Insider's EyeMicrosoftがシステム管理製品のロードマップを大幅変更、System Centerへ一本化(2) |
|
Peter Pawlak 2003/06/03 Copyright(C) 2003, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc |
最終的には両製品を一本化
2002年春のMicrosoft Management Summitにおいて、Microsoftは向こう3〜5年以内に管理製品を徹底的に再編し、「Server Manager」および「Client Manager」というコード名のプロジェクトを軸に2つの新しい製品ラインにまとめる計画を発表した。続く2002年秋のMicrosoft Enterprise Conferenceでは、同社はこれらのプロジェクトのプロトタイプを披露し、関連の多くの新しい革新的なアイデアを発表した。
その後、Microsoftは計画を再検討し、これらのプロジェクトをSystem Centerという名称の製品ラインとして一本化する方針を決定した。System Centerは、2つの段階でリリースされる。当初は現行の管理製品のバンドルとして提供され、その後、完全な統合バージョンとしてリリースされる。
■System Centerスイート
Microsoftは2004年遅くに、SMS 2003とMOM 2004を組み合わせたバンドル製品としてSystem Centerスイートを投入する。両製品は、かなりのレベルまで統合され、現行のコンポーネント製品には含まれない追加機能もいくつか搭載する。
System Centerスイートでは、SMSとMOMがYukonベースのSQL ServerデータベースとReporting Servicesを共有するほか、SQL ServerのOLAP機能を使って双方のソースからの管理データを集積・分析するレポート機能が提供される。
■System Center
最終的にSystem Centerスイートは、System Center(開発コード名はSydney:シドニー)へと進化し、MicrosoftのDynamic Systems Initiative(DSI)の一環として開発される、新しいWindows技術を活用する単独の管理製品として統合される(DSIについては、「Insider's Eye:ベールを脱いだマイクロソフトの次世代システム・マネジメント戦略」ならびにDirections on Microsoft日本語版5月15日号の「管理環境を刷新するDSI構想とは?」を参照)。DSIは、アプリケーション、システム・ソフトウェア、ハードウェアに管理機能を後付けで追加するのでなく、最初から組み込もうという遠大な計画である。DSIは、システム全体に広がる管理インフラとSystem Definition Model(SDM)によって、この目標を実現する。SDMは、コンポーネントの設計の段階でハードウェア/ソフトウェアにMicrosoft標準のXMLベースの管理ノウハウを組み込むというものだ。
System Centerに関する詳細はまだ発表されていないが、Microsoftによると「System Centerは変更/設定管理、資産管理、エンド・ツー・エンド・アプリケーション管理、ITプロセス・オーケストレーション、パフォーマンス・トレンディング、レポーティング、容量プランニングなどのための管理ソリューションを統一の管理インフラで提供する」という。
ここで「統一の管理インフラ」とはDSI技術のことである。DSI技術は、早くても2006年のリリースとなるBlackcombバージョンのWindows Serverのリリースまで完全には提供されない。「パフォーマンス・トレンディング」とは、Microsoft Researchが開発した開発コード名でIndy(インディ)と呼ばれる技術のことである。Indyはモデリングとシミュレーション技術を使って、システム・プランナーがパフォーマンスのボトルネックを把握したり、変更の影響をシミュレートしたり、リソースの利用を最適化したりできるようにする。
Microsoftは、System Centerが異種システムとどのように連係するかについては何も情報を公開していない。ただし、MicrosoftがSystem Centerをエンタープライズ管理のコアとして位置付けていることや、企業のCIO(最高情報責任者)は異種システムを管理できなければSystem Centerの導入を検討しないと考えられることなどから、異種システムとの連係は何かしらの形でサポートされるだろう。ただし、Microsoftは標準のインターフェイスを公開し、非Windowsシステムのサポートをほかの管理ベンダに委託することになりそうだ。
Application Center Serverは保守のみへ
以上のような流れの中で、Application Center Serverはその役割を徐々に終えていくことになる。Application Center Serverは、サーバ・ファーム上のWebアプリケーションとCOM+アプリケーションの管理/モニタを支援するためのMicrosoftの既存製品である。
向こう2〜3年間は、必要に応じてApplication Center ServerのService Packがリリースされる。だが今後は、System Centerがサーバ・ファームをモニタし、BlackcombのDSI技術がアプリケーションやそのほかのソフトウェア・コンポーネントとともにサーバ・ファームの導入/設定を扱うことになる。そのため、最終的にはBlackcombがリリースされた時点でApplication Centerの販売は打ち切られることになる。
リーダーシップ・チームの不在
1つ問題なのは、Microsoftの管理戦略を一括して管理する単独のコーディネータが存在しないことだ。
