Insider's Eye
SharePoint製品の次期リリースが来年登場

―― Web技術のスケーラビリティが向上 ――
Peter Pawlak
2002/08/01
Copyright(C) 2002, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

 
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2002年7月15日号 p.16の同名の記事を許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 Microsoftの企業ポータル構築/運用製品「SharePoint Portal Server(SPS)」とチームWebサイト構築/運用製品「SharePoint Team Services(STS)」の次期リリースは、より緊密に統合され、高度なWebコンテンツ利用を支えるWebパーツ技術のスケーラビリティを向上させる。出荷は2003年半ばに予定されている。

 企業ポータルはモジュール型のカスタマイズ可能なWebサイトであり、企業内の多様な情報にユーザーが効率的にアクセスするための単一の出発点を提供する。この2つの新製品は、企業ポータル市場でのMicrosoftの地位を大きく押し上げる可能性がある。だが、両製品を利用するには、今後出荷されるWindows .NET Serverが必要となる。企業は既存ポータルの運用基盤を新しい技術に転換するのに苦労するかもしれない。

 一方、MicrosoftはSPSの現行リリースの新しいライセンス方式を明らかにした。SPSは新方式により、エクストラネットを通じて顧客やパートナー向けに企業ポータルを運営する際に、より有効活用できるようになる。

.NET技術を基にWebパーツ技術が一新

 Microsoftのポータル/コラボレーション戦略では、既存のWebパーツ技術の改良版が中核を担う。Webパーツはモジュール型のWebページコンポーネントで、特定のアプリケーション(ERPシステムのレポートなど)から提供される情報や、コンテンツソース(ニュース配信サイトやドキュメント・リポジトリなど)から提供される情報を表示する機能を持つ。企業はWebパーツを利用することで、カスタマイズ性の高いポータルを迅速に構築できる。Webパーツはモジュール性を備えているため、コーディングをほとんどあるいは一切行わずに簡単に組み立てられるからだ。また、企業はサードパーティから広範に提供される作成済みのWebパーツを選んで利用できる。こうしたサードパーティのWebパーツでは、SAPやSiebelなどの広く普及した業務アプリケーションの大半が連携対象としてサポートされている。

 新しいWebパーツ技術では、MicrosoftのASP.NET Webサーバと .NET開発プラットフォームが使用される。ASP.NETは、SPS 2001のWebパーツで使われる従来のASP(Active Server Pages)技術を上回る利点を数多く持っている。中でも、ASP.NETによってWebパーツの処理速度、セキュリティ、開発の容易さが向上する(ASP.NETについての詳細は、Directions on Microsoft日本語版2002年3月15日号、5月15日号の「 .NET開発プラットフォームのすべて」参照)。

 だが、従来のASP技術に基づく現在の多くのWebパーツは、ASP.NET上では機能しない。ASP.NETはWebパーツの作成に現在使われているプログラミング言語(Visual Basic Scripting Editionなど)をサポートしていないためだ。ASP.NETとASPは同一サーバ上で並行して動作させることができるが、SPSの次期リリースは、ASP.NETベースのWebパーツのみを使用する。Microsoftは、既存のWebパーツのASP.NETへの移行は 比較的簡単なケースもあるが、完全な書き直しが必要なケースもあり得るとしている。Webパーツを販売するISV(独立系ソフトウェアベンダー)は、従来のWebパーツ技術投資の回収期間を慎重に検討するとともに、自社のWebパーツの新しい技術への移行計画を立て始める必要がある。

 また、新しいWebパーツ技術を使用するには、Windows .NET Serverが必要になる。企業はこの点にも注意すべきだ。ASP.NETはWindows 2000 Serverに導入して実行できるが、Microsoftは新しいASP.NETベースのWebパーツ技術をWindows 2000に対応させることは計画していない。

