブラリに追加されていく。ファイルの検索やダウンロードなどの処理は、プレイヤーでの音楽再生と同時に行えるので、ここでジュークボックスなどに聞きたい曲を指定しておき、好きな音楽を聞きながらNapsterによる音楽ファイル検索やダウンロードを行えるわけだ。

[Search]ボタン

 音楽ファイルを検索するには、[Search]ボタンをクリックする。

[Search]ボタンをクリックしたところ
現在のNapsterコミュニティから目的の音楽ファイルを検索するには、この[Search]ボタンをクリックする。検索では、曲名やアーティスト名のほか、データのビットレートや相手の接続速度などで検索結果を絞り込むこともできる。
  検索したいアーティスト名(Artist)および曲名(Title)をここに指定する。入力は別々のエディット コントロールで行うが、実際には、曲名とアーティスト名の双方を含むMP3データのファイル名から検索されるので、どちらのコントロールを使っても違いはない。
  検索結果の最大表示数。多数の曲が検索にヒットしたときでも、ここで指定された数だけが表示される。
  検索処理を開始する。
  検索条件の指定。音楽ファイルのビットレート(Bitrate)や相手の接続方法(Connection)、Ping時間(Ping time、実際の相手の接続速度)などから検索結果を絞り込むことができる。
  検索された音楽ファイル一覧。上で指定した条件に合致した音楽ファイルがここに一覧表示される。
  相手の接続方法。そのファイルを公開しているユーザーの接続速度。ただしここでの表示はユーザーの自己申告なので、ユーザーが本当にその方法で接続しているかどうかは定かでない。
  Ping時間。自分からそのユーザーまでのPingの応答時間と思われる。この数値が小さいほど、相手が高速な回線で接続されている可能性が高い。ただしN/A(計測不可)と表示されるユーザーも多い。
  音楽ファイルをダウンロードするには、の検索結果一覧から目的のデータを選択し(複数選択可能)、このボタンをクリックする。
  あるユーザーが共有している音楽ファイルをすべて一覧表示したければ、上の一覧からそのユーザーが公開している音楽ファイルを選択して、このボタンをクリックする。→

 音楽ファイルを検索するには、画面の右上にある[Artist]または[Title]エディットコントロールにアーティスト名の一部、またはタイトルの一部を入力して検索を実行する。ただし実際の検索処理は、ファイルを公開しているユーザーが音楽ファイルに付けたファイル名の文字列が対象になるので、[Artist]と[Title]を区別する必要はない(たとえば[Artist]に曲名の一部を入力しても、音楽ファイルを検索することは可能)。音楽ファイルのファイル名は、それを作成したユーザー(つまりNapsterコミュニティでそのファイルを公開しているユーザー)が自由に付けられるので、ファイル名の命名規則はまちまちであるし、さらに言えば、正しい曲名/アーティスト名が付けられているという保証はない。とはいえ、そのユーザー本人も、ファイル名を頼りに音楽ファイルを管理しているだろうから、大筋においては正しいものと考えてよいようだ。ただし、英語表記と漢字表記は混在している。

 必要なら、音楽ファイルのクオリティ(ビットレート)や、そのファイルを公開している相手の接続方法(T1、DSLケーブルISDN、モデムなど)、Ping時間(相手先との実質的な通信速度)によって検索対象を絞り込むことができる。低速なモデムなどでインターネットに接続しているユーザーからファイルをダウンロードすると、ダウンロードに時間がかかることはもとより、相手にも迷惑をかけることになるので、できればxDSLやケーブル モデムなどの高速な通信手段でインターネットと接続している相手を探すのが望ましい。ただし接続方法(画面の[Connection])は、相手ユーザーが自己申告しているものなので、相手が本当にその方法で接続しているという保証はない。

 Ping時間は、自マシンと相手の間でのPingの応答時間を表している。つまり、この値が小さければ小さいほど、自分と相手は高速に通信できる可能性が高い。しかし画面からも分かるとおり、Ping時間を計測できない相手(N/A:Not Applicable)も少なくない(本当に応答がないか、応答に1秒以上かかっている場合にN/Aと表示されるようだ)。なお、Ping時間を計測するために、一時的に大量のpingパケットが送信されることになるが、ネットワーク トラフィック上これを避けたい場合は、[Ping search results]チェックボックスをオフにする。またファイアウォールでpingパケット(ICMPパケット)が禁止されている場合は、すべてN/Aになるので、やはりチェックボックスをオフにしておくとよいだろう。

