企業情報システムへの単一アクセス・ポイントを提供するターミナル・ソリューション(2/2) ――マルチベンダ、マルチプラットフォームからなる企業情報システムへのアクセスを単一化するCitrixのターミナル・ソリューション―― |
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2003/12/23 |
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OS標準のターミナル・サービス機能とMetaFrameの違い
―― Windows 2000 ServerやWindows Server 2003には、標準でターミナル・サービスの機能が提供されています。これでもかなりのことができるのではないかと思うのですが、さらに追加投資を行ってMetaFrameを導入する価値とは何でしょうか。
竹内:Windows Server 2003ではターミナル・サービスの機能が拡張されましたが、さらにMetaFrame XP Presentation Serverを追加することで、さまざまな機能拡張が実現されます(コラム「Windows Server 2003にMetaFrame XP Presentation Serverを追加した場合の機能強化点」参照)。
【コラム】Windows Server 2003にMetaFrame XP Presentation Serverを追加した場合の機能強化点 |
■柔軟性の強化
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竹内:また一口にはいえませんが、分かりやすいメリットの1つは、Windows環境だけでなく、MacintoshやLinux、そのほかのUNIX環境など、異なるプラットフォームをクライアントとして利用し、Windowsアプリケーションを実行できることでしょう(表「MetaFrame XP Presentation Serverがサポートするクライアント環境」参照)。
サポートされるクライアントOS |
Windows XP |
Win32 |
Win16 |
Windows CE* |
Pocket PC* |
ActiveX |
DOS(16bit) |
DOS(32bit) |
Java |
Macintosh |
UNIX |
Linux |
MetaFrame XP Presentation Server がサポートするクライアント環境 |
*デバイス・ベンダにより対応が異なる。 |
―― Linuxもサポートされているのですね。現時点で、クライアントにLinuxを利用しているユーザーは多いのでしょうか。
竹内:現時点ではまだ少数ですが、今後は増加するだろうという感触はあります
―― MetaFrameを導入するとパフォーマンスも向上するとあります。
竹内:独自のSpeedScreenと呼ばれるアクセラレーション技術により、グラフィックスを多用するアプリケーションの性能向上、画面スクロール速度の向上を実現しています。一般的な例とはいえないかもしれませんが、Webアプリケーションを実行するのに、クライアント側のブラウザを使うのではなく、MetaFrameを利用してブラウザもサーバ側で実行しているというユーザーさんもいらっしゃいます。特に、古く低速なクライアントPCを利用している場合には、このほうが処理速度が高速なのだそうです。これなどはMetaFrameの優れた性能を裏付ける例ではないかと思います。性能向上だけでなく、このような運用をすれば、クライアント側でWebブラウザのバージョン管理を実施する必要もなくなりますね。
―― 逆に、MetaFrameが適さないアプリケーションとはどのようなものですか。
竹内:例えばビデオの表示など、リアルタイムに大量のデータをクライアント/サーバ間でやりとりする必要がある処理には向きません。MetaFrameには、あらかじめファイルの拡張子を設定しておくことで、ファイルをサーバ側で実行するか、ローカル側にリダイレクトして実行するかを切り替えられるリダイレクション機能があります。
―― シャドウイングとはどのような機能でしょうか。
竹内:1つのWindowsセッションを複数のユーザーで共有する機能です。これにより例えば、ユーザーのデスクトップを管理者が呼び出して、同じ画面を共有しながらヘルプデスク業務を実施するなどが可能になります。MetaFrameのシャドウイング機能では、1つのセッションを2人以上で共有することができます。この場合、だれでもマウスやキーボードを操作可能ですが、通常はだれが操作可能かを管理者があらかじめ設定しておきます。シャドウイング機能のおかげで、それまでは出張して対応していたユーザー・サポート業務をリモートから実施できるようになり、非常に助かっているなどの声が届いています。
―― 複数のサーバからなるサーバ・ファームの管理機能が強化されるとあります。このサーバ・ファームとはどのようなものでしょうか。
竹内:サーバを複数構成して負荷分散を実現するとともに、それらのサーバを一括して監視・管理可能にする論理的な単位です。サポートするクライアント数が増えると、どうしてもサーバ側の処理能力を強化する必要に迫られます。単一サーバのスケールアップには限界があるので、通常は複数サーバを構成するスケールアウトにより負荷分散を行います。MetaFrameでは、サーバ・ファームを効率的に管理・運用するためのさまざまな機能が用意されています。例えば、ロードバランスを実現する際に、非常に柔軟なパラメータ設定などが行えます。
―― 具体的にはどのような設定でしょうか。
竹内:よく使われるのは、CPUの使用率やメモリ使用率、IPアドレスの範囲を指定してバランシングの設定を変えたり、実行するアプリケーションによって設定を変えたりする方法です。このほかにも、同時アクセス・ユーザー数での制限なども可能です。
RDPプロトコルとICAプロトコル
―― Windows標準のターミナル・サービス(Windows XPの「リモートデスクトップ接続」)でクライアント/サーバ間で使われる通信プロトコルはRDP(Remote Desktop Protocol)と呼ばれていますが、MetaFrameの通信プロトコルはICAですね。これまでのお話では、Windows標準のターミナル・サービスはCitrix社の技術をベースにしているとのことでした。この2つのプロトコルには互換性や包含関係などはあるのでしょうか。
