運用
実例で学ぶSBS 2003ネットワーク構築と運用

第2回 SBS 2003のメール設定

2.POP3コネクタによるメールの取得と再配布

デジタルアドバンテージ
2004/04/21

 この連載で想定しているネットワークの環境では、自ドメインあてのメールは直接インターネットから配信されてくるわけではない(前回の「1.今回想定するネットワーク環境」にある図を参照)。自ドメインあてのメールは、プロバイダに置かれたメール・サーバへ送られるのみであり、そこからは「Microsoft Connector for POP3 Mailboxes(以下POP3コネクタ)」という機能により、SBS 2003のメール・ボックスに転送している。具体的には、プロバイダのメール・サーバにPOP3プロトコルでアクセスしてメールを取得し、それをSBS 2003上で各ユーザーのメール・ボックスに再配布している。これを図にすると、次のようになる。

POP3コネクタの動作
POP3コネクタは、SBS(SBS 2000やSBS 2003など)独自のメール・サービス機能(単体のExchange Server 2003では利用できない)。POP3コネクタを使うと、プロバイダのメール・ボックスにPOP3プロトコルでアクセスしてメールを取得し、それをSBS 2003(Exchange Server 2003)のメール・ボックスへと転送させることができる。これにより、プロバイダへいちいちアクセスしなくても各ユーザーはローカルでメールを処理できるので作業が高速になるし、複数の場所に分散しているPOP3メール・ボックスを統合することもできる。また1つのメール・ボックスで複数のメール・アドレスを兼用している場合でも、あて先などに基づいて振り分けて受信することができる。
  プロバイダのメール・サーバ上に各ユーザーごとのPOP3メール・ボックスが存在し、それらをPOP3コネクタを使って各ユーザーのメール・ボックスへ配信するのが「ユーザーのメールボックス」モード。各POP3アカウントごとに1つずつPOP3コネクタを作成する。
  プロバイダのメール・サーバ上に1つの代表的なPOP3メール・ボックスが存在し、そこから取得したメールを、あて先メール・アドレスに基づいてローカルの各ユーザーのメール・ボックスへ配信するのが「グローバル メールボックス」モード。

 POP3コネクタの使い方には2種類ある。1つは、プロバイダのメール・サーバ上に、ユーザーごとに個別のメール・ボックスがある場合、もう1つはプロバイダのメール・サーバ上にただ1つのメール・ボックスしかない場合である。

 前者の場合なら、例えば10人のメール・ユーザーがいるとすると、プロバイダのメール・サーバには10人分の異なるメール・アカウント(メール・アドレス)が存在し、さらに10個のメール・ボックスが存在するのが普通である。このようなケースでは、POP3のメール・ボックスごとに、アクセスする先のメール・サーバやメール・アカウントのほか、SBS 2003側の対応するメール・ユーザー名を指定したPOP3コネクタを作成すればよい。

 後者は非常に小規模な組織向けの構成で、この場合プロバイダには1つのメール・ボックスしかなく、それを複数のSBS 2003ユーザーで共有する形態だ。例えば「postmaster@〜.jp」とか「info@〜.jp」「eigyo@〜.jp」など、複数のメール・アカウントを共有している場合がある。またメールを転送して、1つのアカウントに集中させている場合もあるだろう。このような場合は、1つのPOP3メール・ボックスの中に複数のあて先へのメールが共存していることになる。このケースでは、POP3コネクタのグローバル・メール・ボックスを使うと、受信したメールのあて先(To:もしくはCc:フィールド)に基づいて、SBS 2003の各ユーザーに振り分けることができる。ただしBcc:あてで送信されたメールのように、あて先のユーザー名が記述されていない場合は、デフォルトのユーザーのメール・ボックスへすべて配信されることになる。

 POP3コネクタを利用するためには、サーバの管理ツールで[POP3コネクタ マネージャ]を開き、POP3でアクセスするサーバやユーザーなどの設定を行う。

POP3コネクタ・マネージャを開く
POP3コネクタを管理するには「POP3コネクタ マネージャ」を利用する。
  サーバの管理ツールでこれを選択すると、右側のペインにメニューが表示される。
  これをクリックして管理ツールを起動する。

 ウィンドウの右側にある[POP3 コネクタ マネージャを開く]をクリックすると、次のようなプロパティ・ダイアログが表示される。

POP3コネクタの管理ツール
POP3コネクタを利用するためには、アクセスするPOP3メール・ボックスやポーリング(POP3にアクセスすること)する時間間隔などを定義する。
  アクセスするPOP3メール・アカウントを指定するにはこのタブを選択する。
  POP3コネクタが動作する時間をスケジューリングするためにはこのタブを選択する。
  このタブでは、POP3コネクタのログ設定や、あて先の分からないメールのデフォルトの格納先(振り分けできないメールは、デフォルトではSBS 2003のAdministratorに送信される)を指定する。
  POP3コネクタを使用するためには、これをクリックして、アクセスするPOP3アカウントごとに新規のアクセス先とメールの格納先の情報を定義する。

 この[メールボックス]タブでは、アクセスするプロバイダのPOP3メール・アカウントの指定を行う。アクセスしたいPOP3メール・ボックスの数だけアカウントを定義しておくと、指定されたスケジュールに従って定期的にプロバイダにアクセスし、SBS 2003のメール・ボックスへとメールが転送される。