 曲名やアーティスト名を指定し、絞り込み条件を指定したら、[Find it!]ボタンをクリックする。画面では、試しに「chopin」(ショパン)を指定してみた。その結果が画面ので、検索に合致したファイルが47個見つかった。

 音楽ファイルをダウンロードするには、一覧から目的のファイルを選択し(複数選択可能)、下の[Get Selected Songs]ボタンをクリックすれば、ダウンロードが開始される。ダウンロードの状況については、[Transfer]ボタンをクリックすれば確認できる(後述)。

 検索結果一覧から、今述べたように直接音楽ファイルのダウンロードを開始してもよいが、さらに別の方法もある。それは、検索結果一覧から、これはと思うユーザーの行を選択して、画面下の[Add Selected User to Hot List]ボタンをクリックするのだ。

[Hot List]ボタン

 検索結果の一覧から、適当な行を選択して[Add Selected User to Hot List]ボタンをクリックすると、そのユーザーがHot Listに追加され、画面が[Hot List]を押した状態に変化する。

[Hot List]が表示されたところ
Hot Listとは、あるユーザーが公開しているすべてのファイルを一覧できるようにする機能だ。[Search]で、これはと思うユーザーを見つけたら、そのユーザーをHot Listに追加する。するとこのように、そのユーザーが公開しているすべての音楽ファイルが一覧表示される。
  Hot Listに追加さているユーザーのうち、現在オンラインの状態にあるユーザーがこちら側に一覧表示される。ここで適当なユーザーを選択すると、そのユーザーが公開しているすべての音楽ファイルが右のペインに表示される。
  Hot Listに追加されているユーザーのうち、現在オンラインではないユーザーはここに一覧表示される。
 

のユーザーが公開しているファイル一覧。このユーザーは122個のファイルを公開していた。

  上の一覧から適当な項目を選択し(複数選択可能)、このボタンをクリックすることでダウンロード処理が開始される。→

 Hot Listとは、あるユーザーがNapsterコミュニティに公開しているすべてのファイルを一覧表示する機能だ。自分が探している曲を公開しているユーザーは、好きな音楽の傾向が自分と似ている可能性が高い。またインターネットに高速に接続している相手を見つければ、効率よく音楽ファイルをダウンロードすることができる。このような目的を満たしてくれるのが[Hot List]の機能である。[Search]で検索した結果、気になるユーザーがいるなら、その人を[Hot List]に追加して、そのユーザーが公開している全ファイルを一覧し、そこから好みの曲を選択してダウンロードすればよい。

 なお画面にあるとおり、Hot Listに追加したユーザーでも、現在自分が使っているNapsterサーバに接続していないユーザーは、[Offline]側に一覧され、選択できない。ただしここでいう[Offline]は、そのユーザーがインターネットに接続していないという意味ではない。Napsterでは、負荷分散のために複数のサーバを運営しており、たとえ相手が現在Napsterを使っていても、自分とは異なるサーバに接続しているときには、[Offline]側に表示される。このあたりの詳細については、Napsterのしくみを解説した後編をお読みいただきたい。

[Transfer]ボタン

 [Search]または[Hot List]で音楽ファイルを選択して、ダウンロード開始を指示すると、それらの情報がこの[Transfer]に表示される。

[Transfer]が表示されたところ
Napsterコミュニティにいる相手から自分側への音楽ファイルのダウンロード(上側)、または逆に、自分側からNapsterコミュニティにいる相手への音楽ファイルの提供の状況(下側)をモニタするのがこの[Transfer]である。
  ファイルの全体サイズと、すでにダウンロード済みのサイズ。ダウンロードが進むと、「ダウンロード済みサイズ」の値が大きくなっていく。
  現在のステータス。「Downloading」は現在ダウンロードしている最中のものを表す。
  相手先または自分から転送を中断したものを表す。
  ダウンロードに向けて待機しているものを表す。
  相手の接続方法。自己申告なので、正しいかどうかは分からない。
  ダウンロードの進捗状況(パーセント表示)。このインジケータが100%になればダウンロード完了。
  ダウンロードの転送レート(Kbits/sec)。通信状態によって、この値は刻々と変化する。
  ダウンロードが完了するまでの推定時間。
  Napsterコミュニティの誰かが、自分の音楽ファイルをダウンロードしているときには、その状況がここに表示される。
  現在処理中の同時ダウンロード数。この例では、2つのファイルが同時にダウンロードされていることが分かる。
  現在処理中の同時アップロード数。

