Insider's Eye

Windows Vistaの技術革新を解く(1)

Michael Cherry
2005/12/08
Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc.


本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』2005年12月号p.12の「特集 Windows Vistaの技術革新を解く」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。

 7月にリリースされたWindows Vistaのベータ1と、9月開催のProfessional Developers Conference(PDC)2005で参加者に配布された同OSのテクノロジー・プレビュー版は、顧客とパートナーに次期Windowsクライアントの変更点と新機能の初期の姿を垣間見せている。2006年後半に予定されている正式リリースまでにVistaは大きく変貌するだろうが、顧客はいまからVistaの評価を始め、既存アプリケーションへの影響を検討するとともに、リリース時にVistaを導入するかどうかを判断していかなければならない。

Windows Vistaのゴールとは?

 Windows Vistaは、Windowsの現在主流のクライアント版であるWindows XP SP2の後継となる製品だ。Microsoftによると、Windows Vistaのビジョンは、「デジタルの世界にクリアな視界を開き、ユーザーが重要なポイントに焦点を定められるようにする」ことだ。Microsoftは、Vistaはこのビジョンに向けて以下を実現するとしている。

  • PCの新たなレベルの信頼性
  • 情報を整理し活用するための明確な方法
  • ユーザーとユーザー、コンピュータの間のシームレスな接続

 Vistaはこうした公式目標を達成するだけでなく、開発者向けの重要なOSコンポーネントを装備し、顧客にアップグレードの強力な理由を提供し、クライアントOSの最高峰としてのWindowsの地位を再び確立しなければならない。

■重要なOSコンポーネントの装備
 Windows Vistaは、各種の新しいOSコンポーネントが完全に統合される最初のバージョンのWindowsだ。これらのコンポーネントには.NET FrameworkのVer.2、Windows Communication Foundation(コード名:Indigo)、Windows Presentation Foundation(コード名:Avalon)、Windows Workflow Foundation(Windowsオーケストレーション・エンジンやWinOEと呼ばれていた)などがある。ユーザーがこれらのコンポーネントを直接操作するわけではないが、Microsoftはこうした要素技術をVistaに装備し、アプリケーションとともにこれらのコンポーネントを配布することを開発者に強いることなく、開発者がWindowsアプリケーションとWebサービスをより容易に作成できるようにしなければならない。ただし、こうした要素技術の大半はVistaでのみ提供されるわけではなく、これらのコンポーネントやその機能の一部は、メインストリーム・サポートが適用される従来バージョンのWindowsクライアントおよびサーバOSにも提供される(こうしたコンポーネントとそれらが利用可能になる既存プラットフォームについては、コラムの「Windowsの新機能と既存プラットフォームのサポート」と「Windowsの新APIと既存プラットフォームのサポート」を参照)。

■アップグレードの強力な理由の提示
 Vistaは顧客に、Windowsの従来バージョンからアップグレードする強力な理由を提供しなければならない。企業の多くのIT部門は、Windows XPはビジネス・ユーザーではなくコンシューマをターゲットにしているとの認識から、Windows XPの導入や同OSへのアップグレードを行わずに、Windows 2000やそのほかの旧バージョンのWindowsを使い続けるという決断を下した。また、Windows XPのセキュリティと信頼性がSP2で強化されたことで、Windows Vistaを待つまでもないという判断でWindows XPとSP2を導入した企業もある。Microsoftは、Windowsの旧バージョンをまだ使っている顧客や、Windows XP SP2に最近アップグレードした顧客に、「Vistaは、購入の際にハードウェア・アップグレード費用が併せて必要になる場合も含めて、購入コストと導入展開コストに見合った価値がある」と納得させなければならない。Windows 2000のメインストリーム・サポートがすでに終了していることは、Microsoftにとって好都合な材料だ。かなりのIT部門が、サポート・レベルが下がったOSを使うことに不安を感じているからだ。

■最も優れたOSとしての地位の復権
 Microsoftは、品質、機能ともに最も優れたOSとしてのWindowsの地位を取り戻そうとしている。目下のところAppleのMac OS XがそうしたOSの地位を占めているとの声があるからだ。

Windowsの新機能と既存プラットフォームのサポート
 Windows Vistaに搭載される新機能の一部は、ほかのプラットフォームでも利用できる。この表は、主要な新機能とともに、それらが現行のWindowsプラットフォーム向けに提供されるかどうかを示している。

主要な新機能 コード名 Windows XP SP2 Windows Server 2003 SP1
IE 7.0
*1
*1
ユーザー・アカウント保護(UAP) Least-privileged User Account(LUA)
×
×
Windows Graphics Foundation 2.0 DirectX 10
×
×
Vistaの主要な新機能
*1 Vista上で利用可能なIE 7.0のプロテクト・モードは利用できない。
 

Windowsの新APIと既存プラットフォームのサポート
 Windows Vistaに搭載される新しいAPIの一部は、ほかのプラットフォーム向けにも提供される。この表は、Vistaに搭載される主要なWindows API(WinFX API)とともに、Microsoftがそれらの提供を計画しているほかのプラットフォームの一部を示している。Microsoftは、WinFX APIはWindows XP SP2とWindows Server 2003 SP1でも利用できるようになるとしているが、既存プラットフォーム上では問題が生じる可能性もある。例えば、グラフィックス・カードのようなハードウェアが要件に対応していないなどの理由で、同APIの一部しか利用できない場合があるかもしれない。

WinFX API コード名 Windows XP SP2 Windows Server 2003 SP1 Mac OS X、Linux
Windows Communication Foundation(WCF) Indigo
*1
*1
×
Windows Presentation Foundation(WPF)*2 Avalon
*1
*1
*3
Windows Workflow Foundation(WWF) WinOE
*1
*1
×
XML Paper Specification Reader Metro
不明
Vistaの主要なWindows APIと既存プラットフォームのサポート
*1 WinFXランタイム・コンポーネントとして配布される。
*2 最大限に利用するには、対応グラフィックス・ハードウェアが必要。
*3 Windows Presentation Foundation/Everywhere(WPF/E)と呼ばれるサブセットとして配布される。
 
 

 INDEX
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  Windows Vistaの技術革新を解く(1)
    Windows Vistaの技術革新を解く(2)
    Windows Vistaの技術革新を解く(3)

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