Insider's EyeMicrosoftがシステム管理製品のロードマップを大幅変更、System Centerへ一本化(1) |
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Peter Pawlak 2003/06/03 Copyright(C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc |
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2003年5月15日号 p.21の「システム管理製品のロードマップを大幅変更 System Centerへの一本化」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
Microsoftが発表したシステム管理製品の最新のロードマップによると、同社の2種類のシステム管理ソフトウェア「Systems Management Server(SMS)」と「Microsoft Operations Manager(MOM)」は、それぞれ2004年にアップデートされる予定となっている。その後、System Centerスイートと呼ばれるバンドル製品として統合されることになる。さらにSystem Centerスイートは、MicrosoftのDynamic Services Initiative(DSI)の一環として導入されるWindowsの各種新技術を活用する単体の製品に一本化される見通しだ。ただし同社は、この統合をどのように進めるか、既存の管理製品からどの程度の技術を引き継ぐか、管理製品を扱う複数の事業部門のうち、どの部門がこの移行を進めるかなどについて、ほとんど詳細を明らかにしていない。
また、Microsoftの既存のサーバ・ファーム管理/モニタ製品であるApplication Center Serverについては、開発コード名で「Blackcomb(ブラックコム)」と呼ばれるWindows(Windows Server 2003の次期バージョン)ならびにSystem Centerがリリースされた時点で、販売が打ち切られることになる。これは、Application Center Serverの機能が、BlackcombとSystem Centerに標準で組み込まれるからだ。
このロードマップは2003年3月に開催されたMicrosoft Management Summitで発表されたものである。その内容は、前年度の同サミットで発表されたものとは大きく異なっている。2002年度のロードマップでは、System Centerの機能は開発コード名で「Client Manager」および「Server Manager」と呼ばれる製品に分割されていた(各システム管理ソフトウェアの今後の展開については、図「Enterprise Managementグループのロードマップ」を参照)。
Enterprise Managementグループのロードマップ |
Microsoftのシステム管理製品の最新ロードマップによると、Microsoft Operations Manager(MOM)とSystems Management Server(SMS)は2004年後半にバンドル製品としてまとめられる。さらに2006年ごろまでにSystem Centerと呼ばれる単独の製品に一本化される。またApplication Center Serverについては、その機能の大部分はコード名でBlackcombと呼ばれるWindows Serverの次期バージョンに組み込まれる。モニタ機能はMOMに統合された後、最終的にはSystem Centerに統合されることになるため、今後、同製品に関してはService Packとバグ・フィックスのみが提供されることになる。 ただし、このロードマップはMicrosoftのEnterprise Managementグループが担当するサーバ製品のみを扱っている点に注意が必要だ。別の部門がDynamic Systems Initiative(DSI)の一環で開発を進めているWindows向けの管理技術は、このロードマップには含まれない。 |
SMS 2003は9カ月遅れの9月にリリース
MicrosoftのEnterprise Managementグループは、現行のSMS 2.0のアップデートとなるSMS 2003を2003年9月(米国)に出荷すると発表している。これは、Microsoftが1年前に初めて発表したリリース予定より約9カ月遅れのスケジュールとなる。
SMSは、企業がWindowsデスクトップ/サーバ上のハードウェアとソフトウェアのインベントリ(電子目録)を作成したり、それらのシステムにソフトウェアを導入したり、複数のコンピュータの設定をまとめて変更したりできる。また、コンピュータをリモート・システムから管理したり、ソフトウェア・ライセンスを管理したりすることも可能だ。
■SMS 2003の主な改善点
●クライアントの改良