 すでに述べたとおり、Napsterはファイル交換を前提とするコミュニティであるから、相手から音楽ファイルをもらう(ダウンロードする)こともあれば、自分が持っている音楽ファイルを相手に提供する(アップロードする)こともある。これらの現在の状況をモニタするのが[Transfer]である。

 相手先から自分への音楽ファイルのダウンロードが完了すると、その音楽ファイルは[Library]に追加されると同時に、そのまま共有の対象になる(つまり、他のユーザーがこのファイルを持っていくことができるようになる)。

 上の画面では、同時に2つのファイルのダウンロードを実行している。最大同時ダウンロード数は、デフォルトでは「3」に設定されており、多数のファイルのダウンロードを指定しても、実際にダウンロード処理が開始されるのは始めの3つまでで、以後はそのうちいずれかのダウンロードが完了したら、順次ダウンロードされるようになる。したがって常時接続環境などでは、大量のファイルのダウンロードを指定しておけば、同時にダウンロード処理が開始されるのは3つまでで、残りは放っておけば順次ダウンロードされることになる。ネットワークのトラッフィクという観点から見れば、このように無人で、大量の重いダウンロード処理を、ごく簡単に仕掛けられるところにNapsterの問題がある。

 [Hot List]などで、あるユーザーが持っている音楽ファイルをまとめてダウンロードするような場合、同時に2つも3つもダウンロードしたのでは相手に迷惑がかかる。このような場合には、Napsterの設定によって、最大同時ダウンロード数を変更することも可能だ。たとえばこの値を「1」にすれば、常に1つのファイルしかダウンロードしないようになる。もちろんこれとは逆に、最大同時ダウンロード数をデフォルトの「3」以上に変更することも可能だ。

Napsterの設定ダイアログ−[Downloading]タブ
ここでは、相手先から自分へのファイルのダウンロードに関する設定を行う。具体的には、ダウンロードしたファイルの保存先フォルダや、最大同時ダウンロード ファイル数などを指定可能。
  ダウンロードしたファイルの保存先フォルダを指定する。
  最大同時ダウンロード数を指定する。デフォルトは「3」になっている。
  途中でダウンロードに失敗したファイルを自動的に削除するかどうかを指定する。
  転送が完了したときに[Transfer]での表示から消去するかどうかを指定する。

 設定ダイアログの[Sharing]タブでは、[Downloading]とは逆に、自分からNapsterコミュニティの誰かにファイルを提供する際の設定を行える。

Napsterの設定ダイアログ−[Sharing]タブ
ここでは、自分からNapsterコミュニティの誰かに音楽ファイルを提供する場合の設定を行う。
  Napsterコミュニティに公開する音楽ファイルが含まれたフォルダを指定する。
  最大同時アップロード数を指定する。デフォルトは「3」になっている。この値を「0」にすると、誰にもファイルは提供しないということになる。
  ファイルを提供する場合に使用する、TCPの待ち受けポート番号。ファイアウォールの内側にいる場合は0にする(セットアップ時に自動的に設定される)。
  ローカルディスクに存在するMP3ファイル、Windows Media Audioファイルを検索し、それらを公開対象とする。

 ここで注目すべきは、画面の[Maximum simultaneous uploads per user]の設定である。これは最大同時アップロード数の指定で、デフォルトの値は「3」になっている。つまり、どんなにたくさんのユーザーがファイルを取りに来ても、同時にダウンロードできるのは最初の3人までということだ(以後、誰かのダウンロードが完了したら、次の人がダウンロードできるようになる)。ところでこの値を「0」にすると、同時アップロードは「0」となり、アップロード不可、つまりNapsterコミュニティの誰も、自分のファイルを持ち出せなくなる。相互扶助的な思想を持ったコミュニティという意味では反則行為だが、このような設定を行っているユーザーも少なくないのではと感じる(この設定を行おうとすると、ファイルの提供が不可になる旨の確認ダイアログが表示される)。

  関連リンク
  音楽業界を震撼させるNapsterの可能性(@IT IT Business Review)
  Napster社のホームページ(米Napster社)
     

 INDEX

  [検証]ネットワーク管理者のためのNapster入門
    1.Napsterとは何か?
  2.Napsterを使う
    3.Napsterの通信メカニズム
 
 検証


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