Insider's Eye

統合メッセージングに動き出すExchange Server(2)

Peter Pawlak
2005/04/12
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.

メッセージング戦略の方向転換

 Exchange 12では、Exchangeやほかの製品の将来バージョンに影響を及ぼすと見られる2つの重要な方向転換が行われる。まず第1に、Exchangeは電子メール・ベースのコラボレーションと通信に焦点を絞り、そのほかの形式のコラボレーションは他製品に譲る。第2に、Exchangeのアーキテクチャを少なくとも2008年まで変更せず、将来の移行を容易にする。

■メッセージングに焦点を絞る
 歴史的に、グループ用のメールボックス、ディスカッション、カレンダー、連絡先などのストレージを提供するExchangeのパブリック・フォルダは、例えば法律関係のドキュメントの作成管理など、グループが共有データを使って共同作業するための重要な手段だった。Microsoftは現在、そういったタイプの作業については、SharePointの利用を推奨している。Exchangeのパブリック・フォルダ機能はこれ以上開発が進められることはなく、Exchange 12は今後、フリー/ビジー・リストなど、コア機能の部分でパブリック・フォルダにいかなる依存もしない。従って、パブリック・フォルダのインストールはオプションになり、Exchange 12の新しいAPIは、恐らくパブリック・フォルダへのアクセスをサポートしない。

 全体的に見て、Exchangeは電子メールや音声メール、ファックスなど、ユーザーが受信したことを直ちに通知されない“蓄積交換通信”のプラットフォームとして、その位置付けを変えつつある。また、インスタント・メッセージングや電話など、ほとんどリアルタイムで相互にやりとりする同期通信については、Live Communications ServerとLive Meetingがカバーし、共有ドキュメントや共有データを基盤とするグループ・ワークは、Windows SharePoint ServicesとSharePoint Portal Serverの守備範囲となる。

■Exchange技術の安定化
 Exchange 12には、もう1つ重要なポイントがある。製品の基本技術を変更しない点だ。例えば、Exchange 12は新しいアクセス手法としてMAPI/RPC-over-HTTPやWebサービスAPIをサポートするが、OutlookとExchange間のメイン通信プロトコルはMAPI/RPCのままだ。同様に、x86-64アーキテクチャに移植されても、Exchangeのメールボックス・ストアは現行のデータベース技術(Extensible Storage Engine、JET)が用いられる(JETの64bit移植は、x86-64システムでActive Directory をサポートするため、いずれにしても行われるだろう。Active DirectoryもJET上に構築されている)。これは同社の2002年ごろの計画と比較すれば、まさに正反対だ。当時の計画では、メールボックス・ストアはSQL Serverベースの新しいデータベース技術へ完全移行し、64bitサポートを実現するはずだった。

 ただし、SQL技術へのフル移行ではないものの、Exchange 12では初めていくつかSQL Serverの技術を取り込む。代表的なところでは、エッジ・サーバあるいはブリッジヘッド・サーバとして設定されたサーバにデータ・キューをホストするため、SQL Serverのk組み込みバージョンを利用する。また、現行のメールボックス/パブリック・フォルダのインデックス作成とサーチ・エンジンを、SQL Server 2005のフルテキストのインデックス作成エンジンにリプレイスする。Microsoftでは、それによって検索能力が飛躍的に改善するとしている。

 MicrosoftはExchangeを技術的に安定させることで、将来の移行を容易にしたい考えだ。恐らく顧客は今日と同じように、Outlookのバージョンと無関係にExchangeの新バージョンへ移行することが可能になるだろう。また同様に、顧客はExchange 2003からExchange 12へ、データを移植することなく移行できるはずだ。それによって、ストレージ技術を根本的に変更したほかの製品(SharePoint Portal Serverなど)で生じた問題を避けることができる。

 長期的に見れば、Exchangeは恐らくWinFSアドバンスト・ファイル・システムやWebサービス用のIndigoメッセージング・システム、WinFX APIなど、新しいWindows技術の利点を取り込んで進化していくだろう。ただし、そうした進化は少なくともExchange 12の次のバージョンまで待たなければならない。恐らくそれは2008年以降になるだろう。