竹内:RDPとICAは異なるプロトコルであり、包含関係もありません。RDPはあくまでマイクロソフトさんが、マイクロソフト製のクライアントOSに対してサービスを提供することを念頭に設計したものです。これに対しMetaFrameは、当初からWindowsだけでなく、より幅広いクライアント環境からサーバ・プラットフォームへのアクセスを可能にすることを念頭に置いて設計されました。こうした目的で考案された通信プロトコルがICAであり、RDPとは互換性がありません。従ってWindows標準のターミナル・サービスに接続するためには、マイクロソフト製のクライアント・ソフトウェアが必要ですし、MetaFrameサーバに接続するためには、MetaFrame用のクライアント・ソフトウェアが必要です。
Windows標準のターミナル・サービス機能とMetaFrame
―― 機能的には、MetaFrameの方が圧倒的に高いとしても、単純な用途ならWindows標準の機能でも事足りるのではないかと思いますが、Windows標準のターミナル・サービス機能とMetaFrameは、分野によっては競合関係にあるのでしょうか。
MetaFrameでは、Windows標準のターミナル・サービスでは不足するさまざまな機能を補完します(竹内氏) |
竹内:MetaFrameは、Windows標準のターミナル・サービスに追加インストールする形で、より高い付加価値を提供します。私たちの認識では競合関係にあるとは思っていません。両者の二者択一というのではなく、あくまでMetaFrameは、企業ユーザーがターミナル・ソリューションを導入する上で、Windows標準のターミナル・サービスでは不足する機能を補完するものとしてご説明しています。実際、ターミナル・ソリューションをWindows標準のターミナル・サービス機能のみで実装しているケースはほとんどなく、ほとんどでMetaFrameをご導入いただいていると考えています。
―― 当初はWindows標準のターミナル・サービスから使い始めて、より高い機能性や性能が必要になってMetaFrameにグレードアップするというケースも多いのでしょうか。
竹内:実際の導入案件では、そのようなケースはあまり見かけません。導入当初からMetaFrameを選択していただくケースが多いと思います。
Webベース・ソリューションとMetaFrameの統合
―― MetaFrameを利用したターミナル・ソリューションによって、サーバ集中型のシステムを構築して、煩雑なクライアント管理の問題を解消できることは分かりました。しかし今後システムのWebアプリケーション化が進むとすれば、MetaFrameがなくてもWebブラウザだけでクライアントからのアクセスが可能になります。WebアプリケーションとMetaFrameは競合するものでしょうか。
竹内:理屈ではそうかもしれませんが、現実には両者は融合して使われています。既存システムのWebアプリケーション化といっても、すべてを一気に移行できるわけではありません。従来のC/S型業務アプリケーションと新しいWebアプリケーションを併用する場合、利用する業務アプリケーションに応じて、ユーザーは専用クライアントとWebブラウザを切り替えなければなりません。しかしMetaFrameのWeb Interface*と呼ばれる機能を使えば、WebブラウザからMetaFrameを起動してアプリケーションをシームレスにリモート実行できます。つまり、WebアプリケーションとMetaFrameを統合することで、ユーザーはそれがWebアプリケーションなのか、MetaFrameによるターミナル・ソリューションなのかを意識することなく、業務アプリケーションを利用できるようになります。EIP(Enterprise Information Portal)に応用すれば、従来型のC/Sアプリケーションも、新しいWebアプリケーションも、まったく意識することなく利用可能な企業情報ポータルを構築できます。
* 従来はNFuseと呼ばれていた。 |
Citrixの将来戦略
―― 今後MetaFrameはこれからどんな方向に発展していくのですか。
竹内:現在Citrixでは、MetaFrame XP Presentation Serverをベース・プラットフォームとして利用するさまざまなアプリケーションの開発を進めています。これらはCitrix MetaFrame Access Suiteと呼ばれています(図「Citrix MetaFrame Access Suiteの構成」参照)。
Citrix MetaFrame Access Suiteの構成 |
竹内:このうち“MetaFrame Secure Access Manager”はVPNに相当するセキュアなリモート通信環境を実現するもので、この上に乗る形で“MetaFrame Conferencing Manager”と“MetaFrame Password Manager”を提供します。MetaFrame Conferencing Managerは、遠隔地にいる人同士でアプリケーションとドキュメントを共有して共同作業を可能にするもので、すでに2003年8月より出荷を開始しています。MetaFrame Password Managerは、パスワード管理とシングルサインオン環境を実現するためのソフトウェアになります。
―― MetaFrame XP Presentation Serverをアクセス・プラトフォームとして、企業における情報資源の集中を図り、御社のメッセージである「On-Demand Enterprise」を進めるということですね。
竹内:そうです。企業の情報システムは、さまざまな理由から異機種混在のコンピューティング環境にならざるを得ません。このような環境において、業務アプリケーションや情報への単一のアクセス・ポイントを提供し、これらに安全にアクセスできるようにするとともに、必要なソフトウェアの配布やシステム管理、監視、測定といった管理・運営機能を提供することで、より少ないTCOでシステム運用を可能にすること。これがMetaFrameおよび関連製品の狙いです。
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「Trend Interview」 |
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