技術解説
Windows Server 2003がサポートする.NETとは?

4. .NET Frameworkのメリット

溝端二三雄
2003/06/19

3-3 .NETプラットフォームの中核

 .NET戦略の中核は、.NETプラットフォームであることは間違いありません。では、.NETプラットフォームの中核は何でしょう? もちろん .NETプラットフォームの構成要素すべてが重要ですが、一番衝撃的なのはビルディングブロックサービスの存在ではないでしょうか? マイクロソフトがWindowsだけでアプリケーションを作成、実行、管理することを推奨するのが当たり前だと思っていたのが、.NETではWindowsに限定しなくなったのですから私も大きな衝撃を受けました。衝撃的なこのビルディングブロックサービス(XML Webサービス)を中心に .NETプラットフォームを解説されることが多いのは当然だと思いますが、.NETプラットフォームの中核になるのは .NET Frameworkではないかと私は思います。

 その理由は、私が体験した「生産性の向上」です。本当に数多くの機能と利点を提供する .NETですが、ひと言で表すと

「.NETはアプリケーション開発における生産性の向上を提供する技術」

こう言い切ってしまうくらいのものでした。その生産性の向上を実現するものこそが、.NET FrameworkとVisual Studio .NETです。

 どれだけの生産性が向上するかを想像するのは困難かもしれません。.NETプラットフォームを使用したアプリケーション開発を経験したことがない方や、アプリケーション開発経験自体がない方はそうだと思います。しかし、マイクロソフトがVisual Basic .NETやC#という新しい言語を開発したことを考えると、ある程度想像できます。例えば、Visual Basic .NETはVisual Basic 6.0とは違います。これは、単にバージョンアップしただけではなく、言語仕様そのものが異なるのです。C++とC#においても同様です。簡単に考えると、こんなことは全世界の開発者から受け入れられるはずがありません。なぜなら、それまで身に付けてきたVisual BasicやC++を使用したアプリケーション開発技術が使えなくなる恐れがあるからです。にもかかわらず、マイクロソフトが新しい言語を提供したのは、

「たとえ開発者が新しい言語の習得に時間を費やしたとしても、絶対にそれ以上の開発効率の向上が実現できる自信があったから」

ではないでしょうか。本当のところ、私もこの点は半信半疑でした。そのため、新しい言語を習得することを苦に感じながらも、業務上の必要性があったため、Visual Basic .NETとC#をマスターしました。いや、マスターさせられました。その結果、劇的な生産性の向上を体験することができたのは事実です。

 参考までに追加すると、私が2つの言語をマスターしたからといっても、実は大したことではありません。Visual Basic .NETはVisual Basicと非常によく似ている言語なので、技術の移行にかかる時間は本当に短いものでした。これは、C#がC++やJ++とよく似ていることとも同じです。

 ではその体験例を簡単にご紹介すると、Visual Studio .NETと.NET Frameworkを使用すれば

  • 既存のメソッドをXML Webサービスとして公開するために必要なコードはたった1行です!

 さらに、Webサービスとは何かを理解せずにXML Webサービスを作成したり、利用することは考えられないので、

  • ローカルコンピュータ上のメソッドを呼び出す代わりに、Webサービス(もちろんXML Webサービスでも)を呼び出すために追加するコードは一切ありません!

 XML Webサービスを提供したり、利用するアプリケーションを開発するからといっても、XMLやSOAPに関するプログラミングは不要です。なぜなら、これらはすべて .NET Frameworkが機能を提供するからです。

 このように、.NET Frameworkがかなり多くの処理を行ってくれるため、プログラミングは簡単なものになり、生産性の向上につながるのです。誤解のないように追加しますが、残念ながら、プログラミングが簡単になるからといって開発者が楽になるとは限りません。例えば、.NET Frameworkがどんな機能を提供してくれるかを知る必要があります。しかも、たとえXML Webサービスを楽に開発できる機能を提供することが分ったとしても、Webサービスとは何かを理解せずにXML Webサービスを作成したり、利用することは考えられないので、Webサービスに関する知識が要求されることになるのです。また、今まで単一の業務(販売管理や在庫管理)を効率化するアプリケーションを開発してきたのが、XML Webサービスにより複数のアプリケーションが連携できるので、今まで以上に業務分析、アプリケーション設計が複雑になります。

 しかし、これらアプリケーション開発、設計における複雑さは、アプリケーションの利用者には計り知れないメリットを提供することになります。今まで不可能だと思っていた、または今まで想像もしなかったアプリケーションが実際に体験(エクスペリエンス:XP)できるのです。アプリケーションの開発者は、このユーザーのニーズに応えるために、より複雑で大規模なアプリケーションの開発を迫られるかもしれません。そこで大活躍するのが、可能な限りの簡単さと高い生産性を提供する .NETプラットフォーム(.NET Framework)であり、Visual Studio .NETなのです。

まとめ

 数年後には、Webサービスはもはや当たり前の技術になることでしょう。ユーザーは、既存システムのプラットフォームを考慮することなく、純粋に、できる限り多くのメリットをアプリケーションに要求することになるはずです。これは、アプリケーションを構築する側にとってはこれまで以上に、機能性、信頼性、拡張性のあるアプリケーションを構築しないことにはユーザーの要求に応えられないということです。このために開発期間が長くなるようでは、いくら効果があってもコストが増大することになります。当然、開発生産性の高いソリューションを持っていないと、投資対効果の高いアプリケーションは提供できません。このソリューションに最適なものが .NETプラットフォームであることはお分かりいただけたかと思います。

 また、アプリケーション実行環境に関しては、Windows 2000であっても .NET Frameworkを追加でインストールできるため、Windows Server 2003のメリットがないようにも思えます。しかし、Windows Server 2003で提供される、IIS 6.0との連携によるWebアプリケーションの信頼性の向上や、新しいCOM+サービス、MSMQ Serviceとの連携など、Windows Server 2003ならではの機能もあります。しかし、最もインパクトが大きいのは、パフォーマンスでしょう。ASP.NET Webアプリケーションをテストした結果、「Windows 2000 + .NET Framework」よりも「Windows Server 2003」の方が、約2倍の同時ユーザー数をサポートできたことが報告されています。

 .NETの目的や概要をまとめると、以下のようになります。

  • .NET戦略によってマイクロソフトは、.NETプラットフォームを提供します。
  • .NETプラットフォームは、Windowsだけをターゲットにしているわけではありません。
  • .NETプラットフォームの中核ともいえる、.NET Frameworkによってアプリケーション開発における生産性の向上を実現します。
  • .NET Frameworkを最大限に利用したアプリケーション開発を行うための開発ツールが、Visual Studio .NET 2003です。
  • .NET Frameworkを最大限に利用したアプリケーション実行環境が、Windows Server 2003です。End of Article
Windows Server 2003 Webアプリケーションサーバ構築ガイドブック  
本記事は、@ITハイブックスシリーズ『Windows Server 2003 Webアプリケーションサーバ構築ガイドブック』(インプレス発行)の第3章「.NETとは?」を、許可を得て転載したものです。同書籍に関する詳しい情報については、「@ITハイブックス」サイトでご覧いただけます。
出版社:株式会社インプレス
ISBN:4-8443-1791-1
発行:2003年6月
判型:B5変形
ページ数:272ページ
本体価格:3,800円
 
 

 INDEX
  [技術解説] Windows Server 2003がサポートする.NETとは?
    1..NET戦略の概要
    2..NETプラットフォームとは
    3..NETとWindows Server Systemの関係
  4..NET Frameworkのメリット
 
目次ページへ  「Windows Server Insider @ITハイブックス連携企画」
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