■いまだ不鮮明なOutlookロードマップ
 Exchangeと比べて、Outlookのロードマップは漠然としている。次期バージョンのOutlook 12は、Office 12とともに2006年にリリースされる。ほぼExchange 12と同時期だ。Exchange 12の統合メッセージング機能をサポートし、クライアントサイドの構成の必要性を少なくする新しいActive Directory拡張機能とグループ・ポリシー・オブジェクトによって、プロビジョニングと構成がより簡単になる。カレンダー機能についても大幅に改良されるが、現時点でMicrosoftは詳細を明らかにしていない。

 前述したように、恐らくOutlook 12へ移行せずにExchange 12へ移行することは可能で、その逆も同様だ。しかし、いくつかの新機能(統合メッセージングなど)を利用する場合は、両方とも移行する必要があるだろう。

ホスト型Exchangeサービスは縮小方向へ

 興味深いことに、Exchangeロードマップには、ホスト型Exchangeメッセージング・サービスのプロバイダが求める特殊なニーズに適合するものは、ほとんど記載されていない。一般的に、ホスティング業者は膨大な数の小規模企業に対して専用サーバ、あるいは仮想サーバさえ置かず、個別にサービスを提供しなければならない。同時に次のようなサービスの提供も必要だ。

  • ディレクトリ・パーティショニング:アドレス帳とユーザー認証サービスを提供するActive Directory を、それぞれの顧客が独自に持つことができるようにする。

  • ストレージ・パーティショニング:それぞれの顧客のメッセージング・データベースをほかの顧客から完全に隔離し、メールボックスのリストアもほかの顧客に影響を及ぼさずに実行できるようにする。

  • 委託管理とプロビジョニング:顧客の管理者が、プロバイダから補助なしで通常のExchange管理作業を実行できるようにする。ただし、ほかの顧客に影響を与えかねない構成の変更などはブロックされる。

 Microsoftは長年、Exchangeのホスト・ベンダをサポートしてきた。Exchange 2003ではホスト側のニーズを取り入れ、また規範的ガイダンスとなるソリューションも提供した。ただ、Exchange 2003の基盤技術には、ハードウェア(とライセンス)を最適化する一方、サービスを隔離し、サポートのオーバーヘッドを抑制する、という対立する目標に十分対応できない制約があった。

 しかし、Exchange 12でも、その問題はほとんど解決されない。Microsoftはもはや、Exchangeをホスティング業者向けに仕立てることを最優先課題とはしていない。そうしたニーズにはほかの製品で対応する考えだ。グループ・カレンダー機能や連絡先のサポートなどは、それぞれの顧客がOutlookとMicrosoft Office Outlook LiveやMSN Hotmail Plusサービスを併用すればよい。ほとんどの小規模企業にとっては、ホスト型のExchangeよりも、ExchangeやOutlookを含むSmall Business Serverの方が魅力的だ、とMicrosoftは考えている。End of Article

ExchangeとOutlookのロードマップ

 Microsoftの電子メールおよびコラボレーション・サーバの次期メジャー・アップデートであるExchange 12は、2006年に予定されている。

 Exchange 12は、統合メッセージング(電子メールに音声メールとファックス・サービスを組み合わせたもの)、統合アンチウイルス・サポート、セキュリティと拡張性を向上させるより進化したモジュラ・アーキテクチャ、そして開発者向けの一連の新しいWebサービスAPIを提供する。Outlookもほぼ同時にアップデートされるが、機能セットについては発表されていない。

 Exchangeについては、Exchange 12の前にいくつかアップデートが提供される。特に、2005年下半期に予定されているExchange 2003 SP2は、アンチスパム機能をアップデートし、モバイル・デバイス向けの機能強化が行われる。2005年には、Exchangeのセキュリティ構成を評価するExchange Best Practices Analyzerの新バージョンなど、さまざまな無料ツールも提供される。

 Microsoftは、2005年に投入を予定していたインターネット電子メールのフィルタリングおよびルーティングを行う製品、Exchange Edge Servicesの計画を破棄した。それに代えて、Exchange 12でEdge Servicesに計画されていた機能を実行する専用サーバをセットアップすることが可能になる。

参考資料

Directions on Microsoft日本語版
本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。『Directions on Microsoft 日本語版』は、同社のWebサイトより定期購読の申し込みができます。
 
 

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