企業情報システムへの単一アクセス・ポイントを提供するターミナル・ソリューション(1/2) ――マルチベンダ、マルチプラットフォームからなる企業情報システムへのアクセスを単一化するCitrixのターミナル・ソリューション―― |
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2003/12/23 |
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いまなお企業には、Windows NT Server 4.0ベースのサーバが多数稼働している。OS自体のサポート終了や、ハードウェア・システムの老朽化もあり、これらのサーバのリプレイスが進んでいる。単純なファイル/プリンタ共有サーバであれば、NT 4.0からWindows 2000、Windows Server 2003への置き換えはそれほど困難ではないだろう。しかしカスタムの業務アプリケーションをNT 4.0サーバ上で使用しており、NT 4.0に依存した何らかの部分があると、業務アプリケーションの移行も同時に実施しなければならなくなる。
特に、NT 4.0サーバ時代に広く普及した分散型のクライアント/サーバ型アプリケーション(以下C/Sアプリケーション)では、サーバ・プログラムとクライアント・プログラムの関係が密であり、サーバ側に変更を加えると、クライアント側にも影響が及ぶ。この場合、サーバの移行だけでなく、全クライアント・アプリケーションのバージョンアップが必要となってしまう。
クライアント管理が面倒なら、いっそ業務C/SアプリケーションをWebアプリケーション化して、クライアントはWebブラウザだけでアクセス可能にするというのがスマートであり、事例は増えているが、この場合には実質的にアプリケーションの作り直しになる。
こうした問題を回避する方法の1つとして、ターミナル・サービスの利用がある。これにより既存の業務アプリケーションにはほとんど手を加えず、クライアント管理の負担を解消し、業務アプリケーションの動作環境をサーバ側で一元的に管理することが可能になる。
Windows 2000 ServerやWindows Server 2003には、標準でターミナル・サービスの機能が提供されている。これは、MicrosoftとCitrixが共同開発したもので、Citrixはこの標準のターミナル・サービス機能を土台として、さらに高機能・高性能なターミナル・ソリューションを提供するMetaFrame XP Presentation Serverという製品を販売、普及に成功している。
*製品情報:MetaFrame XP Presentation Server(シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社) |
MetaFrameによって実現されるソリューションはどのようなものか。Windows 2000 Server/Windows Server 2003標準のターミナル・サービス機能と何が違うのか。これらについて、シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社の竹内裕治氏にお話を伺った。
サーバのWindowsセッションを複数のユーザーから使うというコンセプトで起業
―― まず最初に、Citrix社やMetaFrameのこれまでの経緯について教えてください。
竹内:Citrix社が米国で産声を上げたのは1989年です。IBMでOS/2関連の開発を手がけていた技術者などが中心となって設立しました。1989年といえば、Intel 80386マイクロプロセッサの仮想8086モードに対応して複数のWindowsセッションを同時実行可能にしたWindows/386が販売されていた時代です。複数セッションといっても、シングル・ユーザーOSであるWindowsでは、1人のユーザーが同時に複数セッションを利用することを想定していました。これに対しCitrixの創業者は、これらを複数のユーザーから利用可能にするという点に注目し、そのためのソフトウェア開発を開始しました。
―― そして現在のMetaFrameの基礎となる製品開発に成功したのですね。
竹内:当初は苦労したようですが、WinViewという製品を経て、マイクロソフトからのライセンス提供を受けてWinFrameというOSの開発に成功しました。これはWindows NT 3.5をベースに、マルチ・ユーザー対応に拡張して使うことができました。MacintoshやDOS、UNIXコンピュータなどの非Windows環境のコンピュータを含め、別のネットワーク・クライアントからWindowsアプリケーションが実行可能になります。実際のアプリケーションはWindows NT側で動くWinFrame Application Server上で実行され、クライアント・コンピュータ側はキーボード/マウス入力とディスプレイ表示だけをやりとりするターミナルとして機能します。この際のサーバ/クライアント間でのデータ交換プロトコルとして開発されたのがCitrix ICA(Independent Computing Architecture)と呼ばれるプロトコルです。WinFrameは現在のMetaFrameの元となる製品です。