システム管理には、ハードウェアとOSの大規模なサポートが必要となり、DSIのもとでは、さらに多くの管理能力がBlackcombに組み込まれることになる。だが、MicrosoftはベースとなるWindows管理技術がどのように進化し、SMS管理製品やMOM管理製品とどのように連係することになるかについて、一貫性のある見通しをまとめられずにいる。混乱しているのは以下のような分野だ。
●ソフトウェアのインストール
SMS(Enterprise Managementグループが担当)とグループ・ポリシーおよび自動更新サービス(Windows事業部門が担当)は、どちらもソフトウェアのインストールを自動化できる。これらの製品は、それぞれ異なる計画のもとで別々の時期に設計されたため、実質上、共通のコア技術はない。ただし、統合と調整の可能性は大きい。例えば、SMS 2003の改良版のクライアントは当初自動更新向けに開発されたBITSダウンロード技術を用いることになる。
●パッチ管理
Microsoftは現在、4種類の方法でパッチをリリースしている。手作業でのファイルのコピー、スクリプト、Windowsシステム・パッチ・フォーマット、Windows Installerパッチ・フォーマットだ。
●ディスク・イメージのインストール
SMS 2003のFeature Packは、サードパーティのディスク・イメージ作成ツールで生成された新しいディスク・イメージのプッシュ・インストールをサポートすることになるが、Microsoftはこの先ディスク・イメージのインストールをどのように扱うかについてはまだ明らかにしていない。すでにWindows Serverチームは、スクリプト駆動型のWindowsインストールをサポートするRemote Installer Service(RIS)機能を開発済みだ。一方では、最低限のサーバ・レプリカを迅速に構築するためのAutomated Deployment Services(ADS)と呼ばれる新しいイメージ・ベースの技術も開発中だ(ADSの詳細については、「Insider's Eye:ベールを脱いだマイクロソフトの次世代システム・マネジメント戦略」を参照)。RISはどちらかといえばワークステーションの構築にターゲットを置いているが、将来的にはADSのコア技術がRISをリプレイスする可能性もある。
●Webベースの管理
Microsoftは、2000年10月に発表した.NET Management Services Initiativeの一環として、Windows Management Instrumentation(WMI)へのWebサービス・インターフェイスと、Microsoft Management Portalと呼ばれるMicrosoft管理コンソール(MMC)をリプレイスするWebベースの管理インターフェイスを開発するとしていた。ただし、この1年、同社はこの取り組みについては沈黙を続けている。
●グループ・ポリシー・ベースの管理
Microsoftは、Windowsグループ・ポリシーのメカニズムをベースとする管理を今後どのように進化させていくかについても詳細を明らかにしていない。現在のActive Directoryベースのグループ・ポリシーはWindowsレジストリと密に連係しているが、Microsoftはより一般的なポリシー・メカニズムへの移行を開始している。それは、アプリケーション(特にマネージド・コードで書かれた.NETアプリケーション)の設定をXMLファイルに格納し、中央で一元的に管理するというものだ。SMS 2003の新しいクライアントは、そうしたメカニズムを使って設定を中央で管理する。ただし、そのためには当然ながら、XMLポリシーのファイル配布を「あらゆるアプリケーションで利用できるWindowsサービス」として確立する必要がある。
Microsoftは恐らく2003年秋のProfessional Developers Conferenceでは、こうした曖昧な点を明らかにしてくれるだろう。
参考資料
- SMS 2003の詳細
- Reporting Servicesについて詳しくは、Directions on Microsoft日本語版2003年3月15日号の「SQL Serverにレポート機能、Reporting Servicesを追加」を参照。
Directions on Microsoft日本語版 本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。Directions on Microsoftは、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。 |
INDEX | ||
Insider's Eye | ||
Microsoftがシステム管理製品のロードマップを大幅変更、System Centerへ一本化(1) | ||
Microsoftがシステム管理製品のロードマップを大幅変更、System Centerへ一本化(2) | ||
「Insider's Eye」 |
- Azure Web Appsの中を「コンソール」や「シェル」でのぞいてみる (2017/7/27)
AzureのWeb Appsはどのような仕組みで動いているのか、オンプレミスのWindows OSと何が違うのか、などをちょっと探訪してみよう - Azure Storage ExplorerでStorageを手軽に操作する (2017/7/24)
エクスプローラのような感覚でAzure Storageにアクセスできる無償ツール「Azure Storage Explorer」。いざというときに使えるよう、事前にセットアップしておこう - Win 10でキーボード配列が誤認識された場合の対処 (2017/7/21)
キーボード配列が異なる言語に誤認識された場合の対処方法を紹介。英語キーボードが日本語配列として認識された場合などは、正しいキー配列に設定し直そう - Azure Web AppsでWordPressをインストールしてみる (2017/7/20)
これまでのIaaSに続き、Azureの大きな特徴といえるPaaSサービス、Azure App Serviceを試してみた! まずはWordPressをインストールしてみる
|
|