新しいSMSクライアントは、Windows 2000/XPおよびWindows Server 2003に対応している。特にノートPCの管理機能が大幅に改善される。ノートPCは、通常社内のネットワークから切断された状態で動作したり、ネットワーク上のさまざまなロケーションから接続したりするケースが多いにもかかわらず、SMS 2.0のクライアントは複数のSMSサーバ・サイト間の頻繁な移動が想定されていなかった。またSMS 2003クライアントでは、モビリティをめぐる問題のほかにセキュリティとパフォーマンスが強化され、サーバや固定した環境で利用されるデスクトップPCでの動作も改善される。
Windows Update ServiceからパッチをダウンロードするWindowsの自動更新(Automatic Update)クライアントと同様、新しいSMSクライアントは、Background Intelligent Transfer Service(BITS)を使ってファイルをダウンロードする。BITSは、チェックポイント/再処理(転送を中断したところから再開する)機能と帯域幅スロットル機能(利用する帯域幅を制限する機能)を搭載する。これにより、ソフトウェア・インストール・パッケージのダウンロードの際には、帯域幅と断続的な接続をより効率的に利用できる。この機能は、ユーザーが無線LANや帯域幅の限られたVPNを介して接続している場合(SMSによるダウロードを実行中にネットワークから頻繁に切断されるような場合)に特に重要となる。
●Webレポート
SMS 2003には、Webベースの新しいレポーティング・システムが含まれ、IT人事/管理部門は統合されたSMSインベントリ・データのレポートをより便利な方法で閲覧できる。ただし、この新しいレポーティング・システムは開発コード名で「Rosetta(ロゼッタ)」と呼ばれる新しいSQL Server Reporting Servicesをベースとするものではない。
●Active Directoryの統合
SMS 2003では、Active Directoryとの統合により、組織、ユーザー・グループ、マシン・グループ、あるいはExchange配布グループなどにおけるコンピュータ/ユーザーのメンバーシップに基づいて、SMSベースのソフトウェア導入を実行できる。またSMS 2003は、クライアントを適切なSMSサーバにマップする際にもActive Directoryのサイト定義を利用する。
●パッチの配布
SMS 2003は、セキュリティなどの各種ソフトウェア・パッチを自分で見つけて、配布・インストールできる。この機能はSMS 2.0向けのSUS Feature Packで最初に提供されたものである(詳細は、「Insider's Eye:SMS 2.0のFeature Packがリリース、管理者を強力にサポート」を参照)。
●メータリングの改善
SMS 2003ではメータリング(計測)ソフトウェアがパフォーマンス強化のために大幅に書き直された。これにより、すべての管理対象マシンに渡って、ユーザーによるソフトウェア・アプリケーションの利用状況が追跡できるようになる。ユーザーがネットワークから切断されている最中の利用状況も追跡できる。これは、クライアントが次にSMSサーバへの接続が確立したときに利用状況レポートをアップロードすることで実現される。
ただし、多くの顧客にとって最も重要な点はこうした機能リストに含まれるものではない。それは、SMS 2003がリリースされるまでに、以前のバージョンよりはるかに多くのテストを経ることになるということだ。現在、Microsoft社内のIT部門による徹底的な製品テストに加えて、すでにEAP(Early Adopter Program:早期適用プログラム)の多くの大手顧客が実運用環境でSMS 2003を稼働させている。こうしたテストは、Microsoft社内の小規模なテスト環境では見付からないような多くの問題の発見に役立っている。
■SMS 2003のFeature Pack
SMSチームは、「Service Packではバグとセキュリティの問題のフィックスのみを提供し、新機能は単独でダウンロードが可能なFeature Packとして提供する」という最近の慣行にならう方針のようだ。Microsoftは2004年春、SMS 2003の最初のFeature Packを提供する予定である。このFeature Packの中心となるのは以下の2つの分野だ。
●Windows CEデバイスのサポート
Microsoftは、Windows CEデバイス向けの新しいSMSクライアント・エージェントを開発する計画だ。このエージェントにより、SMSはサポート対象のWindows CEデバイスをインベントリ化したり、デバイスのデータドックのほか無線LANや無線WANのネットワークを介して、こうしたデバイスにソフトウェアを配布したりできるようになる。このエージェントは、現行のPocket PC 2002と現在開発中のPocket PC 2003プラットフォームをベースとするデバイスに重点が置かれる。Microsoftは、現時点でWindows SmartphonesでSMSクライアントをサポートする計画はない。これは、Windows Smartphonesではすべてのアプリケーションにデジタル署名が求められるためだ。
