連載 SE ハジメくん物語 ― 新米SEのActive Directory導入奮闘記 ― 【第3話】SE ハジメくんの挫折、そして古杉部長の変貌(前編)(3)高添 修マイクロソフト株式会社 IT Pro エバンジェリスト 2006/05/19 |
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(ハジメくんは、結局何もいえないまま怒られただけで終わりました。それもそのはず、古杉部長がアンチマイクロソフトであることも知らず、他社の例を持ち出してActive Directoryがすごいと力説し、さらにマイクロソフトだから問題なのではなく製品の質だといって古杉部長のプライドまで傷付けてしまったのです。確かに昔のことや、いままでのマイクロソフト製品のことは知らないけれど、よかれと思ってやったことだし、せめて話しくらい聞いてくれたっていいのにという思いが消えないハジメくん。完全にやる気を失ってしまいました。でも、みんなが口にしていた「いっても無駄」「この会社じゃ無理」の意味をこのような形で体験することになるとは寂しいかぎりです。それから2週間後、ハジメくんは村山に呼ばれます。村山の隣には初めて見る顔がありました)
あのね、ハジメくん。俺、違う会社を担当することになったから。 |
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えぇっ… |
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こいつが、今度俺の代わりをやる小野。 |
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君がハジメくんか、よろしく。 |
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どうも。 |
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元気ないね。俺のこと嫌い? |
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全然そんなことないです。ただ、最近どうも力が入らなくて。
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君も普通の人間だってことだね。俺だってよくそうなるよ。ま、そういうときは考えすぎないことかな。おかしくなった理由が単純なら、そこから抜け出す理由も単純だからさ、人間って。
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抜け出せるのやら。あ、ごめんなさい。これからもよろしくお願いします。
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はい、こちらこそ
(とっても感じのいい人、威圧感もないし。でも、古杉部長だっていい人だと思ってたのにいきなり変わったし、この人だって何かあるんだろうと思ってしまうハジメくん。かなり重症です。それから数週間、小野の周りにはいろんな人がやってきます。小野はハジメ田電気で出会った真田みたいに、コンピュータに向かってトラブルを解決しているわけでもなく、プログラム開発を手伝ってるわけでもなく、プロジェクトの数字の管理をしているわけでもなさそうなのに…)
ハジメくん、お疲れ。なんか疲れるねえ、何もしてないのに。 |
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十分みんなのために仕事をしているように見えますけど。 |
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ふ〜ん。そうなんだ。 |
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あの〜。小野さんって、ほかのお客さまの担当のときは何やってたんですか? |
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何って、難しい質問するね。いろんなことをやったよ。でも、自分で何かやったかというと、自分では何もやってないかな。 |
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じゃあ、みんな小野さんのところに行って何を聞いてるんですか? |
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ん〜、いろいろ。 |
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?? |
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知ってることを聞いてくれば教えてあげるけどね。それ以外は、「前に似たようなことがあったなあ」とか「そういえば、どこかに同じようなことが書いてあった気がするなあ」とか、そんなことしか話してないんだけど、みんな満足して帰っていくんだよね。すっごく不思議。 |
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もしかして魔法使い? |
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はは、人の世話をするのが好きなだけさ。トラブルが解決できなくたって、本当につらいときに付き合ってあげると喜んでもらえるし、たまたまうまくいくと俺のお陰だって感謝してもらえる。感謝されるからまた、人のために何かをしてあげたいと思う…、そういうことかな。 |
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そうなんですか。私もこの会社のためにと思って古杉部長に掛け合ったことがあるんですけど、まともに話をさせてもらえずに終わりました。 |
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へえ。もしかして1人で?
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はい。
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すごいね。そんな勇気が俺にあればなあ。ところで何をいったの?
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Active Directoryを入れましょうって。
それで? |
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マイクロソフトが嫌いだとか、LDAPサーバでやるんだとかっていってましたね。Active DirectoryだってLDAPサーバだっつ〜の。 |
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はは、そうか。確かにActive Directoryは面白いね。俺もここにきてけっこう苦労してるよ。Active Directoryが入ってれば簡単にできることが、ここじゃあとっても大変な作業になっちゃうからね。 |
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そうなんですよ。だからActive Directoryを入れましょうっていったのに。 |
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でもさ、ハジメくんの話を聞いてると、Active Directoryを入れることがゴールみたいだね。会社には会社の事情ってものがあるし、それって違うんじゃない? まあ、Active Directoryが完ぺきなソフトウェアだっていうなら別だけど。 |
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完ぺきかどうかは分からないですけど…。 |
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確かにそんな時期もあったね。使い勝手はいいけど、UNIXとかメインフレームに比べると子どものようだっていわれてた時期がね。でも、どんどん機能も増えて、使い勝手もよくなっているし、最近のWindowsは基幹業務でも使われることもあるくらいだから、昔のイメージで物事を判断するのは間違いだと思うな。 |
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そっか。じゃあ、Windowsでも自信を持って勧めていいんですね? |
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もちろん! ただ、いまのハジメくんの説明じゃ、俺が古杉部長だとしてもノーっていってるかもよ(笑)。それは冗談として、古杉部長がイエスというまでは俺たちは楽になれないってわけだ。人はそんなに簡単に変われるもんじゃないけど、古杉部長は、部下のことを好きだっていってたし、何かいいきっかけがあるといいね。 |
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人は簡単に変わらない…、か。でも、人はおかしくなる理由が単純なら抜け出す理由も単純だっていってましたよね。 |
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少なくとも俺はそうだと思ってるけど。 |
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古杉部長も変わってくれるといいんですけど。そういえば、あんなに落ち込んでたのに、小野さんと話をしてたら元気になってきました。 |
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それはよかった。みんながいまのままじゃ駄目だって気付いてくれたら忙しくなるだろうし、その前に俺が知っていることでよければ教えてあげるよ。まあ、俺が知ってることなんてたいしたことないけどね。 |
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ほんとですか!? |
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まずは古杉部長が嫌いなマイクロソフトの製品の話でもするかな。ただし、「ほかの仕事が入ってきたらそっちが優先される」ってルールだけは守ることにしようね。
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はい!!
(ハジメくんはハジメ田電気での楽しかった日々を思い出しました。新しいことが次から次へと出てきて、それに対応しているだけで自分が成長していると思えたあのころ。小野の人柄はまだ分かりませんが、味方であることだけは間違いなさそうです。さらに、小野の話は主人公が必ず「人」です。ITやコンピュータの話をしていても人が喜ぶことが大前提になっているので、とても心地よさが残ります。そう思ったハジメくんも、START自動車の社員も、小野のとりこです)
(Illustrated by 正木茶丸)
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[連載]SE ハジメくん物語 【第3話】 | ||
SE ハジメくんの挫折、そして古杉部長の変貌(前編)(1) | ||
SE ハジメくんの挫折、そして古杉部長の変貌(前編)(2) | ||
SE ハジメくんの挫折、そして古杉部長の変貌(前編)(3) | ||
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