 この画面で[追加]ボタンをクリックすると、次のようなダイアログが表示され、POP3へアクセスするためのアカウントを定義することができる。

[POP3メールボックス]ダイアログ
接続する先のPOP3メール・ボックスごとに、このような接続情報を定義する。同じプロバイダに複数のPOP3メール・ボックスが存在する場合でも、それぞれについてこのような定義が必要。
  アクセスするPOP3のメール・サーバ名。FQDN名で指定する。
  POP3のポート番号。通常は110番となっている。
  POP3のアカウント情報。
  POP3のパスワード。
  POP3コネクタの種類の指定。[グローバル メールボックス]と[ユーザーのメールボックス]の2種類がある。前者は1つのPOP3メール・ボックスに複数のメール・アカウントが対応している場合に利用する。受信後にあて先アドレスに基づいて振り分けることができる。後者は受信したすべてのメールを特定の1つのメール・ボックスへ格納する場合に利用する。
  で[ユーザーのメールボックス]を指定した場合に、どのSBS 2003ユーザーのメール・ボックスに格納するかを指定する。
  で[グローバル メールボックス]を指定した場合に、送信するメールのドメイン名を指定する。
  で[グローバル メールボックス]を指定した場合に、振り分けるための規則を定義する。

 このダイアログの上半分には、アクセスするプロバイダのPOP3サーバのFQDN名と、POP3のアカウント/パスワード情報を記入する。

 下半分にある[メールボックス情報]は、受信したメールをどこへ格納するかという、SBS 2003側の設定である。[メールボックスの種類]には、1つのPOP3アカウントで複数のユーザーのメールを混在して扱う[グローバル メール ボックス]と、ユーザーごとに異なるPOP3アカウントを利用する[ユーザーのメールボックス]の2つがある。

 [グローバル メールボックス]を選択した場合は、さらに受信したメールのあて先に基づいて、どのExchange 2003メール・ボックスに振り分けるかという[ルーティング規則]を定義することができる。たった1つのPOP3メール・アカウントで受信していても、実際のメールのヘッダにはTo:やCc:フィールドが存在するので、その情報を基にしてどのメール・ボックスに振り分けるかを指定することができる。またメーリング・リストに対する投稿のように、To:やCc:フィールドに受信者のメール・アドレスがまったく記述されていないようなメールの場合(*1)でも、メーリング・リストのアドレスなどを基にして振り分けることもできる。

*1 あて先が明示的に記述されていないメールの扱いについて
一般的なメールでは、受信者のメール・アドレスがTo:やCc:に記述されている。だがBcc:(あて先をメール・ヘッダ中に明記しない送信方法)で送信されたメールや、メーリング・リストのように、あて先にはメーリング・リストのメール・アドレスしか記述されないメールもある。また、受信したメールを別のメール・アドレスへ転送(フォワード)していたり、1人で複数のメール・アドレスを所有している場合(メール・アドレスの別名を定義している場合)も、メールのTo:やCc:を見るだけでは、だれに送信されたメールであるかを知ることはできない。[グローバル メールボックス]の[ルーティング規則]では、受信したメールのTo:やCc:フィールドに、指定された文字列(メール・アドレス)が含まれているかどうかで、どのSBS 2003ユーザーのメール・ボックスに振り分けるかを指定することができる。
 
ルーティング規則の定義
受信したメールのTo:やCc:に記述されているアドレスを基にして、指定されたユーザーのメール・ボックスへと振り分ける。いずれの規則にも一致しないメールはデフォルトのメール・ボックス(Administratorだが、指定により変更することも可能)に送られる。
  指定された規則。POP3で取得したメールのTo:もしくはCc:にこれらのテキストが含まれていれば、のユーザーのメール・ボックスに格納する。どのルールも一致しなければデフォルトのメール・ボックスに格納される。
  メールを格納するSBS 2003のユーザー名。
  新しい規則を追加するためには、これをクリックする。

 POP3コネクタでメール・サーバにアクセスするスケジュールはマネージャの[スケジュール]タブで設定する。デフォルトでは1時間ごとに指定された各POP3メール・サーバへアクセスするようになっている。そのため、ローカルのLAN上のユーザーがこれよりも短い間隔でSBS 2003のメール・ボックスをポーリングしても意味はない。メールの即時性を考えると、最大可能頻度の15分まで短くしてもよいだろうが、その時間ごとに定義された全部のPOP3サーバをスキャンすることになるので、トラフィックとの兼ね合いで頻度を決めていただきたい。

POP3コネクタの接続スケジュールの設定
POP3コネクタでメールを取得するスケジュールを定義するには、この[スケジュール]タブを使用する。デフォルトでは毎日1時間ごとにアクセスすることになっているが、曜日や時間帯によってアクセス頻度を変えることもできる。
  テスト的に、すぐに取得する場合はこれをクリックする。
  一定時間間隔でアクセスするにはこれを選択する。デフォルトでは毎日1時間ごとにアクセスするようになっている。
  夜間の時間帯や休日にはアクセス頻度を下げたいといった要望がある場合は、こちらを選択する。最大で15分に1回の頻度でカスタム・スケジュールを定義することができる。
 

 INDEX
  [運用]実例で学ぶSBS 2003ネットワーク構築と運用
  第2回 SBS 2003のメール設定
    1.POP3/IMAPサービスの設定
  2.POP3コネクタによるメールの取得と再配布
    3.メールのオープン・リレー対策(1)
    4.メールのオープン・リレー対策(2)
    5.メールのログ機能の設定
 
 運用


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