Insider's Eye64bit版SQL Serverが挑戦するハイエンド・データベース市場―― 64bit版SQL ServerはUNIXベースのソリューションが支配するハイエンド・データベース市場への重要な足がかりとなる ―― |
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Chris Alliegro 2003/05/14 Copyright(C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc |
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2003年4月15日号 p.28の「64ビットSQL Serverが挑戦するハイエンド・データベース市場」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
SQL Server 2000(64bit版)は、64bit版のWindows Server 2003とIntelの64bitプロセッサ「Itanium 2」による大容量メモリのサポートを利用して、メモリ集約形データベース・アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができる。Microsoftは今回のリリースによって大規模データベース市場に足場を築き、SQL ServerはハイエンドではUNIXベースのソリューションに対し劣勢だという通念を払拭したい考えだ。32bit版のSQL Server向けに開発されたアプリケーションは、64bit版SQL Server上のデータベースにおいても変更なしに利用可能だ。しかしすべてのSQL Serverツールが64bit対応として用意されているわけではないので、64bit版SQL Serverのインスタンスは32bitコンピュータからリモートで管理する必要がある。
64bit版SQL Serverの魅力
64bit版SQL Serverは現在出荷中の32bit版SQL Server 2000から派生したもので、共通のコード・ベースを持っている。SQL Server 2000は、データの格納、管理、検索を担うコア・データベース・エンジンと、これとは別の大規模な多次元データベース(データウェアハウス)の分析とデータ・マイニング用のオンライン分析処理(OLAP)エンジンで構成されている。コア・エンジンを補完するものとして、データベースの管理、運営、クエリーを行うためのツール一式、そしてアプリケーションとデータベースおよびOLAPエンジンとの通信を可能にするデータ・アクセス・ライブラリがある。SQL Server 2000にはさらに、複数のサイトやシステムで同じデータを複製し、同期させるユーティリティも含まれている。
64bit版には、IntelのItanium 2に最適化されたバージョンのコア・データベースとOLAPエンジンが含まれている(32bit版SQL Serverは64bit版と同じコード・ベースを持つものの、64bitマシンは32bit版SQL Serveをサポートしない)。また、MicrosoftはAMDの次期64bitプロセッサ「AMD Opteron」向けのWindowsバージョンを開発中だが、AMD Opteron向け64bit版SQL Serverに関する計画は明らかにしていない。
■広大なメモリ空間が実現する高速アクセスにより、サーバの整理統合を可能に
64bitのデータベース・エンジンに移行することで、SQL Serverは膨大な容量のシステム・メモリへのアクセスが可能になる。64bitプロセッサは理論上、最大180億Gbytes(16Ebytes:エクサ・バイト)のメモリをアドレス指定できる。一方、32bitプロセッサは4Gbytesに限られる。実際には、物理的ハードウェア(1台のマシンに搭載可能なメモリの容量など)と、ハードウェア上で稼働するソフトウェア・システムによって制限されることになる。SQL Server 2000(64bit版)は、リリース時には最大512Gbytesのメモリをサポートする。これはWindows Server 2003, Datacenter Editionがサポートするメモリ容量と同じである。
メモリ上のデータはディスク・ドライブ上のデータよりも数千倍速くアクセスできるので、4Gbytes以上のデータ・セットを処理するデータベース・エンジンは64bitシステムで稼働した場合にパフォーマンスが劇的に向上する。従って、大規模データベース・アプリケーションは64bitプラットフォームにいち早く移行する可能性が高い。具体的には、事業部門別システムのデータ分析およびウェアハウジング・コンポーネントや、大規模で複雑なOLAPデータ・セットを処理するシステムがこれに該当するだろう。
64bit処理は、データ集約型ではない小規模なSQL Serverアプリケーションを管理するIT部門にもメリットをもたらす。これはサーバの整理統合、つまり多数の32bitサーバで稼働するアプリケーションを少数の64bitサーバに移行することで実現する。整理統合によって冗長性は減少し、アプリケーションやハードウェアが故障した場合の影響が拡大する恐れがあるとはいえ、このアプローチはデータセンターのインフラと管理の簡略化を望むIT管理者にとって魅力的なものになりつつある。
■処理性能は同等のUNIXベースの製品を凌駕
Microsoftと同社のパートナーにとって、64bit版SQL ServerのリリースはUNIXベースのソリューションが支配するハイエンド・データベース市場へのさらなる進出の足がかりとなる。
MicrosoftとIntelの64bitプラットフォームで稼働するSQL Serverの処理能力の向上は、最近公開されたTPC-Cベンチマークによって裏付けられている。同テストでは、Itanium 2を32個搭載したサーバで稼働する64bit版SQLが、同等のハードウェアで稼働するUNIXベースのすべてのライバル製品を凌駕した。
従来、MicrosoftはSQL ServerのDistributed Partitioned Viewsをサーバ・クラスタ上で使用してSQL Server 2000で高いパフォーマンスを達成してきた。しかしこの機能をフル活用するには、データベースの再設計とクライアント・アプリケーションの書き直しが必要になる。64bit版SQL Serverを用いたノンクラスタ・システムの今回の成績によれば、Microsoftは困難で多大な出費を招きかねないソフトウェアの再設計を行わなくてもトランザクション性能を向上できる。
