技術解説
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BTS 2004の機能を一言でいえば、「異なる情報システム間で互換性のない通信プロトコルとデータ・フォーマットを相互変換して通信可能にし、通信内容に応じて一連の処理を実行するためのメカニズムを提供するソフトウェア・プラットフォーム」ということになるだろう。ここで「プラットフォーム」という言葉を使うのは、標準サポートされる通信プロトコルやデータ・フォーマットだけでなく、ユーザー自身がそれらを拡張するための基盤を提供するからだ。実際BTS 2004は、買ってきてインストールするだけでは意味をなさない。どのシステムから、どのような情報(メッセージ)が到着したら、どんな処理を実行して、次にどの情報システムを呼び出すかをデザインしなければならない。マイクロソフトはこれを「オーケストレーション」と呼んでいる。
BTS 2004の活用シナリオとしては、EAIとBtoBの大きく2種類がある。
BTS 2004活用シナリオ1:EAI
EAIはEnterprise Application Integrationの略である。企業に存在する情報システムは、歴史的な経緯などから、異なるプラットフォームやテクノロジが混在しているのが一般的だ。具体的には、メインフレームやUNIXワークステーション、IAサーバ+Windowsなどといったハードウェア・システムやOS、各種通信プロトコルなどが異なる。
混在する情報システムがわずかであれば、連携が必要なシステム同士を一対一で接続するようなしくみを用意すればよい。しかし混在するシステムが増加してくると、接続パターンは等比級数的に増加して破綻してしまう。この問題を解決する手法として登場したのがEAIである。
EAIのない情報システム連携 |
時代時代に必要に応じて導入された情報システムは、プラットフォームもテクノロジも設計思想も異なる。システムの数が少なければ、一対一の連携も可能だが、システム構成が複雑になると破綻してしまう。 |
EAIの代表的な構成例は、異なる複数のシステムを接続するハブとして機能するEAIシステムを中央に配置し、このEAIシステムと各情報システム間のデータ交換メカニズムを実装することだ。こうすれば、EAIシステムを通して任意の情報システム連携が可能になる。
EAIの例(ハブ&スポーク・モデル) |
EAIの代表的な構成例の1つ。各情報システムは、EAIシステムとの接続だけを確立すれば、EAIシステムを通して任意の情報システムを連携できる。このように、中心にデータ交換の中核となるEAIシステムを配し、周辺(社内の情報システム)のシステム同士を相互に接続するアーキテクチャを、自動車などの車輪に例えて「ハブ&スポーク」モデルという。 |
BTS 2004は、このEAIシステムとして機能することができる。例えば以下は、EAIシステムとしてBTS 2004を適用した例だ。この例では、メインフレーム・ベースの在庫管理システムとUNIXワークステーション・ベースのERP(Enterprise Resource Planning)システム、Windowsベースの発注処理システムが、それぞれ異なるプロトコルを使ってBTS 2004を介して連携している。
BTS 2004を利用したEAIの例 | ||||||||||||
異なるプラットフォームからなる3つの情報システムが、それぞれ異なるプロトコルを使ってBTS 2004とやりとりしながら連携して一連の処理を行う。 | ||||||||||||
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ポイントは、各情報システムは、それぞれ独自の通信手段とデータ・フォーマットを使って通信できることだ。通信手段とデータ・フォーマットの変換はすべてBTS 2004が集中的に実行してくれる。またこの例では触れていないが、購入注文金額が一定金額以上だったときには、通常よりも高レベルの決済処理を行うなどといったビジネス・ロジックをBTS 2004に実装することができる。
BTS 2004活用シナリオ2:BtoB
前述のEAIは単一企業内の情報システム連携だったが、コミュニケーションの輪を社外にも広げることも可能だ。このシナリオがBtoBのケースである。
インターネットを介した情報システム連携の手段としてここ数年注目されているのがWebサービスである(マイクロソフトは、通常のWebページによる情報サービスと明確に区別するために「XML Webサービス」と呼んでいる)。Webサービスでは、通常のWebアクセスで使用するHTTPプロトコルなどを使って通信できるため、ファイアウォールを越えて異なる組織の情報システムを連携させることが可能になる。
この際、Webサービスを介したビジネス・プロセスを定義するための標準言語であるBPEL(Business Profess Execution Language for Web Services)を利用し、ビジネス・プロセスのインポート/エクスポートを実行すれば、BTS 2004と異なるBtoB管理システムとの間で連携を実現することもできる。
BTS 2004を利用したBtoBシステムの例 |
BTS 2004を利用すれば、インターネットを介して、異なる組織の情報システムを連携することができる。通信手順としては、Webサービスを利用するケースが増えている。BPELでビジネス・プロセス定義をエクスポートし、サプライヤB社に提供すれば、異なるBtoB管理システムとBTS 2004との間で連携することも可能となる。 |
INDEX | ||
[技術解説] | ||
BizTalk Server 2004の機能と構造(前編) | ||
1.BTS 2004の基本機能と活用シナリオ | ||
2.BTS 2004エンジンのしくみ | ||
BizTalk Server 2004の機能と構造(後編) | ||
3.エンタープライズ・シングル・サインオン機能 | ||
4.BTS 2004のスケーラビリティ | ||
技術解説 |
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