Insider's Eye統合メッセージングに動き出すExchange Server(1)―― 最新メッセージング・サーバのロードマップを解析 ―― Peter Pawlak2005/04/12 Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. |
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本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年4月号 p.22の「統合メッセージングに動き出すExchange Server」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
Exchange Serverの年間売り上げは、いまや10億ドルを超え、Microsoftの収益を支える大きな柱に成長している。しかし、同製品に関するMicrosoftの計画は、これまではっきりしなかった。先ごろ明らかにされたExchangeロードマップでは、暫定Service Packを提供した後、2006年に統合メッセージング、新しいAPI、より高い可用性、新しい管理インターフェイスをサポートした新しいリリース(コード名:Exchange 12)を出荷する計画だ。しかし一方で、Microsoftは2004年に発表したEdge Serverバージョンの計画を破棄しようとしている。新しいSQL Serverベースのエンジンを導入せず、現行のメールボックス・ストレージ技術に固執する考えだ。
2005年:Exchange SP2を先行してリリース
2005年にExchangeのメジャー・リリースは計画されていない。しかし、Exchange Server 2003 SP2の一部として、以下の機能が同年中に提供される。
●IMFのアップデート
SP2は、2004年に初めて導入されたサーバーサイド・スパム・フィルタリング技術のIMF(Intelligent Message Filter)をアップデートし、最新の各種スパムを検出できるようにフィルタリング手法(ヒューリスティクスな機能)を調整する。また、管理者がドメイン名を基にメッセージをブロックしたり、通過させることが可能な機能も加えられたりする。
●SenderIDを実装
SP2は、Microsoftが開発したメール・サーバを認証するための新しいオープン・プロトコルを提供する。これにより、企業は認証されていないメール・サーバとの通信を制限するポリシーを設定することが可能になる。ただし、MicrosoftがSenderIDの標準化を推進しても、業界に広く普及するかどうかは未知数で、将来的な利便性は限定的になる可能性もある。
●モバイル・デバイスの強化
SP2はまた、モバイル・デバイスからExchangeへのアクセス管理を強化する。さらに、Exchangeを機能拡張し、ExchangeデータとPocket Outlookを実行するモバイル・デバイスを同期させるActiveSyncプロトコルが追加される。ただし、ユーザーがこれらのメリットを享受するためには、モバイル・デバイスのベンダがアップグレードを提供しない限り、Windows Mobileの次期バージョン(コード名:Magneto)をベースとする新しいデバイスを購入しなければならない。
Microsoftはまた、2005年中に1つか、またはそれ以上のExchange管理ツールを無償ダウンロードで提供する計画だ。例えば、セキュリティ構成の弱点を特定するのに役立つレポーティング・ツールのExchange Best Practices Analyzerをアップデートし、メールボックス・サーバのハードウェア構成を評価するツールであるJetStressの新バージョンをリリースする。
ただし、当初2005年に予定されていたサーバ製品、Exchange Edge Servicesはキャンセルされた。その代わり、同製品で計画されていたインターネットとExchangeサーバ間のメッセージのスキャニングとフィルタリングを行う機能は、次のメジャー・リリースであるExchange 12に包含される。この変更は、Microsoftが新しいExchange製品に提供したライセンス方式とSoftware Assuranceの複雑さを大幅に解消する。
2006年:Exchange 12が目指す革新技術
いまのところ、Exchange 12のリリースは2006年下半期に予定されている。開発の重点項目は、メッセージング・セキュリティの強化、音声メールやファックスなどの新しいメッセージング・タイプのサポート、モジュラ・アーキテクチャおよび新開発の管理インターフェイスによるシンプルでスクリプティング可能な管理機能などにある。またExchange 12は、自社の開発ツールや言語と相性の良い新しい簡素なプログラミング・インターフェイスを搭載する。
■セキュリティと統合メッセージングが重点項目
Exchange 12のトップ・プライオリティは、メッセージング・セキュリティの強化だ。Microsoftで現在開発中のエンジンをベースとする統合ウイルス検出/除去機能を含むほか、IMFアンチスパム技術の強化も行われる。Exchange
12はまた、メッセージのアーカイブと保存を実行するための新しいAPIを搭載する。これらは、企業がディスクロージャー規制や法的開示手続きを遵守する上で重要な機能だ。Microsoftでは、独自にアーカイブ機能や保存機能を提供することはせず、ソフトウェア・ベンダに新しいAPIをベースとするこれらのアドオンを開発させる考えだ。ただし、ビルトイン・アンチウイルス・スキャニング機能は、現在すでにExchange用のアドオン・アンチウイルス・スキャナを提供しているMcAfeeやSymantec、トレンドマイクロなどのべンダーに打撃を与えることになるだろう。
Exchange 12は、サーバーベースのメッセージ暗号化機能をサポートし、メールが盗聴されることを防止する。これにより、現行のExchangeやOutlookのように、すべてのクライアントにSecure MIME(S/MIME)を設定し、それぞれのユーザーに必要なキーを与える手間は必要なくなる。
またExchange 12には、“統合メッセージング”機能が追加される。これは伝統的な電子メールと、音声メッセージやファックスをOutlookクライアント間で送受信できる機能を組み合わせたもので、これまでサードパーティのアドオン製品でのみ提供されてきた機能だ。統合メッセージングをサポートするために、Exchangeの開発グループは現在、一般的なPBX電話システムへのゲートウェイを開発している。また、あまり一般的でないタイプの機器については、サードパーティにサポートの協力を求めている。