また64bit版SQL Server 2000は、Intelの64bitプロセッサ(Itaniumプロセッサ・ファミリ)に初めて魅力的なアプリケーション・シナリオを用意する。Intelの第1世代Itaniumの売れ行きは悲惨なものだったが、64bitプロセッサによってメリットを得るソフトウェア・プラットフォームを発表し具体的なビジネス問題を指摘すれば、その採用は促進されるだろう。
32bit版との相互データ運用の現状
64bit版SQL Serverへの移行を検討中の組織にとって、データの移行と相互運用性は最大の懸念となるだろう。32bit版と64bit版のSQL Server 2000は共通のストレージ・フォーマットを共有するので、顧客は共通のSQL Serverプロシージャを用いてデータベースを相互に移動できる。しかし、SQL Serverバージョン7.0ないしそれ以前のバージョンのデータを64bit版SQL Server 2000に直接移動することはできない。SQL Server 7.0のデータベースを移行させる場合、顧客はまずSQL Server 7.0をいったん32bit版SQL Server 2000にアップグレードする必要がある。この移行は一方通行だ。SQL Server 2000(64bit版)からSQL Server 7.0へのデータの移行はサポートされていない。
64bit版SQL Serverは32bit版とコード互換なので、32bit版向けに開発されたストアド・プロシージャは64bit版SQL Server上のデータベースでも変更なしで稼働するだろう。SQL Serverにリモート・アクセスするクライアント・アプリケーションは、32bit版SQL Serverと64bit版SQL Serverの間で透過的に相互運用できると思われる。さらに、SQL Serverに依存するいくつかの共通ミッドティアISV製品(SiebelやSAPの製品など)の64bit版がリリースされた。これらは64bit版Windows Server 2003およびItanium 2に最適化されている。
しかし、64bit版Windowsに移植されていないミッドティア・アプリケーションを持つ顧客は、いくつかのテストを実施して64bit版SQL Serverと相互運用する最良の方法を決める必要があるだろう。
不足する64bit対応ツール
64bit版SQL Server 2000はSQL Server 2000の中核機能の大半を搭載しているが、32bit版に付属する大半のツールが64bit版には付属しない。付属している唯一の64bit版用ツールは、Server Network UtilityとService Manager、およびコマンドライン・ユーティリティだけである。SQL Query AnalyzerやEnterprise Manager、SQL Mailといったほかの便利なツールは付属しない。従って、64bit版SQL Serverを顧客が管理する場合、既存の32bitコンピュータにSQL Serverクライアント・ツールをインストールし、64bit版SQL Serverをリモート管理する必要がある。クライアント・ツールは32bit版SQL Server CDメディアまたはSQL Server 2000 Personal Edition CDを用いてインストールできる。
■リモート・インストールとDTSには非対応
また、64bit版SQL Server 2000はリモート・インストールをサポートしない。インストール作業はローカルで行う必要があり、現在はWindowsインストーラをベースとしている。
64bitデータベース・サーバの処理能力を必要とするアプリケーションの数は比較的少ない。このため、最も有望なデータセンター構成としては、少数の64bit版SQL Serverと多数の32bit版SQL Serverを、既存の32bitコンピュータで管理する方式が考えられる。従って、リモート・インストールが不可能な点と、管理に32bit版用ツールが必要になる点については、今回のリリースに関心を持つ大半の企業にとって導入の大きな妨げとはならないだろう。
さらに制約となるのは、バルク・データ転送スクリプト用のデータ変換サービス(DTC:Data Transformation Services)コンポーネントが64bit版SQL Serverでは利用できないことだ。64bit版SQL Server 2000データ・セットに対しDTSスクリプト(いわゆるパッケージ)を実行させることは可能だが、パッケージはSQL Server 2000ツールをセットした32bitマシンから実行しなければいけない。これはOLAPとデータ・ウェアハウジングに64bitサーバを使用している組織の管理を複雑化させる可能性がある。これらのアプリケーションは一般にDTSを頻繁に使用するからだ。
■出荷時期
SQL Server 2000(64bit版)は、Windows Server 2003のリリースと同時に販売が開始される予定だ(米国では2003年4月24日に発売済み)。出荷されるのは英、仏、独、日本語バージョンのEnterprise Editionのみで、Windows 2003 Server EnterpriseまたはDatacenter Editionを必要とする。
SQL Server 2000 Enterprise Editionの64bit版のライセンス費用は32bit版と同じであり、顧客は32bit版SQL Serverのライセンスを64bit版に無償で移行できる。
参考資料
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64bitプロセッサと64bitコンピューティングに関する詳細情報は、Directions on Microsoft誌日本語版2002年6月15日号の「"Hammer"対応の64ビットWindowsが登場へ、Intel VS AMD CPU戦争が新しいステージに」を参照。
Directions on Microsoft日本語版 本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。Directions on Microsoftは、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。 |
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