Insider's Eye[解説]Millenniumで何が変わるのか元麻布 春男2000/01/14 |
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今年、西暦2000年にリリースされるMicrosoftのOSといえば、まず思い浮かぶのは2月18日の出荷開始が発表されているWindows 2000だが、実際にはこれだけではない。Windows 98の後継OS(開発コード名「Millennium」)も、2000年内にリリースされることになっている。本サイトをご覧の方は、もちろんWindows 2000のほうにより興味があるかもしれないが、中にはMillenniumが気になっている人もいるだろう。
両OSの使い分けに関するMicrosoftの公式見解は、SOHO、大企業を問わず、あるいはデスクトップPCであるかノートPCであるかを問わず、すべてのビジネスユーザーにはWindows 2000を、そしてすべてのコンシューマー ユーザーにはWinodws 98/Millenniumを推奨するというものだ。とはいえ、現時点で多くのビジネスユーザーがWindows 95を含めたWindows 9xを使っている現状を考えると、そう簡単に割り切れるのか、という気がしなくもない。特に、いったんWindows 9xからWindows 2000に移行してしまうと、再びWindows 9x(Millenniumを含む)に戻すことが、必ずしも容易ではないということを考えればなおさらだ。
はたしてMillenniumは、Windows 2000に飛びつくより、待つべき価値のあるOSなのか。情報の限られている現状で、明確な答を出すことは難しいだろうが、Windows 2000のリリースを前に、Millenniumについて考えてみるのも、あながち無意味なものではないハズだ。
Millenniumにおける変更点
そもそもMillenniumとはどんなOSなのか。どこが現行のWindows 98 Second Editionから変わるのか。実は、こうした基本的な疑問に対する情報ですら、明確なものは意外に少ない。1999年のWinHEC 99で語られたMillenniumの特徴は、デジタルメディアとエンターテインメント機能の充実、ホームネットワーキング、シンプルであること、といったきわめて漠然としたものばかり。OSの具体的な姿を予見するような情報はほとんどない、というのが率直なところだ。
Millenniumの具体的な機能としてWinHEC 99で紹介されたものも、ソフトウェア的に起動不可能な状態に陥ったシステムを回復させるPC Health、ゲームのインストール作業を事実上不要にするWindows GAME Managerといったものである。OSの機能というより、標準添付されるアクセサリ(ユーティリティ)の機能と呼ぶべきものだ。Millenniumがもたらすであろう、OSとしての本質的な部分での変化とは無関係なもばかりと言い換えてもよい。そのうえ最新の情報によると、Windows GAME Managerの開発はどうやらキャンセルされたという。
Millenniumに関して、アクセサリの機能が取り上げられても、OSとしての本質的な機能強化についてほとんど語られることがないのは、おそらくMillenniumがそうした内容を持たないからだろう。MicrosoftはMillenniumの次こそ、コンシューマー向けOSもWindows NTコードベースになる、と言明している(開発コード名「Neptune」)。いわば「打ち止め」のOSであるMillenniumに本質的な改良を行うくらいなら、Neptuneの開発を急ぐべきだ。逆に、今Millenniumで機能を強化すれば、それを継承することになるNeptuneの開発スケジュールはさらに遅れることになってしまう。
つまり、Millenniumで画期的な機能強化は行われるとは思い難いし、行うべきでもない。そういう意味でMillenniumは、Windows 95 OSR5のようなものになるだろう(Windows 98をOSR3、Windows 98 Second EditionをOSR4と数える)。ご存じのとおり、OSR(OEM Service Release)はOEM(主にパソコンベンダ)向けとして、パソコンにプレインストールすることを前提に供給している専用バージョンで、市販のパッケージ版とは内容が異なっている。
では、OSRとしてのMillenniumはどのような変更が加えられるのか。これについても、情報はきわめて限られているものの、1つ面白い記述がある。それは、1999年7月にリリースされたPC2001 System Design GuideのドラフトVer 0.3のChapter 7 "Easy PC Systems"の項だ。残念ながら1999年11月にVer 0.5がリリースされた時点で、このVer 0.3はWebサイトから削除されてしまい、現在新規にダウンロードすることはできない。しかもVer 0.5では、Chapter 7の内容についてはPC System Design Guideとは別個に検討するということで、割愛されており、余計に怪しい雰囲気を醸し出している。