パーソナライズ機能と拡張性が向上するSPS

 2003年半ばに出荷されるSPSの次期リリースは、Windows .NET Serverが必要となり、Windows 2000上では動作しない。次期リリースがASP.NETベースのWebパーツを利用するためだ。

 新しいSPSは現行リリースと同様、ドキュメントを格納するためにWeb Storeデータベースを使用する。だが、情報検索の際に使われるインデックスの格納にはSQL Serverを使用する。SQL Serverの次世代データベースエンジン「Yukon」(開発コード名)のリリース後に投入されるSPSの将来リリースは、SQL Serverを使用してこの両方の機能を提供する見通しだ。

 SPSの次期リリースでは、次のような機能強化も行われる。

■パーソナライズ
 SPSの次期リリースでは、ポータルをユーザーごとにカスタマイズできるようになる。ユーザーは自分のポータルページの一部の要素について表示を変更でき、ポータル管理者はほかの要素を管理する。

■BizTalk Serverとの統合
 SPSのWebパーツは、Microsoftのアプリケーション統合製品「BizTalk Server」を介してバックエンド・アプリケーションと通信できるようになる。これにより、開発者はBizTalk Serverのプロトコル変換、データ形式変更、トランザクション管理といった機能を利用して、より管理しやすい形でWebパーツをアプリケーションに連結できる。また、SPSの次期リリースでは、BizTalkによってSPSのユーザー識別情報をActive Directory以外のディレクトリにマッピングできるようになる。これにより、ポータルユーザーは認証を要求するアプリケーションにシングルサインオンできる。

■スケーラビリティの向上
 SPSの次期リリースでは、ASP.NETとSQL Serverなどのおかげでスケーラビリティと堅牢性が向上する見込みだ。また、2層型のWebサーバ/データベースサーバ・アーキテクチャがサポートされ、Webサーバ層での負荷分散が実現される。だが、Microsoftは、次期リリースがより分散型のアーキテクチャ(Active DirectoryやExchangeが多数のサイトにデータを複製する方式と同様なもの)をサポートするかどうかは明らかにしていない。現行のSPSはいくつかのサーバを使って各種の機能を実行できるが、基本的には単一サイト向けのソリューションだ。このため、インデックス作成が必要なコンテンツや、ドキュメントを検索するユーザーが、SPSの稼働サイトと低速なWAN回線で接続されたサイトに所在する場合は、パフォーマンスに問題が生じることがある。

■Content Management Serverとのより緊密な統合
 Microsoftによると、SPSの次期リリースと、入り組んだWebサイト用の同社の管理ソフト「Content Management Server(CMS)」の将来のリリースは、従来よりも高度な統合が可能になるという。ただ、詳細はまだ発表されていない。

 同社はまた、現行のSPSの弱い部分であるバックアップやリストア、大量ドキュメントの移行といった機能を向上させるかどうかについても明らかにしていない。

SharePoint Team ServicesがWebパーツとドキュメント管理に対応

 新しいASP.NETベースのWebパーツ技術は、SharePoint Team Services(STS)の次期リリースでも使用される。STSはチーム・コラボレーション用Webサイトの構築/運用製品で、チームメンバーが協力してドキュメント作成やディスカッション運営、連絡事項の掲載、調査を行うのを支援する。Webパーツの導入により、非技術系のチームリーダーでも簡単にSTSサイトをカスタマイズできるようになる。次期リリースではチームのニーズに対応したWebパーツセットがバンドルされ、これらを使ってSTSサイトをカスタマイズできる。現行リリースとは異なり、FrontPageを使ってWebページテンプレートをカスタマイズする必要はない。

 Microsoftは新世代のWebパーツの一部に関して、STSとSPSの両方に対応可能かを明らかにしていないが、恐らく対応するとみられる。SPSと同様に、STSの次期リリースを利用するにはWindows .NET Serverが必要となる。

