[運用] Windows 7システム導入のためのハードウェア・コンポーネント選択ガイド ―― Windows XP→Windows 7移行ガイド(ハードウェア編) ―― 4.グラフィックス・カードとネットワーク・インターフェイス デジタルアドバンテージ 打越 浩幸2011/11/10 |
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Windows OSにおけるグラフィックス・サポート
ビジネス・ユーザーにはあまりなじみがないかもしれないが、最新のグラフィックス・システムを有効活用するにはWindows 7が向いている。Windows XPではDirectX 9.0cまでしかサポートされていないので、例えば最近のグラフィックス・カードに搭載されているGPUやシェーダなどの最新機能を活用することができない。Windows 7では(現在のところ)最新のDirectX 11までサポートされている。
Windows Vista以降のWindows OSではDirectXを使ってデスクトップの描画を行っているなど、DirectXはもはやゲームでのみ利用される技術ではない。現在のWindows OSでは、CPUとGPUが分担して処理を担当するアーキテクチャになりつつあるので、例えばCPU内蔵のGPUやローエンド製品でもよいから、ある程度のグラフィックス機能を用意しておけばシステムを快適に利用できる。ちなみにHyper-VのRemote-FXでは、仮想マシンのサーバ(ハイパーバイザ)側でグラフィックス・カードのGPUを使って描画を行うようになっている。サーバOSでもこのようにGPUの利用が進んでいる(Windows Server 2008 R2連載「3DグラフィックスをサポートするHyper-VのRemoteFX 」参照)。
項目 | 説明 |
GPU | GPUとはGraphics Processing Unitのこと。グラフィックス・カードの要となるチップ。内部には機能が限定されたCPUが多数入っており、プログラムを送り込んで、2Dや3Dのグラフィックス処理を同時並行的に処理する。最近ではグラフィックスとは関係ない計算処理を担当させる使い方(GPGPU:General Purpose computing on GPU)もある。メインCPUの補助として使い、数値計算などを高速に処理できる。 |
GPUベンダ | GPUのベンダとしてはATI(現AMD)とnVidiaNVIDIAが有名でありさまざまな製品をリリースしているが、CPU内蔵のグラフィックス(Intel HD Graphicsなど)もGPUとしては高いシェアを持つ。高性能なグラフィックスが不要な用途では内蔵グラフィックスでも十分実用的である |
GPUの製品カテゴリ | GPUの開発競争は非常にめまぐるしく、1年程度で各ベンダの主力ラインアップはフルモデルチェンジしているので、特定のどの製品が望ましいとは簡単にはいえない。各社とも性能レンジに応じて「ハイエンド」「パフォーマンス」「メインストリーム」「ローエンド」などと分類しているので、一般的なビジネス/オフィス向けPCなら一番下の「ローエンド」か、その少し上あたりにするとよい。CPUの内蔵グラフィックスは、GPU専業ベンダの製品でいえば「ローエンド」から「メインストリーム」 に相当する |
価格帯 | 型番やベンチマークの数値だけでは選びづらい場合は、非常に大雑把だが、価格を参考にするとよいだろう。価格と性能はほぼ比例しているからだ。基本的には、実売価格で1万円以下はローエンド、1〜3万円程度がメインストリーム、それ以上がハイエンドである。ビジネス用途には1万円以下のもので十分だが、導入したシステムを向こう5年とかそれ以上利用し続けるつもりなら、将来のアプリケーションの大型化やOSのバージョンアップなども考え、1ランク程度上のクラスも考慮するとよい |
グラフィックス選択ガイド |
ネットワーク・インターフェイスはギガビットと無線LAN
10年前のPCに装備されていたネットワーク・インターフェイスといえば、100BASE-TXすなわち最大速度100Mbpsのイーサネットに対応したものが主流だった。一方、現在では10倍の1Gbpsで通信できるギガビット・イーサネットが主流である。社内ネットワークがギガビット・イーサネットで構築されていれば、新しいPCはより高速にファイル・サーバなどへアクセスできるようになる。
さらに、ノートPCではほとんどの製品が、イーサネットのほかに無線LANインターフェイスを搭載するようになった。これも社内に無線LANネットワークが構築済みなら、ノートPCを導入して無線LANの設定をすると、すぐに無線LANが利用できるようになる。