■モジュラ・アーキテクチャの採用
Exchange 2000の登場以来、企業などでは2層アーキテクチャでサーバを構成し、Exchangeの規模を拡充してきた。このアーキテクチャは、Outlook
Web Access(OWA)クライアントやPOP、IMAPを利用するリモート・クライアントをサポートするフロントエンド・サーバーと、メールボックスやパブリック・フォルダをホストするバックエンド・サーバで構成される。Exchange
12は、今後もモジュラ・デザイン(システムの各部が機能別にモジュール化され、用途に応じてそれらを自由に組み合わせることができるアーキテクチャ)のトレンドを継承し、ユーザーはExchangeサーバに新しい役割を与え、その役割に必要なコンポーネントだけをインストールし、構成することが可能となる。そうした新しい役割には、次のようなものが考えられる。
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コンテンツを検査するエッジ・サーバ
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メッセージの受け渡しを行うブリッジヘッド・サーバ
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PBXスイッチとインターフェイスをとる統合メッセージ・サーバ
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個人データをストアするメールボックス・サーバ
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共有データをストアするパブリック・フォルダ・サーバ
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メール・クライアントにアクセス・ポイント、またExchangeと統合されたアプリケーションにプログラマティック・アクセスを提供するクライアント・アクセス・サーバ
こうしたモジュラ構成には、ユーザーにとっていくつかメリットがある。まず、セットアップ・プロセスの複雑さを減らし、展開を迅速化できる。また、特定のサーバ上で必要なコンポーネントだけをインストールし、実行するため、ハッカーからの攻撃がより困難になり、攻撃にさらされる面も少なくなる。さらに、モジュラ構成を高めることで、不必要なコンポーネントをサーバから削除でき、スケーラビリティが改善するとともに必要に応じてサーバを柔軟に追加できるため、パフォーマンスの向上が期待できる。
■スクリプティング処理可能な管理機能
Exchangeインストレーションの管理を自動化するために、Exchange 12はMicrosoftの次世代シェル・スクリプティング・エンジン(コード名:Monad)をベースとするまったく新しいスクリプティング・インターフェイスを搭載する。これにより管理者は、定型処理を実行するスクリプトを記述できるようになる。例えば、ユーザーの追加や削除、メールボックスの移動、消失データのバックアップからのリカバリといったタスクだ。現在、そうしたスクリプトの記述は可能であっても非常に体裁の悪いものしかできない。Exchangeの新しい管理者コンソールも同じスクリプティング・インターフェイスを利用し、コンソールから実行可能なあらゆるオペレーションをスクリプトで自動化できるようにする。
そのほかにも、Exchange 12にはダウンタイムを減らしたり、管理のスケーラビリティを高めるなどの機能強化が予定されている。なかでも重要なものは、新しいログ・ファイル・シッピング・メカニズムのサポートだ。ライブ(本番)サーバの定期バックアップ(これまでのような夜間バックアップではなく、5分おきにバックアップを実行するなど)を可能にし、リカバリ・タイムを短縮するとともに、サーバ・ダウンで消失するデータを最小限に抑えることができる。Exchange 12はまた、x86-64プロセッサ(AMDが開発し、Intelも追随した64bit拡張機能を持つプロセッサ)の利点を活用し、大容量メモリを使ってレスポンス・タイムを高速化したり、統合メッセージングに要求される大容量メッセージ処理を可能にしたりする。
■Webサービスと開発者向けのマネージ・コードAPI
Exchange上の開発は、2つの異なる形式に分類できる。1つは、CRM(Customer
Relationship Management)システムなどの独立したサーバ・アプリケーションが、Exchangeの電子メール、カレンダー、連絡先、タスク・データを読み書きすること。もう1つは、Exchangeの機能セットを強化する機能拡張(メッセージ・アーカイビング・システムなど)だ。
Exchange 12は、Webサービス・ベースのAPIを搭載する。アプリケーション開発者がこのAPIを利用すれば、Exchangeデータへのアクセスが容易になり、WebサービスでVisual Studioの便利なツールが利用できるようになる。このWebサービスAPIは、MAPI、WebDAV、CDOEX(Collaboration Data Objects for Exchange Server)などを含むExchangeデータへのアクセスに関して、混乱の多い一連のWindows API群を今後リプレイスしていくだろう。特にCDOEXは、アプリケーション開発者にExchangeデータへの完全なアクセスを提供する目的で設計されたが、Exchangeサーバと同一サーバ上でアプリケーションを実行しなければならず、拡張性や信頼性、管理面などの問題から、ついに普及することはなかった。Webサービス・モデルの場合、そうした必要はなく、コールするアプリケーションはIBMのWebSphereアプリケーション・サーバなど、非Microsoftプラットフォームで実行しても構わない。
Exchangeの拡張機能を記述する開発者にも、新しいマネージ・コードAPIが用意される。それによって開発者は、C#やVisual Basic .NETなどの.NETプログラミング言語を利用できるようになり、現行のExchange APIより仕事がしやすくなる。これら新しい2つのAPIは、サーバサイド・アプリケーション向けのものだ。MAPIはOutlookクライアントとの通信用のAPIとして残り、POP3およびIMAPクライアントも同様にサポートが継続される。
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