 STSの次期リリースでは、次のような機能強化も行われる。

■SPSへの自動登録
 SPSとSTSは現在も統合可能だが、Microsoftは次期リリースで両者間の統合を強化する計画だ。例えば、新規作成されたSTSサイトが自動的にSPSサーバに登録され、SPSの検索エンジンが新しいSTSサイトを対象にインデックスを作成するようになる(イントラネットでSTSとSPSの現行リリースを統合する方法については、米Microsoftの解説ページを参照)。

■ドキュメント管理
 STSユーザーはチェックイン/チェックアウトやバージョン管理など、SPSと同様のドキュメント管理機能を利用できるようになる。

■在席情報の確認
 STSサイトでチームメンバーの在席情報が確認できるようになる。これはチャットや電話をしようとするときに役立つ機能だ。ただし、STSとMSN MessengerやWindowsのインスタント・メッセージング機能の統合は予定されていない。

SharePoint Portal Server 2001のエクストラネット向けライセンス

 Microsoftは2002年7月から、SPS 2001の新しいライセンスオプションとして「SharePoint Portal Server External Connector for Non-Employees」(SPSの非従業員向け外部コネクタ)を提供する。これまで、企業がSPSを使って顧客や仕入先、その他のパートナー向けのポータルを構築する場合は、各ユーザー用にクライアント・アクセス・ライセンス(CAL)を購入する必要があった。このため、こうしたタイプのポータル向けの用途では、SPSの有用性は非常に限られていた。これに対し、External Connectorはサーバ当たり3万ドルで、CALは不要だ。ただし、このライセンスの下で運用されるポータルを利用できるのは、非従業員に限られる。ここでの「従業員」には、ライセンス取得企業の協力会社または製品/サービスの購入先である請負業者、代理業者、ベンダ、サービスプロバイダー、子会社、関連会社などが含まれる。End of Article

Content Management ServerとSharePointの統合

 
Microsoftは、Content Management Server(CMS)2001で管理されるWebサイトにSharePoint Portal Server(SPS)2001を連携させたいと考える企業に向けて、無料だがサポートのない統合パックを提供している。CMSは、複雑なインターネットまたはイントラネットのWebサイトに対して、コンテンツの発行/管理を行うためのMicrosoft製品だ。ニーズに応じてSPSかCMSをイントラネットサイトの土台に据えることができるが、Microsoftは、両者が相互補完的な役割を果たし、効果的に連携すると考えている。Microsoftの社内イントラネットでは両方が使われており、CMSでメインサイトの運営が行われ、さまざまなSPSポータルへのリンクが提供されている。同社の全社的な検索システムでもSPSが使われている。

 CMSとSPSの統合パックを使えば、企業は両製品を容易に統合できる。具体的には、両製品を用いて次のことが行える。

  • SPSで作成されたドキュメントをCMS Webサイトで発行し、変更分を自動更新する。
  • SPSの検索エンジンでCMS Webサイトのコンテンツに対してインデックスを作成し、SPSユーザーがCMSで発行されたコンテンツを検索できるようにする。
  • CMSの承認プロセスをSPSのWebパーツと統合し、CMSの承認者がSPS内からCMS WebサイトにSPSドキュメントを発行できるようにする。

 統合パックは両製品のセキュリティモデルを結合するため、SPSユーザーは許可されているCMSコンテンツだけを取り出せる。また、SPSコンテンツは、当該の権限を持つCMSの承認者に認められない限り、CMSに発行することはできない。

 統合パックによって可能になるSPSとCMSの利用シナリオの中で特に効果的なものの1つとして、「SPSのドキュメント管理機能とワークフロー機能を使ってドキュメントを社内で作成し、CMSを通じて承認し、CMSで運営されているインターネットサイトに発行する」というものがある。

 統合パックはコード本体とサンプルサイト、ドキュメントで構成されており、以下のWebページからダウンロードできる。

MicrosoftのCMS/SPS統合パックのページ

 
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本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。Directions on Microsoftは、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。

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