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一部のノートPCでは、モバイルWiMAXをサポートした製品もある。モバイルWiMAXをサポートしていれば、別途USBアダプタなどを接続しなくても、外出先で高速なインターネット接続が可能になる(ただしUQコミュニケーションズなどの通信事業者との契約が必要)。外出先での利用が多いのならば、モバイルWiMAXを搭載したノートPCの導入を検討してみるのもよいだろう。
無線LANにはいくつかの規格があるが、現在なら(規格上)数100Mbpsの速度を発揮するIEEE 802.11n対応の無線LANを内蔵した製品を選びたい。注意が必要なのは、同じIEEE 802.11n対応でも、搭載するアンテナの数によって通信速度が異なることだ。これはMIMO(Multi Input Multi Output)という複数のアンテナで同時に通信することで速度を高める技術によるもので、アンテナの数が多いほど高速に通信できるとされる。ノートPCのカタログ・スペックにある無線LANの項目に「2X2」「4X4」という文字を見かけることがあるが、これは「2本(4本)の送信アンテナと2本(4本)の受信アンテナで同時に送信あるいは受信が可能」という意味だ。
ただし、IEEE 802.11nにしろMIMOにしろ、社内の無線LANネットワークのアクセスポイントも同じ規格/技術に対応していないと本来の性能は発揮できない点は注意したい。
項目 | 説明 |
有線ネットワーク | |
規格 | 10年前は100Mbpsイーサネット(100BASE-TX)が主流だったが、現在はギガビット・イーサネット(1000BASE-T)がほとんどのPCに装備されている |
機能 | PXE(Preboot eXecution Environment)というネットワーク・ブート機能に対応していると、OS本体をネットワーク経由で展開するのに便利であるが、必須というほどではない |
無線ネットワーク | |
機能 | ほとんどのノートPCが無線LANインターフェイスを装備している(デスクトップPCでは、たいていオプション扱い)。規格としてはIEEE 802.11nが主流で、規格上は数100Mbps、実際には数10Mbpsで通信できる。以前の802.11b/g/aのノードとも通信できるので、なるべく802.11n対応製品を選びたい |
無線周波数帯 | 2.4GHz帯と5GHz帯の2種類の周波数帯が利用できる。製品としては2.4GHzだけ対応と、両方の周波数帯に対応したものがあり、社内の無線LANネットワークに合わせて選ぶことになる。ただし、公衆無線LANも利用する場合は2.4GHz対応が必要だ |
機能 | 複数のアンテナで同時に送受信して通信速度を高める「MIMO」が選択のポイントの1つ。製品によってアンテナの本数に違いがある。社内の無線LANアクセスポイントがMIMOに対応している、あるいは対応する予定があるなら、ノートPCもMIMO対応製品を選びたい |
ネットワーク・インターフェイス選択ガイド |
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本記事では、Windows XP世代のユーザーを対象に、現在のハードウェアやWindows 7でのサポートなどについて簡単に解説してみた。Windows XPを搭載して出荷していた頃のシステムと比較すると、現在のPCシステムは価格も低下しているし、それでいて性能は大きく向上している。たとえ同じような作業しかしないとしても、最新のWindows 7 PCに切り替えるだけで、快適に使えるようになる。Windows XPのサポート切れまでにはまだ2年ほどあるが、アプリケーションなども含めた変更作業などを考慮すると、実はあまり余裕があるとはいえない。全社的なシステムの変更を予定しているなら、なるべく速く作業に取り掛かるべきである。
なお、ハードウェアやWindows 7の新規導入に伴う、ユーザー設定や環境、アプリケーションの移行などについての詳しい情報は、以下のリンク先を参照していただきたい。
- Windows XP → Windows 7移行支援記事集(Windows Server Insider)
- Windows XP から Windows 7 への移行(TechNetサイト)
- Windows XP から Windows 7 アプリ移行実践ガイド(MSDNサイト)
INDEX | ||
Windows 7システム導入のためのハードウェア・コンポーネント選択ガイド | ||
1.マルチコア化が進んだCPU | ||
2.大容量化と低価格化が進んだメモリと64bit Windows OS | ||
3.大容量化/低価格化が進んだハードディスクとSSD | ||
4.グラフィックス・カードとネットワーク・インターフェイス | ||
「運用」 |
「Windows XP→Windows 7移行支援記事集」 |
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