一体Ver 0.3には何と書いてあったのか。そこには、Microsoftが、スーパーI/Oチップ、8042コントローラ(PS/2キーボードおよびマウス)といったレガシー デバイスやMS-DOSをいっさいサポートしない、OEM専用版(OSR)のWindows 98とWindows 2000の開発について検討していること、Windows 98の次のOSRがMillenniumであることが明記されている。つまり、Millenniumで最も本質的な変更は、Windows 9xコードベースから、レガシー サポートのコードを除去し、Easy PC専用に仕立て上げる、ということだと考えられる。
PC2001 System Design Guide Ver 0.3の「Chapter 7 Easy PC Systems」 |
「Easy PC Systems」の章にはMillenniumに関する記述がある。これによれば、レガシーデバイスやMS-DOSをいっさいサポートしないものだと述べれられている。 |
Ver 0.3の時点でMillenniumの特徴として挙げられているのは、以下の表のようなものだ。
PC2001 System Design Guide Ver 0.3時点におけるMillenniumの特徴 |
WindowsにあるスーパーI/Oおよび8042依存コードの除去 |
システム起動時のUSB HID検出(USBキーボードとマウスのネイティブ サポート) |
プリンタ、ストレージ、ブロードバンド モデム、シリアル-USBおよびパラレル-USBマッパを含むUSBデバイス サポートの充実 |
ハイバネーション(HDDへのサスペンド)からの8秒以内の復帰と、サスペンド(RAMへのサスペンド)からの5秒以内の復帰(レガシーを除去する目的の1つは、ハイバネーションやサスペンドに要する時間の短縮にある) |
ACPIによりサポートされるデバイスの拡大 |
問題が発生する前の状況へ復帰させるメカニズムの搭載(前述したPC Healthのようなものと思われる) |
現時点では、このVer 0.3に記述された内容に変更が加えられていると思われるが、方向性まで大きく変わることはないだろう。現在一部で、Millenniumは、Windows 95 OSR2と同じように、OEM専用のリリースとなり、一般には市販されない可能性があるといわれているのは、このような事情からだ。
だが、MillenniumをOEM専用にしてしまうと、OSR2のような「混乱」が生じる可能性がある(OSR2では、同じWindows 95という名称のOSでありながら、USBデバイスのサポートなどの大きな機能が追加が行われたうえ、ユーザーによるアップグレードができなかったため、周辺機器メーカーのサポートなどに混乱が生じた)。そこで、PC HealthやWindows GAME Managerといった「おまけ」で何とか新味を出し、市販版も用意したいというのが当初の予定だったと思われる。だが、本質的でない改良は、何かと批判を浴びることが多い。Windows GAME Managerのキャンセルもあり、市販版を用意するという路線が後退しているのが現状だろう(もちろん、市販版が用意されるとしたら、こちらではレガーがサポートされるハズだ)。
Millenniumは市販されるにしても、市販されないにしても、現行のWinodws 98に対して本質的な機能強化は図られないハズだ。そういう意味ではWindows 2000への移行を真剣に考えるユーザーはあまり気にする必要はない。Windows 2000よりMillenniumが優先される(先にサポートされる)機能としては、USB 2.0が予定されているが、これはシステムの拡張という点でEasy PCのほうが、USBへの依存度が高いことと無縁ではないだろう(Windows NTよりWindows 9xの方が、実験向きという事情もあるだろうが)。
*おまけ
Millenniumの「おまけ」ということで、筆者の気になっているのがUDF Writeだ。言うまでもなくUDFは、CD-R/RWのパケットライトに用いられるフォーマットであり、Windows 98では読み出し用のドライバのみがサポートされている。今のところ書き込みには、サードパーティ製のライティングソフトが不可欠だ。しかし、ひょっとしたらMillenniumではUDF Writeがサポートされるかもしれない。
話の発端は、昨年(1999年)の秋、筆者がIntel(Microsoftと並ぶEasy PCのもう一方の主役である)のPat Gelsinger副社長に質問する機会を得たことにある(別に単独インタビューというわけではない。念のため)。Easy PCでは多くの場合、システムはフロッピードライブを持たない。しかも、IntelはZipやSuperDiskといった100Mbytes級のリムーバブルデバイスにあまり興味がなく、ユーザーが書き込み可能なリムーバブルストレージの本命としてCD-RWを考えているフシがある(少なくとも筆者にはそう思える)。だが、書き込みにサードパーティ製のソフトウェアが必要なデバイス(CD-RW)が、はたして標準デバイスになり得るだろうか。率直にこの点について質問したところ、Gelsinger副社長は少し考えて、「その問題は来年(2000年)解消するかもしれない」と答えたのである。
「Insider's Eye」 |
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