第8回 読者調査結果
Active Directory 導入上のハードルとは? ―

@IT マーケティングサービス担当
小柴豊
2003/01/10

 先ごろ米国では、次期WindowsサーバであるWindows .NET Server 2003が2003年4月に発売されると発表された。しかし当フォーラムが2002年夏に行った前回読者調査からは、いまだWindows NT Serverを現役で活用している企業が多いことが分かる。システム管理者のリアリティからいえば、「サポート切れが迫るNT Serverの移行をどうするか?」ということこそ、最もホットな話題といえるだろう。

 移行先がWindows 2000でも.NET Serverでも、NT後の世界に共通しているのは、管理体系としてActive Directory(以下AD)を採用することだ。では現在のWindowsネットワークにおいて、ADはどの程度普及しているのだろうか? Windows Insiderフォーラムが実施した第8回読者調査から、その模様を検証しよう。

Active Directory普及率:約3割

 まず、読者がかかわるWindowsネットワークの主な管理形態について質問した結果が図1だ。ご覧のとおり、最も多かったのは「NTドメインによる管理」であり、ADをネイティブに利用しているのは全体の19%にとどまった。「NTドメインとADの混在」を合わせても、ADの普及率は約3割というのが現状である。

図1 Windowsネットワークの管理形態 (n=440)

今後のActive Directory導入予定

 ではNTのサポート切れが迫る今後、AD導入はスムースに進むのだろうか? 図1で現在AD未導入の読者に尋ねたところ、1年以内に具体的な導入予定があるのは、該当者の17%であった(図2)。これだけ見ると、ADへの移行は今後も期待できないように聞こえるが、AD未導入者の約半数は「短期的な導入予定はないが、検討はしている」と答えている。この検討層が導入に踏み切るかどうかが、AD普及のカギといえそうだ。

図2 Active Directory 導入予定 (AD非導入者 n=314)

Active Directory導入上のハードルとは?

 上記で見たように、AD導入には時間がかかっているようだが、そこにはどのようなハードルがあるのだろうか? 読者にAD導入上の障害を聞いた結果、全体の半数近くが「ネットワーク内コンピュータのOSやバージョンが不揃いである」点を挙げている(図3)。ADはWindows 2000で統一された環境でこそ、本来の効果を発揮する。クライアントがWindows 95/98/NTであれば、「クライアント エクステンション」を適用することでサイトの認識などはできるようになるが、ADの特徴であるKerberos認証/グループ・ポリシー/IPSecなどのサポートを受けることはできない。冒頭で述べた前回調査によると、こうした旧クライアントも企業で根強く利用されており、AD導入に水を差す要因となっているようだ。「クライアントもサーバもいっせいにアップグレードする」ことが経済的にも困難な現在、AD導入を推し進めるには、既存資産を活かした移行方法の提案が望まれるだろう。

図3 Active Directory導入の障害 (3つまでの複数回答 n=440)

Windowsネットワークの重点管理課題

 さて後半では、ADから視点を移して、読者のWindowsネットワーク管理課題や、管理ツールの利用状況について紹介しよう。

 まず読者がかかわるWindowsネットワークにおいて、現在必要度が高い管理項目を尋ねた結果が図4だ。「ソフトウェア配布管理」や「ネットワーク・トラフィック管理」などの伝統的な管理課題を超えてトップに挙げられたのは、「セキュリティ管理」であった。近年のワーム騒動や頻繁にリリースされるセキュリティ・パッチの適用など、Windowsネットワーク管理者がいかにセキュリティに頭を悩ませているのかがうかがえる。 

図4 Windowsネットワークの重点管理課題(3つまでの複数回答 n=440)

Windowsネットワーク管理ツール導入状況

 上記のような課題に対して、管理者の助けとなる機能を提供するのが、ネットワーク管理ツールだ。一口に管理ツールといっても単機能のものから統合製品までさまざまな種類があるが、ここでは広い範囲で製品の利用状況を聞いてみた。まず現在の利用率では、日立製作所の「JP1」が最も高く、HPの「OpenView」、ネットワークアソシエイツの「Sniffer」がそれに続いている(図5の青棒グラフ)。一方読者が現在興味がある/情報を知りたい製品としては、マイクロソフトの「Software Update Services(SUS)」および「System Management Server(SMS)」のポイントが高くなった(同 黄棒グラフ)。

 SUSは無償ツールであるため、ほかの製品と一概に比較はできないが、その「Hotfix配布/自動インストール機能」が、管理者のセキュリティ課題にマッチしていることは間違いない。ただしHotfix配布の制御には、ADのグループ・ポリシーを使用する。今後はセキュリティ管理の面からも、Active Directoryの重要性が増していきそうだ(SUSの詳細は、別稿「運用:Microsoft Software Update Servicesの実力を探る」を参照)。End of Article

図5 Windowsネットワーク管理ツール導入状況(複数回答 n=440)
 
調査概要
調査方法
Windows InsiderフォーラムからリンクしたWebアンケート
調査期間
2002年10月21日〜11月14日
有効回答数
676件(うち、Windowsネットワーク構築/管理者440件を集計)
 
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