[運用] 2.自動節電プログラムで簡単節電設定 井上 孝司2011/06/30 |
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マイクロソフトが提供する自動節電プログラムとは
これらの設定を行う際の基本となるのが、コントロール・パネルの[ハードウェアとサウンド]カテゴリ内にある[電源オプション](Windows 7の場合)だ。またActive Directoryに参加しているコンピュータであれば、グループポリシーを用いて省電力設定を一括適用できる。また、コントロール・パネルで設定するのと同様の操作をコマンドラインで行う手段として、powercfgコマンドがある。いずれの方法でも、結果的に設定する対象は同じだが、手段が異なるわけだ。
いずれの方法にしろ、電源オプションを細かく設定するのは容易な作業ではない。そこで、マイクロソフトが提供している省電力関連の推奨設定と省電力設定の選択を自動的に行う「Windows PC自動節電プログラム」を利用するのがよい。これを実行するだけで、コントロール・パネルの[電源オプション]などを用いて手作業で行うのと同様の設定を一気に行える。対応するOSは、Windows 7、Windows Vista、Windows XP(SP2以降)となっている。
なお「Windows PC自動節電プログラム」は、節電のための設定を行っていない、あるいは節電のためのユーティリティ・ソフトウェアを使用していない、これから新しく節電設定を行いたいPCを対象としている。もともとバッテリ駆動時のために省電力化のニーズがあるノートPCでは、ハードウェア・ベンダが独自の省電力ユーティリティをインストールした状態で出荷していることが多いので、「Windows PC自動節電プログラム」の出番があるのは、主としてデスクトップPCと考えられる。
実際に自動節電プログラムを試す
では、実際に「Windows PC自動節電プログラム」を使ってWindows OSの省電力設定を変更して、どういった変更が加わるのか、どの程度の効果があるのかを検証してみよう。
Windows PC自動節電プログラム(Fix it版)は、以下のWebサイトからセットアップできる。Webページ中にある[Fix it]ボタンをクリックするとセットアップ・プログラムのダウンロードが始まるが、ダウンロードするプログラムをその場で実行すると手間がかからない。もちろん、いったん保存しておいて、それを実行してもよい。
- Windows PC自動節電プログラムについて(マイクロソフト サポート技術情報)
設定変更を行う方法として、Fix it以外に、グループポリシーで一括適用する方法や、スクリプト、あるいはPowercfgコマンドを使用する方法もある。設定対象となるPCの台数が多い企業ユーザーは、こうした手段を利用する方が効率的だ。
ただし、グループポリシーで電源設定の項目を利用できるOSはWindows Vista/7に限られるので、Windows XPではグループポリシーによるスクリプトの強制実行が必要になる。以下に、こうした設定を行う際に関わる情報が公開されているWebページを示す。
- 企業向け:グループ ポリシーやコマンドラインから電力設定を展開する方法(マイクロソフト)
- Windows PC の電力設定展開方法(マイクロソフト)
- サンプルスクリプト(マイクロソフト)
「Windows PC自動節電プログラム」を実行すると、セットアップ直後の既定値では[バランス]を選択していた電源プランが、[省電力](Windows Vista/7)あるいは[最小の電力消費](Windows XP)に切り替わる。また、その[省電力]電源プランの内容についても、AC電源接続時のものに対して、以下のような変更が加わる。Windowsのバージョンによって利用可能な省電力関連機能や既定値が異なることから、それぞれ内容に違いが生じる。
Windows 7 | ||
項目 | 変更前 | 変更後 |
既定のディスプレイ輝度 *1 | 100% | 40% |
ディスプレイを暗くするまでの時間 *1 | 5分 | 2分 |
ディスプレイ電源断までのアイドル時間 | 10分 | 5分 |
ハードディスク停止までのアイドル時間 | 20分 | 10分 |
スリープ状態に遷移するまでのアイドル時間 | 30分 | 15分 |
休止状態に遷移するまでのアイドル時間 | 360分 | 30分 |
デスクトップ背景のスライドショー | 有効 | 一時停止 |
無線LANアダプタの省電力設定 | 最大パフォーマンス | 省電力(高) |
Windows Vista | ||
項目 | 変更前 | 変更後 |
既定のディスプレイ輝度*1 | 100% | 40% |
ディスプレイ電源断までのアイドル時間 | 20分 | 5分 |
ハードディスク停止までのアイドル時間 | 20分 | 10分 |
スリープ状態に遷移するまでのアイドル時間 | 60分 | 15分 |
休止状態に遷移するまでのアイドル時間 | 1,080分 | 30分 |
無線LANアダプタの省電力設定 | 最大パフォーマンス | 省電力(高) |
Windows XP | ||
項目 | 変更前 | 変更後 |
ディスプレイ電源断までのアイドル時間 | 15分 | 5分 |
