Windows HotFix Briefings

緊急セキュリティ情報
IEのクロスドメイン・セキュリティの脆弱性により、攻撃者の任意のプログラム実行を許容する危険性(MS04-004)

DA Lab Windowsセキュリティ
2004/02/05

HotFix Briefingsでは、Windows環境で発見されたセキュリティ・ホールと、その修正プログラムについてレポートします。
 
MS04-004
IEのクロスドメイン・セキュリティの脆弱性により、攻撃者の任意のプログラム実行を許容する危険性

最大深刻度 緊急
報告日 2004/02/03
MS Security# MS04-004
MSKB# 832894
対象環境 IE 5.01 SP2、SP3、SP4
IE 5.5 SP2
IE 6 SP未適用、SP1
IE 6 for Windows Server 2003

脆弱性の概要と影響度

 2004年2月3日、マイクロソフトは、Windowsの標準Webブラウザ・コンポーネントであるInternet Explorer(以下IE)に脆弱性(セキュリティ・ホール)が存在することを明らかにした。これが悪用されると、攻撃者によって任意のプログラムがリモートから送り込まれ、コンピュータ上で実行されてしまう危険などがあるため、この問題を解消する修正プログラムの提供を開始した。

 最も緊急度が高いのは、前出のリモート・コード実行の脆弱性だが、今回提供された修正プログラムを適用すると、これに加え2つの脆弱性が解消される。詳細は次のとおり。

■クロスドメイン・セキュリティ・モデルに関連する脆弱性(最大深刻度=緊急)
 IEでは、複数のウィンドウに同一Webサイトからの複数のコンテンツを同時に表示し、これらを協調させることができる。しかしこの仕組みを使って異なるWebサイトのコンテンツが干渉しあうとセキュリティ的に問題が生じるので、IEは「ドメイン」と呼ばれる概念によってアクセスするWebサイトを管理している。これがIEのクロスドメイン・セキュリティ・モデルである。

 今回の発表によれば、IEのアクセス履歴を管理する部分に脆弱性があり、攻撃者が用意した特別なURLにより、本来はセキュリティ・ゾーンの設定に従って制御されるべきアクセスに対し、セキュリティ・チェックを無視させることが可能になるという。これを悪用すれば、攻撃者はリモートから任意のプログラム・コードをコンピュータに送り込み、ユーザーの実行権限で実行させることが可能になる。コンピュータ・ワームなどに悪用される危険がある緊急度の高い脆弱性である。

■ドラッグ・アンド・ドロップ・イベント処理の脆弱性(最大深刻度=重要)
 IEのドラッグ・アンド・ドロップのイベント処理に脆弱性があり、これを悪用すると、攻撃者が用意したリンクをユーザーにクリックさせることで、任意のファイルをユーザーのコンピュータに送り込めるようになる。ただしこの脆弱性だけでは、ファイルを送り込むのみで、自動的に実行させることはできない。この脆弱性を悪用するには、特別な細工を施したWebページ上のリンクをユーザーにクリックさせるか、リンクを含むメールをユーザーに送信し、ユーザー自身にリンクをクリックさせる必要がある。

■不適切なURLの正規化に関連する脆弱性(最大深刻度=重要)
 IEにおけるURLの解析処理部分に脆弱性があり、アドレス・バーへの表記とは異なるサイトにアクセスさせることが可能である。これを悪用すると、アドレス・バーとは異なる偽装サイトにユーザーをアクセスさせ、そこで不正な情報を提供したり、ユーザーからの情報入力を促したりできるようになる。これにより例えば、アドレス・バーには「www.d-advantage.com」と表示させておきながら、実際には「www.atmarkit.co.jp」サイトにアクセスさせるなどができる。

 ベーシック認証を実施しているWebサイトへのアクセスにおいて、URLにユーザー/パスワード情報を組み込むことで、認証ダイアログの入力処理を省略することができる(URLに「username:password@」を含める)。今回のIEの脆弱性は、この場合のURLを正しく解析できないことに起因するものだ。修正プログラムを適用すると、上記ベーシック認証用の情報(「username:password@」)を含むURLは扱えなくなる。