―― Citrix社が開発したその技術がWindows 2000 Server、Windows Server 2003のターミナル・サービス機能としてWindows OSに標準実装されているのですね。
竹内:はい。MicrosoftさんにCitrixのMultiWin技術(OSをマルチユーザー対応させるための技術)をOEM供給するところから関係が始まりました。Windows NT Serverにターミナル・サーバ機能を追加した「Windows NT Server 4.0 Terminal Server Edition(以下NT 4.0 TSE)」という製品がありますが、これはMicrosoftとCitrixが共同開発した製品です。以来Citrixは、Microsoftと戦略的な関係を築き、協調してWindows Serverの製品開発に携わってきました。Windows 2000 ServerやWindows Server 2003に当社の技術をベースにしたターミナル・サービス機能が搭載されているのもその成果です。
―― Citrix社独自の製品であるMetaFrameと、MicrosoftにOEM供給してWindows OSに標準搭載されたターミナル・サービスとの関係はどのようなものですか。
竹内:NT 4.0 TSEやWindows 2000 Server、Windows Server 2003の標準のターミナル・サービス機能にアドオンする形で付加機能を提供するパッケージがMetaFrameという関係になります。
ターミナル・ソリューションのメリット
―― 基本的なターミナル・ソリューションのニーズやメリットはどんなものでしょうか。
ターミナル・ソリューション導入の最大のメリットは、システムのクライアント管理から解放されることです(竹内氏) |
竹内:ターミナル・ソリューションを導入する理由は実際にはさまざまですが、やはり大きいのは、システムのクライアント管理から解放されて、システム導入コストやTCOを大幅に圧縮できることだと思います。例えば、ERP(Enterprise Resource Planning)のような業務アプリケーションの導入を考えてみます。この際ERPのコアとなるサーバ側のシステムを整備することはもちろんですが、多くの場合、それにアクセスするためのクライアント環境もシステムの強化やデバイスの追加、ドライバの更新など、何らかの対応が必要になるものです。そして初期導入時に苦労してクライアント環境を整備したとしても、サーバ側でシステムの変更や機能追加などが実施されると、クライアント側も影響を受けます。クライアント・コンピュータは膨大な台数がありますから、管理コストも非常に大きい。これを回避する手段として、ターミナル・ソリューションは非常に有効です。さらに最近では、セキュリティ・ホールを解消するためのHotFix適用もクライアント管理を複雑化させています。
―― そうした煩雑なクライアント管理を嫌って、クライアント側はWebブラウザだけで使えるWebアプリケーションの導入が進んでいます。
竹内:そうですね。しかし例えば、既存のC/SシステムをWebアプリケーションに切り替えるには、基本的にシステムを一から作り直すことになるので、開発コストは莫大なものになります。またいまやWebブラウザは、かなり重いアプリケーションの1つになっており、実用的に使うには、相応の処理能力を持ったコンピュータが必要になります。このため特に古いC/Sシステムの置き換えでは、現実にはクライアント側も何らかの対応が必要になると思います。つまりWebアプリケーションといっても、クライアント管理から完全に解放されるわけではないのです。このようにクライアントに依存したシステムは使いにくく、それが将来の足かせにもなります。こうした欠点を回避しながら、Webベース・ソリューションのメリットであるサーバ集中を低コストかつ容易に実現する手法として、ターミナル・ソリューションが注目されているのだと思います。
MetaFrame XP Presentation Server, Feature Release 3の管理コンソール画面 |
Windows Server 2003へのサポートを含むMetaFrame製品の最新リリース「MetaFrame XP Presentation Server, Feature Release 3」の管理コンソール画面の例。サーバやクライアントの設定、ロードバランシング設定などを管理する。 |
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