●ディスク・イメージのサポート
SMSは、アプリケーションのほかにOSのアップグレードに対応したインストールもできるが、現行版はシステム・イメージを丸ごとインストールすることはできない。Feature Packにより、SMS 2003はシステム・イメージを丸ごと予備のディスク・パーティションにプッシュし、Windows Preinstallation Environment(WinPE)を使って、そのイメージをメインのディスク・パーティションにインストールできる(再起動は必要)。Microsoftは最低限、PowerQuestとSymantecのイメージ作成ツールをサポートする計画だ。
2004年初旬にMOM 2004がリリース
Microsoftは、2004年の早い時期にMicrosoft Operations Manager(MOM)の新版をリリースする計画だ。MOMはイベント/パフォーマンス・モニタリング・システム(クライアント/サーバ・コンポーネントで構成される)で、Windows Serverとサーバ・アプリケーションをモニタし、その可用性を維持するための製品である。管理対象となるサーバは、それぞれがMOMエージェントと“基本”のルール・パックを実行する。このルール・パックには、Active DirectoryやInternet Information Services(IIS)など、コアとなるOS機能やサービスをモニタするために必要となるフィルタリング/警告ロジックが含まれている。MOMエージェントはさらに、ExchangeやSQL Serverなど、Microsoftのサーバ・アプリケーションをモニタするためのアプリケーション・ルール・パックを実行する。
MOM 2004は、まだベータ段階にも達していないが、Microsoftは以下のような機能に重点を置く方針を明らかにしている。
●新しいマスタ・コンソール
現行版のMOM 2000は、MOM自身を設定・管理するためのMicrosoft管理コンソール(MMC)をベースとするコンソールと、MOMアラートを表示するためのWebコンソールを備える。さらにMOM 2004では、従来よりも拡張性のある新しいWebコンソールを備えることになる。この新コンソールは、MOMだけでなくHewlett-Packard(HP)のOpenViewといった他社の管理システムからのアラートも処理できるマスタ・コンソールとしてMOMを機能させるためのものだ。これは、管理ソフトウェアのサードパーティ・ベンダにMOM互換ツールを開発してもらうためには不可欠なステップである。それが、MOMを使って非Windowsシステムを管理する上でのカギとなる。
●Yukonデータベースを初採用
MOM 2004は、新しいストレージ/検索エンジン「Yukon」を使用するSQL Serverの次期バージョンに依存した初めてのMicrosoftサーバ・アプリケーションとなる。これによって、MOMにどのような技術的メリットがもたらされるかはまだ定かではないが、Yukonの出荷スケジュールの遅れはMOM 2004のリリースにも影響を及ぼすことになる。
●Webレポーティング
MOM 2004は、現在SQL Server向けに開発が進められているWebベースの管理型レポート・エンジン「Reporting Services(開発コード名はRosetta:ロゼッタ)」を採用する予定だ。このエンジンは、MOM 2000のAccessベースのレポートよりもはるかに強力で有効だ。そして最終的には、レポートを生成する必要のあるMicrosoftのすべてのサーバ製品にこのレポーティング技術が採用される見通しである。ユーザーは新しいオペレータ・コンソールのほか、各種Webページや電子メールからレポートにリンクできる。
●使い勝手を改善
Microsoftは、あらかじめ設定した管理ルールとレポートのセットを提供することで、MOM 2004の設定を簡略化したいと考えている。MOM 2004は最終的には言語を意識させない製品となり、Windowsの英語以外のバージョンとその管理対象である各種のMicrosoftサーバ製品と連係できるようになるかもしれない。
●個々の製品チームがアプリケーション・パックを管理
もう1つの変更は、すでに現行版のMOMで始まっているものだ。それは、Microsoftのサーバ製品のアプリケーション・パックの開発の責任が、MOM製品チームから個々の製品グループに移行したことである。2003年夏にリリース予定のExchange 2003(開発コード名はTitanium:タイテニアム)など一部のケースでは、製品にMOMのアプリケーション・パックがバンドルされる。MOMチームよりも個々の製品グループの方が管轄の製品の動作をよく知っていることから、この移行によって、理論上、管理パックの質は向上するはずだ。ただし、製品グループが出荷スケジュールを守りたいばかりに管理パックが省略されたり、機能が減らされたりするようなことになれば、ユーザーにとっては不利益となるだろう。
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