ハードディスク停止までのアイドル時間 | なし | 10分 |
スリープ状態に遷移するまでのアイドル時間 | なし | 15分 |
休止状態に遷移するまでのアイドル時間 | なし | 30分 |
*1 ノートPCのみ |
この変更内容から、操作中のパフォーマンスを制限することで省電力化を図るよりも、アイドル時の省電力化に重きを置いて、業務の効率は維持しながら余分な電力消費を抑制する、というアプローチをとっていることが分かる。
さらに、消費電力の計測も行ってみた。計測に使用したのはサンワサプライ製の電力量計「ワットモニター(TAP-TST8)」、PC本体はCPUにCore 2 Duo E6600を使用する自作機、ディスプレイはナナオ製のL461を使用した。OSはWindows 7 Ultimate SP1で、この時点で利用可能なすべてのセキュリティ修正プログラムを適用しているほか、Internet Explorerを9.0に更新した。
計測に使用した「ワットモニター」 |
これはサンワサプライ製の電力量計「ワットモニター(TAP-TST8)」。コンセントに接続すると動作を開始して、通算の動作時間と消費電力、概算の電気代などを計測・表示する。 |
「Windows PC自動節電プログラム」による設定変更のポイントは、前述した変更項目で分かるように、アイドル状態になったときにディスプレイの消灯とスリープ状態への遷移を初期状態よりも早めに行う点にある。つまり、フル稼働状態における消費電力よりも、アイドル状態における消費電力の低減に重点を置いているといえる。
そのことと、使用した「ワットモニター」が表示できる積算消費電力がキロワット単位であり、短時間の計測では有意な差が出にくいと考えたことから、積算消費電力の計測は行わないことにした。代わりに、電源を投入してシステムを起動、ログオンした後で動作が落ち着くまでの消費電力、ディスプレイが消灯したときの消費電力、それとスリープ状態に遷移した後の消費電力を、「ワットモニター」の画面で確認した。
その結果、通常動作中はディスプレイと本体の合計で、おおむね115〜140W程度の消費電力となった(この数字はCPU負荷によって変動する)。そして、ディスプレイを消灯すると85〜90W程度に減少する。最終的にスリープ状態に遷移すると、消費電力は7W程度となって安定する。
「Windows PC自動節電プログラム」の適用前と適用後では、ディスプレイの消灯ならびにスリープ状態に遷移するまでの時間が異なる。そこで、この2項目を変化点として消費電力の変動をイメージした図を以下に示す。図の中で、黄色い枠を置いた部分が電力消費につながる差分ということになる。
ツールによる省電力効果のイメージ |
「Windows PC節電設定プログラム」の適用により、アイドル時にディスプレイを消灯したり、スリープ状態に遷移したりするタイミングが早まる。その結果として省電力につながる様子をイメージ化したのが上の図で、黄色い部分が設定によって削減される電力ということになる。なお電力消費の数字はハード構成などによって異なるため、上のグラフでは示していない。あくまで、全体的な傾向と考えていただきたい。 |
なお、HDDの消費電力は機種や動作状況によってかなり差があるが、一般的な3.5インチ・ディスクの場合、スピンアップ時で20〜30W程度、通常稼働時で5〜10W程度だ。「Windows PC自動節電プログラム」ではHDD停止までのアイドル時間を20分から10分に縮めているが、これ以上短くしても、効果があるかどうかは怪しいだろう。前述したように、いったん停止させたHDDをスピンアップさせる際には大きな電力消費が発生するからだ。むやみやたらにHDDを停止させるよりも、ディスプレイの消灯、あるいはバックライト輝度低下の方が、大きな節電効果につながると考えられる。
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本稿ではWindows OSの省電力機能を利用する節電について取り上げたが、ハードウェアについても消費電力削減を図る余地がある。使用しているCPUやチップセットによって、発熱や消費電力にはかなりの差があるからだ。実際、Windows XP時代に主流となっていたバリュークラスのPCと現在の主流となっているバリュークラスのPCでは、消費電力に少なからぬ差がある(マイクロソフトの資料による。詳細は、以下のリンク先を参照していただきたい)。特にアイドル時のCPUやグラフィックス・システムなどの消費電力が以前よりも大幅に少なくなっている。ソフトウェアの設定による対処だけでなく、さらにハードウェアの代替を組み合わせることで、一層の消費電力削減が図れるだろう。
- Windows PC消費電力検証結果レポート(マイクロソフト)
- Windows Serverに関する節電(マイクロソフト)
INDEX | ||
[運用] 簡単にできるWindows PCの節電方法教えます | ||
1.省電力化が求められる背景と省電力機能の概要 | ||
2.自動節電プログラムで簡単節電設定 | ||
運用 |
「Windows XP→Windows 7移行支援記事集」 |
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