 従って修正プログラム適用によって脆弱性は解消されるが、この方法でダイアログを表示することなく、ベーシック認証のあるWebページを表示する方式をとっているサイトでは、設計変更が必要になる可能性があるので注意が必要である。

対象プラットフォーム

 今回報告されたセキュリティ・ホールの影響を受ける環境は以下のとおり。マイクロソフトから公開された修正プログラムを適用するには、以下の「対象プラットフォーム」に示したService Packの適用が必要である。

影響を受けるソフトウェア 対象プラットフォーム
Internet Explorer 5.01 SP2 Windows 2000 SP2+IE 5.01 SP2
Internet Explorer 5.01 SP3 Windows 2000 SP3+IE 5.01 SP3
Internet Explorer 5.01 SP4 Windows 2000 SP4+IE 5.01 SP4
Internet Explorer 5.5 Windows 98/98SE/Me+IE 5.5 SP2
Internet Explorer 6 Windows XP SP未適用+IE 6
Internet Explorer 6 SP1 Windows 98/98SE/Me/NT 4.0 SP6a/2000 SP2/2000 SP3/2000 SP4/XP SP未適用/XP SP1/XP SP1a+IE 6 SP1
Internet Explorer 6 for Windows Server 2003 Windows Server 2003+IE 6
影響を受けるIEのバージョンと対象プラットフォーム

適用に関する注意点

■HTMLヘルプ・コントロールのインストール
 サポート技術情報811630で提供されたHTMLヘルプ用の修正が適用されていない環境に今回の修正プログラムを適用すると、HTMLヘルプ機能が停止する。この場合には、サポート技術情報811630で適用される最新のHTMLヘルプ・コントロールをインストールする必要がある。なお、すでに新しいHTMLヘルプ・コントロールをインストールしている場合は適用は不要だ。

■認証ダイアログの履歴の非表示
 IEでは、ベーシック認証のユーザー名とパスワードを履歴に保存しておき、以後のアクセスではこの履歴のデータを利用して、認証ダイアログをスキップしてアクセスできるようになっている。メモなど残さずに、この履歴まかせにして認証が必要なWebページにアクセスしているユーザーも少なくないだろう。

 しかしマイクロソフトが公開したトラブル・メンテナンス速報によれば、今回提供されたMS04-004の修正プログラムをIE 6 SP1の環境に適用すると、履歴に保存してあるはずのユーザー名/パスワードが利用できなくなるという不具合が発生するという(ユーザー名、パスワードに何も入力されていないダイアログが表示される)。DA Labにおいても、複数の環境で同様の現象が確認された。ただし、Cookieを利用して認証しているサイトではこの問題は生じない。

 DA Labで検証した結果、IE 6 SP1以外の環境においても、同様の不具合が発生することを確認した。検証結果は以下のとおりである。

IE OS 不具合の有無
IE 5.01 SP2 Windows 2000 SP2 あり
IE 5.01 SP3 Windows 2000 SP3 なし
IE 5.01 SP4 Windows 2000 SP4 なし
IE 6 Windows XP SP未適用 なし
IE 6 SP1 Windows NT 4.0 SP6a あり
IE 6 SP1 Windows 2000 SP2 あり
IE 6 SP1 Windows 2000 SP3 あり
IE 6 SP1 Windows 2000 SP4 あり
IE 6 SP1 Windows XP SP未適用 あり
IE 6 SP1 Windows XP SP1 あり
IE 6 SP1 Windows XP SP1a あり
不具合の発生状況

 ただしこれは、ユーザー・アカウント情報の履歴が削除されたわけではなく、履歴にアクセスできなくなっているのが原因のようだ。前記トラブル・メンテナンス速報によれば、次の操作により、アカウント情報の履歴にアクセスできるという。DA Labでも、この方法で情報を取得できることを確認した。

[操作方法]

  1. すべてのIEをいったん閉じる。

  2. IEを起動する(開くページは何でもよい)。

  3. 2.とは別にもう1つIEを起動する。

  4. 2番目に起動したIEで、ベーシック認証が施されたページに接続する。

  5. IEに記憶させていたユーザー名とパスワードが入力された状態のダイアログ・ボックスが表示される。

 なおMS04-004の修正プログラムを適用した後で記憶させたユーザー名とパスワードはこの不具合の影響を受けない。

 
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